広岡達朗が阪神・藤川監督の采配に警鐘 「強引な野球はハマればいいが、相手に流れが渡る危険性がある」

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2025年06月30日 16:20  webスポルティーバ

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 交流戦の開幕直後、オリックスに3連勝した阪神は、このまま一気に貯金を増やすのではないか──。そんな期待が膨らんだのも束の間、そこからまさかの7連敗。一時は貯金も減らしたが、それでも首位の座は守り続けている。

 阪神の戦いぶりに対し、広岡達朗は「今のままでは危ない」と警鐘を鳴らす。進塁打が打てない。エラーが多い、記録に残らないミスも目立つ。ベンチワークは大雑把で、奇策も裏目。投打が噛み合わないのは、偶然ではなく必然だ──。そう断じたうえで、若き藤川監督の采配にも厳しい目を向ける。

【負けた理由を究明すべき】

「もともと阪神の戦力は整っており、交流戦で一気に貯金を増やすかと思っていたが、8勝10敗に終わってしまった。ふつうなら首位陥落しても不思議ではないのに、ほかのチームも負けが込んで追いつけない。セ・リーグにとってはなんとも不甲斐ない交流戦だった。これだと交流戦をやっとる意味がない」

 広岡は交流戦の阪神の戦いについて、次のように語った。

「負けている試合を分析すれば、その理由ははっきりしている。進塁打を打たないから残塁は増えるし、失点につながるエラーも多く、ほかにも記録につかないミス、さらにベンチワークと、どれをとっても大雑把。ファームから若手を上げて使わないし、打てなくなると奇襲攻撃をかけて失敗する。すべてが裏目、裏目に出ている。

 そういう時こそ原因を究明して、チームを鼓舞し、勝とうという雰囲気づくりを率先していくものだが......。監督の藤川は理論派と言われているそうだが、敗戦後のインタビューでは『明日頑張ります』と、誰でも言えることしか言わん。ヘッドコーチを排除したのは、各コーチから直接意見を聞きたいからだと思うが、その話をきちんとまとめる能力があるのかどうか」

 リーグ戦の勢いのまま交流戦に突入した阪神は、最初にオリックスに3連勝したことで、「オレたちは強い」と過信したかどうかはわからないが、それ以降、投打が噛み合わなくなり7連敗を喫した。

 特にセットアッパー・石井大智の離脱は大きく、"先行逃げ切り"を得意とするいつもの阪神の戦いができなかったことも理由のひとつだろう。

 結局、交流戦の順位が示すように、セ・リーグもパ・リーグも、交流戦前から大きな順位の変動はほとんど見られなかった。

 今からちょうど10年前、2015年の交流戦後には、シーズン途中でセ・リーグの全球団が勝率5割を下回るという異常事態が起きた。しかし、さすがにそこまで極端な状況にはならなかったとはいえ、交流戦明けの切り替えは各チームにとって重要なポイントだ。

 阪神にしても7連敗しながらも首位であるという状況を鑑みれば、立て直しのポイントさえ明確になると、切り替えもしやすいはずだ。

 かつて中日の指揮を執っていた落合博満が「交流戦は自分たちでコントロールできないからこそ、もし負けてもほかのセ・リーグもチームが一緒に負けていれば何の問題はない」と話していたことがあったが、まさに今年はそのとおりの展開になった。

【意表をつく必要はない】

 6月29日現在、阪神は2位の広島に3.5ゲーム差をつけている。交流戦で貯金3つを減らしたとはいえ、首位をキープできているのは大きなことだ。

 広岡は交流戦後の阪神の戦い方について、このように語る。

「新人監督にありがちな『勝とう、勝とう』と躍起になって、動きすぎることをまず抑えることだ。奇襲はめったにやらない作戦だから効果的なのであって、何度もやるのは奇襲でもなんでもない。強引な野球はハマればいいが、時として相手に流れが渡ってしまう危険性がある。満塁ホームランよりも、1点ずつ積み重ねていくのが野球。それを藤川が接戦の展開になった時にできるかどうかだ。

 結局、ポイントで選手がきっちり打てるか、きっちり抑えられるかで投打の歯車というのは噛み合ってくるもの。だから意表をつくようなことはせず、まず基本に立ち返ってどっしり構えるべきだ。送る時はしっかり送り、中継プレーも雑にせず正確にやる。それぞれが正しいプレーを続けていれば、投打というのは噛み合ってくるのだ。それがチームプレーである」

 これから夏場にかけて、投手陣の踏ん張りがカギになる。石井の離脱は痛いが、幸いにも伊藤将司が戻ってきて先発陣に厚みが出た。なんとか先発陣が予定イニングよりも多く投げることで、中継ぎ陣を休ませることができるし、ペナント大詰めの9月にフル動員できる態勢が整う。

 そして広岡は、阪神打線の中軸を担う佐藤輝明、森下翔太についてこう言及する。

「ふたりともまだ強引な部分はあるが、佐藤は状況に応じて逆方向を意識したバッティングができるようになってきた。問題は森下だ。力任せのスイングばかりしていたら、そりゃ打率は落ちるわな。体が前のめりになってスイングすると、どうしてもヘッドが下がってしまう。甲子園でオリックスの宮城(大弥)から打った弾丸ライナーのホームランの感触が忘れられないのだろうな。とにかく藤川に言いたいのは、監督の采配で勝てる試合など片手もない。逆に、監督の采配で負ける試合は山ほどある。そこは肝に銘じておけ」

 広岡がいつにもまして厳しいことを言うのは、阪神を優勝できる戦力だと認めているからこそである。これからの阪神の戦い、藤川監督の采配に注目したい。


広岡達朗(ひろおか・たつろう)/1932年2月9日、広島県生まれ。呉三津田高から早稲田大に進み、54年に巨人に入団。1年目からショートの定位置を確保し、新人王とベストナインに選ばれる。堅実な守備で一時代を築き、長嶋茂雄との三遊間は球界屈指と呼ばれた。66年に現役引退。引退後は巨人、広島でコーチを務め、76年シーズン途中にヤクルトのコーチから監督へ昇格。78年に初のリーグ優勝、日本一に導く。82年から西武の監督を務め、4年間で3度のリーグ優勝、2度の日本一に輝いた。退団後はロッテのGMなどを務めた

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  • 村上の時 満塁で抑えたが もう村上頌アップアップ 7回 ホームラン打たれた 地点でピッチャー交代して欲しい オスナに同点ホームラン
    • イイネ!2
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