こんにちは! refeiaです。
今日はサムスン電子ジャパンから発売された「Galaxy Tab S10 FE+」を見ていきます。「Galaxy Tab S」は以前からワコムのペンシステムを採用していて、ペン性能を心配せず買えるほぼ唯一のAndroidタブレットのシリーズです。その中でも13.1型の本機は、廉価モデルかつ大型かつペンが良いという、絵を描きたいユーザーなら見過ごせない特徴を持っています。
早速、実力を見ていきましょう。
価格は公式ストアで10万9010円です。
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また、実際にはこちらが売れ筋になるモデルだと思いますが、10.9型の中型サイズ、「Galaxy Tab S10 FE」もあります。今回はイラスト用途を重視したいので大型モデルを主に見ていきながら、差があるときには中型モデルにも言及します。
価格は公式ストアで8万3820円です。
●Galaxy Tab S10 FE+の主なスペック
ところで、FEとは「Fun Edition」とのことで、上位機のSシリーズの体験をできるだけ維持したまま買いやすい価格にしたモデルに付けられます。最上位機が20万円に迫るウルトラハイエンド化している現状、「買える良いモデル」として10万円周辺をカバーしてくれるのは良い取り組みだと思います。
まずは主なスペックを見ていきましょう。
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・SoC:Exynos 1580
・メモリ:8GB
・ストレージ:128GB+microSDメモリーカード(別売)
・ディスプレイ:13.1型液晶
・解像度:2880×1800ピクセル/90Hz
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・ペン:Sペン付属
・防じん/防滴:IP68
S10 FEは、ここからディスプレイが10.9型(2304×1440ピクセル/90Hz)になった感じです。
性能は数年前のハイエンド、または現行ミドルハイぐらいで、一般的なアプリであればハイエンド機に近いスムーズさで利用できます。最近の重いゲームも設定を欲張らなければ遊べる性能ではありますが、内蔵ストレージが128GBだけなので、そういう用途を主眼に作られているわけではなさそうです。
ペンと画面サイズ以外の注目ポイントは「IP68の防じん/防滴」でしょうか。自分は水がかかるところでタブレットを使う習慣はないですが「これが欲しかった!」という人もいそうです。
また、Galaxyシリーズの特徴の1つにセキュリティパッチの長期提供があり、本機も2032年4月までという超長期間の更新が予定されています。そんなに長く使うかは別として、スマホよりも付き合いが長くなりがちなタブレットでは注目しておきたいポイントです。
●愛用モデル「Galaxy Tab S8+」
ところで、自分の手元には何台かのタブレット端末がありますが、「Galaxy Tab S8+」が圧倒的に使用頻度が高く、常用タブレットになっています。2世代前の12.4型の大きめハイエンドタブレットですが、購入時に入手したキックスタンド付きの背面カバーがすこぶる使いやすいのです。
無段階に角度が決められ、持ち上げてもぶらぶらしたり崩れないので風呂フタ型のカバーより運びやすく、立てるのに必要な面積も小さいため、いろいろなところに置いて使えます。利用していない間ですら、場所を取らない格好で立っていてくれるので便利です。
最初は良いと感じなかったペン収納のための突起も、片手でつまむような持ち方だとちょうど指掛かりになり、気軽に運んでポンと置いてそのまま使う、みたいな使い方がしやすいです。
高い性能とか上質さとかはともかく、結局こういうところで使用頻度が上がるんだな、という実感をしみじみと味わえるモデルです。Tab S8+の不満はバッテリーの持ちがそれほど良くないことと、使っているとキックスタンドのヒンジが緩くなって、寝かせた角度で設置すると自重で一番下の角度までつぶれやすくなることでした。
●外観をチェック
さて、話を戻しまして。本機の外観などをチェックしていきましょう。基本的にはイマドキのタブレット上位機らしい、幅が一定のベゼルと、キレイな仕上げの側面と背面に囲まれています。
横持ち時には、左手側に指紋センサー入りのスリープボタンとボリュームボタンがあります。
縦持ち時には右手側にスイッチ類が来ます。大型モデルのアスペクト比である16:10を縦で使うには長すぎる気がするので、横向き主体の端末と理解するのが良さそうです。一方で中型モデルのTab S10 FEは、同じアスペクト比でも縦持ち時に受け入れやすい印象でした。
純正オプションには3種類のブックカバーがあります
