写真株高・物価高・賃金高が進むなかで、なぜかリストラが増えている。業績低迷企業はもとより、黒字企業でも“構造改革”の名のもとにクビ切りが行われているのだ。巧妙化するその手口を調査した。
◆突然、水を売り始めた会社も…危ない予兆とは
リストラする側の企業の特徴や予兆はあるのか? 人事コンサルタントの根津剛氏(仮名)が話す。
「業績が低迷している、給料がカットされているというのはわかりやすい末期症状ですが、よく見る例で言うと、本業と関係のない新規事業を突然始めるというのは一つの予兆と言えるでしょう。建設会社などは入金スパンが3か月先というのもザラなので、資金繰りに困って日銭を稼げる飲食店ビジネスなどを始めたりするケースがある。粗利率が95%以上だからと、急にミネラルウォーターを売り始めた企業もありました」
昨年、突如40%の給与カットを宣告されたゲーム開発会社の40代男性は社長の変化を予兆として挙げる。
「給与カットの半年ほど前から社長が夜遊びをパタリとやめたんです。それまでは毎月社員を数人キャバクラに連れていってくれたのに。月末の支払い時期になると資金繰りのためか会社を不在にすることも多くなった。キャバクラで暴飲暴食してた頃のほうが、健康的に見えるほど」
シニアジョブの中島康恵社長によると「急に上司が話しかけてこなくなった、自分抜きで打ち合わせがされるようになった、という人は要注意。会社に弁護士や人材会社が頻繁来社するようになったという話も聞く」という。
些細な予兆も含めてチェックシートを用意したので、ぜひチェックしてもらいたい。
◆リストラの予兆を見抜くチェックシート
□突如業績を社員と共有するように(危機意識の共有)
□本業と関係のない新規事業を会社が突然始めた
□社員全員に新規事業案の募集を呼びかけている(本来、経営陣の仕事)
□名前からは何をやっているか不明の部署ができた(ミライ◯◯など)
□経理、人事、総務担当者の人数が減った(間接部門のカット)
□経費削減の圧力が厳しくなって自腹が増えた
□社内運動会や飲み会などの行事が減った(経費削減の一環)
□人事制度改革で報酬体系が変わった(ステルス賃下げの可能性)
□スキルアップ支援をうたう社内制度ができた(再就職支援の一環)
□給料や住宅、交通費の補助がカットされ始めた
□清掃業者との契約見直しで社員がトイレ掃除をすることに
□会議室のイスが乱雑に放置されたり社内が荒れだした
□経営陣が夜遊びを控えるようになった(経費削減が目的か?)
□株主構成が変わった(事業再編でリストラへ)
□社長が取引先への支払日前から不在がちに(資金繰りに奔走中か)
□社長が他の経営者と飲み歩くことが増えた(身売り相談か?)
□経営陣がコロコロ変わる(事業転換でリストラへ)
□取引先が倒産したり、予算を縮小したりしている
□経理担当者が突然辞めた(会社のカネの使い込みの可能性も)
□社長の出社回数が激減した(債権者から逃げている可能性も)
◆いくつ当てはまる? リストラリスク
5コ未満なら……リストラリスクゼロ
報酬カットもリストラの可能性もほとんどないと言っていいだろう。非常に恵まれた環境にあるので、予兆が増えてないかチェックしながら仕事に励むべし
5コ以上なら……リストラ予備軍
すぐにリストラが始まるほどではないが、「ジョブ型への転換」など人事制度改革の名のもとに、報酬が見直される可能性は十分。副業、スキルアップも念頭に
15コ以上なら……リストラ寸前企業
給与カットなどはすでに広義のリストラに当てはまるが、明日からクビ切りが始まる可能性もあり。再就職先をすぐにでも探し始めるべきだろう
【人事コンサルタント・根津 剛氏(仮名)】
人材紹介会社などを経て、現在、主に従業員1000人規模の企業向けに、人事コンサルティングを行う。リストラの“指南”も行っている
【シニアジョブ社長・中島康恵氏】
幼少期はJ1のジュニアユースチームで活躍。大学4 年生時に出資者と仲間を見つけて’13 年に起業。’16年からシニア転職支援を手掛ける
取材・文/週刊SPA!編集部
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