
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2025年5月度のテーマは「中小企業の資金繰り」。全国の5498社の中小企業経営者を対象に、5月1日から28日にかけて訪問、またはZoom面談で調査を行った。
まず、全体に景況感について聞くと、「現在の業況」(業況DI)は▲12.8ポイント(前月差▲0.5ポイント)と悪化したものの、「将来の見通し」(将来DI)は▲0.6ポイント(前月差+0.7ポイント)と改善していた。
米国の経済政策による今後の影響については、「不安を感じている」64%、「影響は出ていない」33%、「期待している」3%。不安を感じている企業は「製造業」(74%)、「卸・小売業」(69%)で割合が高かった。具体的な影響は、「収益の悪化」(43%)が最多で、「利益率の低下」(31%)、「販売価格の見直し」(25%)と続いた。また、「不安を感じている」と回答した企業に対応策(複数回答)を尋ねたところ、「実施可能な対応策がない」が48%で突出。「在庫削減」21%、「設備投資の縮小」13%だった。
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自社の資金繰りについて、「今後、支障が出てくる」と回答した企業は41%。「支障が出ている」(8%)とあわせ、約半数(49%)の企業が、将来の資金繰りに不安を抱いていた。支払いが負担となっているコストは、「原材料費・仕入れ費用」が36%で最多。次いで「人件費」(31%)だった。前回調査(2024年6月)と比べ、「燃料費」が15%から20%へと増加していた。業種別では、製造業は「原材料費・仕入れ費用」、サービス業では「人件費」の占める割合が高くなっていた。
直近1年間で実施した資金繰り対策は、「金融機関からの借入」が33%と最も多く、次いで「その他の給付金・助成金」(9%)。「いずれも利用していない」と回答した企業は52%だった。
主な資金調達手段は、「地銀・第二地銀」が47%で最多。次いで「信金・信組」が42%。従業員規模が小さくなるほど、「個人」(経営者本人・親族等)と回答した企業の割合が高かった。現在の借入金額は、「1000万円以上3000万円未満」が19%で最多、次いで「1000万円未満」が17%。「借入なし」と回答した企業は29%だった。額の多い方から見ると、「3億円以上」が7%、「1億円以上3億円未満」が9%、「7000万円以上1億円未満」が5%だった。
今後1年間の資金調達意向は、「意向なし」51%、「運転資金」15%、「設備投資資金」10%、「新規事業・事業拡大資金」6%。従業員規模が小さい企業ほど、「設備投資資金」の割合が低かった。
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借入時の保証・担保については、「代表者等が個人保証」が49%と最多。「担保・保証なし(事業の安定性・将来性を評価等)」と回答した企業は17%。従業金規模が小さいほど「代表者等が個人保証」と回答した企業の割合が高かった。
中小企業が一定の要件を満たす場合に、保証人の保証を提供せずに融資を受けられる「経営者保証を不要とする信用保証制度」を知っているかどうかについては、44%が「制度を知らず、活用もしていない」と回答。「制度は知っているが活用していない」(35%)、「制度は知っており既に活用している」(17%)と続いた。2024年6月調査比で、認知度や活用状況はほぼ変わらなかった。
調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、「中小企業の“資金繰り”は、昨年より先行き不透明な状況が続いており、適切な価格転嫁等、現在のインフレ環境への対応が求められます。また、米国の経済政策に対し、“設備投資縮小”や“賃上げ見送り”などの影響が生じ、自社での対応策に苦慮している企業も多いようです。同政策が経営にどのような影響を与えるか、今後も注視する必要があります。2024年3月から開始された『経営者保証を不要とする信用保証制度』の認知や活用が進んでおらず、こうした制度を理解し活用することも重要です」とコメントしている。
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