・Book Cover Keyboard:個別に装着できるキーボードとキックスタンド
・Book Cover Keyboard Slim:フォリオタイプのキーボードカバー
・Smart Book Cober:個別に装着できる表面カバーと折り紙式スタンド
下の写真はBook Cover Keyboardで、国内に提供されるキーボードはいずれもUS配列になります。
先に書いた、使い勝手のよいキックスタンドはこのBook Cover Keyboardに含まれますが、3万6850円となかなかのお値段(Tab S10 FE用の同製品は2万8380円)で、特にFEシリーズのようなコスト感を重視する製品を買うにあたって、簡単には納得しづらいのが惜しいところです。
●全体的な使用感は上々
一般的なアプリを使ったときの使用感もザッと書いておきます。
基本的には、自分が重用しているTab S8+と似たサクサク感です。Tab S8+はバッテリー持続時間に余裕がないためにパフォーマンスを絞っているのか、時折もたつくような場面もあり、本機はそういうこともなく安定しているように見えました。
スピーカー音質もナイスです。タブレット端末の動画視聴は鉄板用途なので、多少廉価寄りにするからといって、そこをケチるのはやめようという判断があるのかもしれません。
他に印象的なのは、バッテリー持続時間でした。動画再生時のバッテリー持続時間の仕様においても
・手元のTab S8+:最大13時間
・現行上位機のTab S10+:最大16時間
・本機「Tab S10 FE+:最大21時間 (FEは最大20時間)
と、大きく差がついています。現行上位モデルよりもバッテリー持ちが良いわけで、長時間動画を流したり、充電しないまま長く使ったりするような用途にも適していそうです。
●付属のSペンをチェック
さて、やっと本題です。ペンをチェックしていきましょう。本機には「Sペン」が付属しており、ワコムの電磁気センサー方式を採用しています。
本機のSペンはBluetoothでリモコン的に使える機能が削除され、普通のバッテリーレスのペンになりました。側面だけでなく、従来は充電機構があった背面にも装着できます。
タブレット端末の筆圧ペンは、タッチセンサーを流用してコストを節約できる静電気センサー方式を採用する端末がほとんどですが、イラストをちゃんと描こうとすると不満が残る場合が多いです。ここが、ワコムの電磁気センサーを内蔵したGalaxy Tab Sシリーズがイラスト用途において他の製品から抜きん出たポイントです。
また、手持ちのペンの中ではTab S8+付属ペンだけでなく、旧「Wacom One 13」用のペンと、現行「Wacom One 液晶ペンタブレット」用のペンで描くこともできました。
●液タブ級のペン性能
ペンの性能も一通りチェックしました。もう問題ない点は細かく書きませんが、ジッターは問題なし、遅延も問題なし、かなり強い筆圧まで反応でき、軽い筆圧にもよく反応していました。
このタイプのペンは、昔はもう少し軽い筆圧に唐突感があったと記憶していますが、今回はプロペン2のデフォルト設定ぐらいの軽い筆圧でも反応してくれて、意外と自然に濃さを調節しながら描けます。
パームリジェクションも良好で、手の側面をべたっと置くときによく除外してくれるだけでなく、ペンのホバー中に除外する処理も効果的に働いており、描き始めるときにペン先から手を入れる癖をつけていればまず誤爆することはないです。
また、ペン先が非常に細いため細かい部分が描きやすく、シャープペンシルで書く細かい文字のような、デジタルペンで苦労しやすい使い方にも容易に対応できます。
●サポート対象外ながらも頼もしいWacom Oneペン
先述のWacom One 液晶ペンタブレット用のペンについては、サムスン電子ジャパンとしては使えると言っていないので自己責任になりますが、自分も含めて、持ちやすく描きやすいペンとして利用している人も少なからずいるようです。
付属のペンと比べると、筆圧レスポンスが若干変わるのでブラシの濃さを変える必要はあるものの、描きやすいだけでなく実売4000円前後という安価で、リアキャップが付属しないバリエーションはさらに安く買えてしまいます。ペンを落として壊したりなくしがちな人は特にうれしいかもしれません。
ところで、手元のiPad Proがそろそろ買い換え時期かな、という状況なのですが…… 対応するApple Pencilのモデルも変わるため買い換える必要があり、Apple Pencil Proは2万円以上もします。今回のような完成度の高いペンが安価に利用できることを知っているせいで、iPad購入検討の手が止まってしまうのです。悩ましいものですね……。
●実際に描いてチェック
与太話はこれくらいにして、実用テストもしていきましょう。
