
その報道内容によれば、同社は4月に観光庁に対策を示していたが依然としてトラブルが続いているという。なぜこのようなトラブルが起こっているのか、対策法はあるのか。ホテル評論家の瀧澤信秋さんに聞いた。
「東横インも激おこじゃん…」SNSでも話題に
東横インの発表によると、同社の提携サイトに提供している空室枠が、一部のエージェントによって、海外予約サイト(Agoda等)で転売されており、客の予約した情報がホテルに通知されず部屋が確保されていないなどのトラブルが発生しているという。一部の海外予約サイト(Agoda等)からの予約は手続きの関係上、ホテルへ連絡をしても予約の確認や変更、キャンセル(クレジットカードでの事前決済を含む)をすることはできないため、客自身で予約したサイトへ問い合わせるよう注意喚起をした。
「お客さまにはご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません。何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます」と伝えた。
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トラブルの原因は?
こうしたトラブルの原因、トラブルに遭わないための対策法などについて、ホテル評論家の瀧澤信秋さんに聞いた。――そもそもなぜ予約した部屋が確保されないのか?
瀧澤信秋(以下、瀧澤):例えばホテルは、今回問題になったような集客力のあるAgodaなどの海外オンライン旅行エージェントと契約(仮に“一次的提供”と表する)し空室提供するのだが、こうした海外オンライン旅行エージェントは当該サイトで販売するほか、契約しているパートナーエージェントへも再販する。
そもそもAgodaは「Beds Network(ベッズ・ネットワーク)」という仕組みでのパートナープログラムを世界展開していくと2022年に発表している。ホテルがOTA(※)に卸した在庫をさらに何層もの業者が再販するネットワークだ。
※Online Travel Agentの略。AgodaやBooking.comなどオンライン上で旅行に関する手配を完結させる旅行代理店のこと
また、ホールセール(卸売り)を主とする専門の旅行会社も増えてきており、そうした旅行会社と一時的契約をするホテルも出てきている。「ホテルベッズ」、Expedia内の「クマの手」というアフィリエイト先を募集し卸す仕組みなどもある。
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他方、今回はAgodaがフォーカスされているが、海外サイト全体として同じような事象が指摘できる。とあるホテル予約担当者によると、基本的にホテルが直接契約(一次的提供)をするのはBooking.com、Agoda、Trip.com、Expediaといった主流なOTAのみで、それ以外と直接契約することはないという。
一次提供したエージェントが孫請けの旅行会社に共有したり、それも主流なOTA同士でも共有したりする。Agodaで予約したがBooking.comからホテルへ通知が来たりというように、かなり複雑に絡み合っているという。
どことどこがどのようにつながってどう予約されたのか、または本当は予約されていないのかもなどホテル側には通知が来ないことには追えないし、通知が来たとて実際には追えないことが多分にあり、ホテル側は一次提供以降の再販サイトについては把握できないのが現状だ。
すなわち“今あなたが予約しようとしているサイトとその内容はホテル側が把握していない・知らない内容かもしれない”ということになる。
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瀧澤:すでに特定の海外系オンライン旅行会社を外す宿泊施設側の動きも出ている。とはいえ海外系のオンライン旅行会社の集客力は高く、インバウンド活況下においても頼らざるを得ない宿泊施設側の事情もある。
――こうしたトラブルを避けるために予約時に気を付けたいことはあるか?
瀧澤:予約サイトの簡便さもあり、日本のゲストもこうした海外アフィリエイト先から日本国内のホテル予約をするケースが増えている。海外事業者の場合、トラブルに際して直接的な法的対応が難しい場合もある。
また、海外系サイトで元の料金から何%安いという表記を見て魅力的に感じることもあるが、その元料金表記が繁忙期の高値だったりするため冷静な見極めが必要だ。ベストレート保証をうたうホテルの公式Webサイト、国内のオンライン旅行会社を利用するのが一つの手だろう。
【瀧澤信秋プロフィール】
ホテル評論家。ジャーナリストとして国内の宿泊施設を対象に利用者目線やコストパフォーマンスを重視する現場取材を徹底する一方、宿泊業態に特化した評論家としての忌憚(きたん)なき批評、分かりやすい解説には定評がある。テレビやラジオ、雑誌、新聞、Webなどメディアでも大活躍中。著書多数。All About ホテルガイド。
<参考>
東横イン「【注意喚起】一部の海外予約サイト(Agoda等)ご利用時のご注意事項」
共同通信 2025年6月23日「【独自】宿泊予約アゴダに改善要請 観光庁、部屋確保されずトラブル」
※コメントは原文ママ
(文:瀧澤 信秋)