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◆政府は「生産調整」を見直す方針
読売新聞によると、政府は、コメの価格高騰を受け必要な生産量確保のため、事実上の減反にあたる「生産調整」を見直す方針を固めました。コメの価格下落で農家が経営難に陥る事態を防ぐ観点から、新たな所得補償の実施も検討するということです。
吉田:塚越さん、まずは「コメの生産調整」と、その見直しについて、詳しく教えてください。
塚越:最近の報道でよく知られましたが、日本は1971年からコメの減反政策を2018年に廃止されるまで続けました。その後も農水省は生産量目安を示していたり、コメから麦や大豆に転作する農家へ補助金を出すなど、いわゆる「生産抑制」の状態が続いていました。人口も減るので、今後需要が一気に増えるとは思えませんが、少なくとも最近のコメの需要を見誤ったと言われているなかで、この政策を見直す動きが自民党内からも出ています。
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吉田:石破首相は、農林水産大臣だったとき、「生産調整」の見直しを訴えていたので、今回は再挑戦ということですか?
塚越:そうです。石破首相が農水大臣だった2009年に、生産調整の緩和と所得補償のスキームに関する論文を書いていて、以前から農業改革を求めていました。ただ2009年当時は、自民党のいわゆる「農水族議員」を中心に猛反対され、実現しませんでした。石破首相自身は農水族議員でもありますが、考え方は主流から外れている方です。今でも石破首相は、この考えを重視しており、今回は小泉進次郎農林水産大臣と連携して推進する動きもあるということです。
一方で、これに反対しているのが今回も「農水族議員」です。なかでも農水族のドンと呼ばれるのが森山裕幹事長。6月5日に群馬県でおこなわれた会合で、「コメが安くなればいいというだけでは食の安全保障は成り立たない」と釘を刺しています。このあたりは、小泉大臣が備蓄米を随意契約に切り替える際、自民党の農水部会といった、党内の正式な手続きをおこなわなかったということで、農水族議員から批判があるということです。
ただ、その後、小泉大臣は森山幹事長と話し合うこともあり、メディアがいわゆる“対立図式”にするのはよくない、といった発言も小泉大臣はしています。その後もコメの増産を訴えたり、輸入米についての発言もあるので、政府自民党のなかでも対立や駆け引きがあるのは事実かなと思います。
◆そもそも“減反政策”がコメ不足の原因
ユージ:農家の「所得補償」の実施も検討するということですが、どこまで補償するのか、ルールを決めるのは難しそうですよね。
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(農業者戸別)所得補償制度は、民主党が政権をとった時期にも実施されましたが、方法については批判もあり、自民党政権になってから廃止されました。このあたりは、やるとなれば実際に国会で与野党含めて議論してほしいかなと思います。
ユージ:「コメの生産調整、見直し」と「コメ農家の所得補償」。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越:どこまでするかは別にしても、ある程度、生産調整と所得補償を緩和して、将来的に輸出を広げていくことは、長期的に見ても大事だと思います。
一方で、農家といっても大規模農家と中小兼業農家ではかなり差があります。数え方にもよりますが、いわゆる大規模農家は全体の10%もありませんが、農業売上の4割程度を占めています。農家さんの数でいうと、中小や兼業農家さんが圧倒的に多いですが、こうした大規模農家とは生産性の面ではかなり異なります。今後、大規模農家を増やして生産性を上げようとする議論がありますが、そもそも農業人口が減っています。農家さんがどこまで対応できるか、推し進めることはできるのかという懸念がありますし、個別補償の範囲をどうするかなど、細かな部分も含めてかなり慎重にやっていかないと上手くいかないのかなと思います。
もう1つは、自民党内の争いです。(メディアを見ていると)小泉大臣がフィーチャーされて、いろいろな対立図式がありますよね。特に農水族と小泉大臣の対立があると思いますが、ちょっと振り返ると、元はと言えば自民党の減反政策のツケという部分が今回のコメ不足にあるわけです。小泉大臣がこの対立の図式を強調すればするほど、炎上します。そこを我々メディアがフィーチャーしすぎるのはよくありません。コメ政策の話をきちんとして、日本の将来のビジョンを考えなければいけません。メディアがこの問題について言いすぎるのも、僕はどうかなと思っています。
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吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ・吉田明世
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