米Microsoftは6月30日(現地時間)、医療診断分野で、同社が開発したAIシステム「MAI Diagnostic Orchestrator」(MAI-DxO)が、人間の医師をはるかに上回る診断精度と費用対効果を達成したと発表した。
この評価は、「Sequential Diagnosis Benchmark」(SDBench)という新しいインタラクティブなフレームワークを用いて行われた。SDBenchは、診断の難易度が高いことで知られるNEJMの臨床病理カンファレンス症例304件を、実際の臨床現場での医師の思考プロセスに沿った逐次的な診断シナリオに変換したもの。診断者がごく限られた初期情報から始め、必要に応じて質問をしたり、検査を指示したりして、最終的な診断を下す能力を評価する。評価は、診断の正確性だけでなく、検査コストも考慮される。
評価の結果、米OpenAIの「o3」モデルと組み合わせたMAI-DxOの診断精度は80%に達した。経験豊富な人間の一般医の平均診断精度は20%だ。
このモデルは、診断コストを大幅に削減することも示した。例えば、素のo3モデルが78.6%の精度で平均7850ドルのコストを要したのに対し、MAI-DxOは79.9%の精度を2397ドルで達成した。
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それでもMicrosoftは、AIが人間の医師に取って代わるものではなく、むしろ補完するものだとしている。「人間の医師の臨床的役割は、単に診断を下すよりもはるかに広範囲にわたる。AIでは対応できない方法で、曖昧な状況を乗り越え、患者やその家族との信頼関係を築く必要がある」。
MAI-DxOは研究段階であり、臨床での使用はまだ承認されていない。Microsoftは今後の実際の臨床環境での検証が必要だとしている。
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