九州5県で災害関連死を含め81人の死者・行方不明者を出した2020年7月の九州豪雨から5年となるのを前に、熊本県人吉市で29日、市主催の追悼式が開かれた。市内では21人が亡くなっており、犠牲者の冥福と復興を祈った。
市役所であった式には遺族9人を含む約40人が参列した。黙とうの後、松岡隼人市長が「胸を張ってご報告できる人吉にするため全力を尽くす」と式辞を述べ、地元の県立人吉高3年、境目悠真(ゆうしん)さん(18)が追悼の言葉を述べた。
境目さんは当時中学1年で、父が営む美容室が天井近くまで浸水した。テレビの被災映像を見て「これが本当に今、人吉で起きていることなのか、何度も両親に確認した」という。泥出しなどを手伝った経験を話し「語り継ぎ、自ら考え、学ぶ姿勢を持ち続けることで、風化させることなく伝え続けていくことができると信じています」と力を込めた。
最後に献花があり、参列者が白い菊を手向けて手を合わせ、涙をぬぐう姿もあった。両親が避難する途中で亡くなった鍜治屋博子さん(62)は「戻れるならあの日に戻って(早く逃げてと)伝えたい」と吐露。父を失った永尾禎規(ていき)さん(61)も「助けられなかったことが一番残念」と後悔をにじませた。
被害が最も大きかった熊本県内では、特別養護老人ホーム「千寿園」(同県球磨村)の入所者など67人が亡くなり、2人が今も行方不明のままだ。遺族の高齢化などで、追悼式を開くのは県内では人吉市のみとなっている。【中村敦茂】
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