今回もいつもの魔女さんでテストしましたが、その前に慣らしもしていない試し描きの時点で、Cintiq Proの癖がついた手のまま思った通りにラクガキできたのは印象的でした。
ラフは上記の通り描きやすいです。線画も筆圧で強弱をつけやすく、概ね思った通りに描けるものの、画面がツルツルなので摩擦で線を安定させる描き方がしづらく、正確に線を追いたいときにはもどかしく感じました。
このあたりは、iPad Proの方が光沢面ながら不思議に摩擦があるよう作られていて、描きやすく感じます。ただし、iPad Pro自体の摩擦感を享受するためにはフィルムを貼らないでおく必要があります。
また、あくまでCLIP STUDIO PAINT上での比較ですが、ストロークを素早く引いたときの遅延感のなさもiPad Proの方が優れていました。サムスン製のPENUPアプリでは非常によく追従してくるので処理の差かと思います。
Windows+ちょっと前の液タブと同程度なので製作に支障はないですが、素早く引いても線がペン先にくっついてくる感覚を優先したい人は、iPadシリーズを優先して検討するのが良さそうです。
彩色も、当然ながら問題ありませんでした。特に軽い筆圧の自然さは、過去にレビューしたことがあるエントリー液タブより印象が良いぐらいで、普通に塗りやすいです。ホバーカーソルも当然あるため、太いブラシを使うときに正確に始筆を決められて便利です。
液タブ液タブうるさいわと言われそうですが、全体的に「画面がツルツルな液タブ」みたいな感覚で作業できました。逆に、マットな画面の描き味もまた、ちゃんとした液タブの捨てがたい価値の1つと言えます。
メモリも8GBなので、液タブとPCで節約意識なく描いた画像を読み込ませるとメモリ不足の警告が表示され、時折動作が重くなります(今回は強制終了などはありませんでした)。これは贅沢すぎないキャンバスサイズで作業することで迂回(うかい)できるでしょう。
また、別売のキックスタンドは絵を描くのに適した角度では手の重さでたわみやすく、風呂フタ式のカバーほど安定しないのは惜しいです。現行世代では改善されているかもしれませんが、従来機のキックスタンドのように緩くなってきた場合に備えて、「クリアファイルを切って折るだけで支えが作れる」と頭の隅に入れておくのが良さそうです。下の写真は分かりやすさのために横にはみ出して装着しています。
●まとめ
では、まとめていきましょう。
Galaxy Tab S10 FE+は、13.1型の大画面と上位機Sシリーズの上質さや体験を引き継ぎながら、上位機と比べて大幅に手にしやすい価格を実現したタブレットです。S10+などの上位機に対する主な妥協点は、SoCの性能と有機ELディスプレイの非採用ですが、性能は数年前のハイエンドに近いため十分実用的で、液晶ディスプレイはパネルメーカーのサムスンらしい上質な見栄えで、主にタブレットが得意とする用途において、高い満足感を伴って利用できます。
この時点で、ある程度価格と折り合いやすくなっているだけでなく、液タブに近い性能を提供するSペンが追加の費用なく入手できるのも大きな利点です。勉強やノート取りにペンを多用したい人や、イラスト用途を見込んでいる人は、上記以上のバリューを感じられることでしょう。
ただし、あくまで最上位機から狙いを定めて妥協を盛り込んだのが本機です。HDR映像をバキバキの表示で楽しみたいとか、最新のゲームで設定を妥協せず楽しみたいとか、映像製作などに使いたいというような処理が重めの要求がある場合は、有機ELディスプレイ、より高性能なチップ、より大きいストレージを搭載した別のモデルを検討するのが良いでしょう。
また、クリエイティブ用途/イラスト用途においては、iPadシリーズの方がメジャーなので、アプリの選択肢や品質において同等とまでは言えません。CLIP STUIDO PAINTを使うつもりならば心配ないですが、それ以外のアプリや、他にやりたいことがあるのなら検討時に吟味しておくのが良さそうです。
13.1型の「FE+」は、タブレットとしては大きく重いため、家でガッツリ使いたい人や、イラスト製作を重視したい人に合っています。出先で使ったり、家の中でも手軽に運んだり手に持って使いたい人は10.9型の「FE」を優先して検討すると良いでしょう。
いやー、愛用しているTab S8+は当面は万全に使えるとして、くたびれてきたらどうするか迷っているという個人的な事情でじっくりめにレビューしましたが、やはりこのシリーズが筆頭の選択肢になりそうです。
長時間画面オンのままにしたり、バッテリー駆動で長く使っていたりしたいので、液晶ディスプレイとバッテリー持続時間に優れたFEシリーズの方が元々自分の用途に合っています。手持ちのペンもそのまま使えますしね。
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