陸上男子100メートルのサニブラウン・ハキーム(26=東レ)が、満身創痍(そうい)で4日開幕の日本選手権に臨む。3日、会場の東京・国立競技場で前日会見に出席。6月26日に全治3週間の右股関節上部の骨挫傷を負ったと明かした。
今大会で9月の世界選手権東京大会代表に即時内定するには、3位以内が条件。8月下旬確定の世界ランキングによる出場権獲得も有力のため、欠場する選択もあったが、強行出場を明言した。ただ、約2カ月半後の世界選手権への影響は避けられない状況だ。
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サニブラウンの声に勢いはなかった。
会見冒頭で目標を問われると「調子は上がってきましたが、先月26日にちょっとアクシデントがあって」と切り出した。練習中に体勢を崩してとっさに踏ん張ったことで痛みを発症し、同30日に精密検査で右股関節上部の骨挫傷と診断された。全治約3週間のケガを負い「予期していなかった」と視線を下げた。
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ここまで苦しいレースが続いていた。22年から世界選手権2大会連続入賞を収め、24年パリ五輪で日本歴代2位の自己ベスト(9秒96)をマークしたが、今年の最高は10秒31。今季の日本人では29位タイの記録にとどまっていた。
そこに今回のケガが重なった。この日も国立競技場で動きを確認したが「足を上げると痛みを伴う。恐る恐るやっている自分も少なからずいる」と吐露。心身ともに本調子とはほど遠い。
今大会で世界選手権の内定を逃しても、日本勢でただ1人参加標準記録(10秒00)を突破しているため、世界選手権の有力候補には変わりない。ただ負傷から1週間がたっても「痛めた日とさほど変わらない」と回復の兆しは見えず。今後のレースへの影響も避けられない見通しだ。
その中で強行出場を決めた。現役ながら積極的に子どもたちとの交流に努めている26歳には、強い責任感がある。
「プロ選手として、陸上界を引っ張っている選手として、見に来てくださるお客さんのため、応援してくれている子どもたちのために走らないといけない。自分だけの競技生活ではない」
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まずは4日の予選、準決勝へ「ケガが悪化しないように」と細心の注意を払いつつ「できる限りの準備をする」と決意を胸に臨む。日本のエースはこの苦難を乗り越えられるか。【藤塚大輔】
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