長年連れ添ったパートナーを亡くしてしまうのは誰しもが辛いことです。漫画家の人間まおさんが手がけた『とある夫婦の最高なデート』は、病によって妻に先立たれた夫の様子を描いた作品です。以前X（旧Twitter）にポストされると、約3000もの「いいね」が寄せられています。
亡くなった妻と最高のデートに？
いつも暇つぶしのためにパチンコ屋に行っていた夫は、その日に限って“無心”になりたくてパチンコを打っていました。その理由は、長年連れ添った妻を病によって亡くしてしまったからでした。
その後、出玉で景品を交換する際、いつも妻にあんぱんを持って帰っていたことを思い出すも、今は必要なく、タバコと交換してもらう夫。さらに消臭機能があるリフレッシュミストを見ると、妻に常日頃から「タバコ臭いのは許せないわ」と言われていたことも思い出します。しかし、「もう必要ねーか」とひとりつぶやいて帰宅するのでした。
自宅に戻ると、妻の仏壇に今日もパチンコに行ってきたことを話しかけ、「一度でいいからおまえとパチンコ行ってみたかったな」「最高のデートをしてやるのに」ともつぶやきます。生前はお互いの趣味が合わなくて、妻が山登りに行きたいと言っても、それが実現することはありませんでした。そして、「おまえの行きたいところ もっと一緒に行ってやればよかった」と後悔します。
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翌日、「起きなさい！」と死んだはずの妻に起こされる夫。驚いた夫に妻は「最高のデート」「連れて行ってくれるんでしょ？」と話しかけます。夫は現実を受け入れられないものの、確かに目の前にいる妻に連れられ、山登りのデートに出かけるのでした。
そして、山登りが始まり、慣れている妻は夫よりも先に歩きます。息切れをしている夫に妻が手を差し伸べるも、夫は強がって「女の手は借りん」と拒否。途中で休憩を挟み、ラストスパートをかけた頃合いで、妻の背中を追っていた夫は「なんでこいつはおれと別れなかったんだろう」「こいつがいなかったら俺はいまごろ…」と自問自答を繰り返します。その後、妻を追い越して手を差し伸べる夫。妻は「ありがとう」と言って夫の手を取り、2人で山頂にたどり着いたのでした。
山登りを満喫した2人は、パチンコ屋に向かいます。妻は夫に遊び方を教わりながらパチンコを打っていると、ビギナーズラックで大当たり。そして、大量の出玉を得た2人は、すべて妻の好きなあんぱんに交換してもらいます。
2人であんぱんを食べながら帰路についていると、「いつもごめんな」「甘えて全然向き合おうとしてなかった」と、これまでの言動を謝る夫。それでも妻は「私じゃなかったら あなたはとっくに捨てられてたと思うけどね」「きっと…それでも一緒にいれるのが夫婦なのよね」と笑顔で応えます。その後、帰宅すると、2人は手をつなぎながら眠りにつくのでした。
翌日、仏壇の横で目を覚ました夫は、妻とのデートはすべて夢だったと悟ります。そして、夫はアルバムから若かりし頃の夫婦の写真を1枚取り出し、「パチンコ行ってくるなー」「いってきまーす」と家を後にするのでした。
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読者からは「人は失ってから大切なことに気づく生き物だよね」「いい話で感動した」など様々な反響が。そこで作者の人間まおさんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
怒りの感情を大切にしている作者の人間まおさん
―同作を描いたきっかけを教えてください。
当時彼氏とデートしている時、死んだらもうデートできないんだよな、と考えていたら思いつき描きました。
―同作の中で、特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
パチンコではしゃいでいる妻がかわいくてお気に入りです。誰かが喜んでいる姿っていいですよね。
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―他にも世の中の日常を切り取った作品やペット問題に切り込んだ作品など様々な物語を手がけていらっしゃいますが、そういった作品たちはどのような経緯で思いついたり、描き始めようとするのでしょうか？
「怒り」の感情が発端のことが多いです。ニュースや動画、自分の身の回りにあったモヤモヤすることをどうにかアウトプットしたい、という気持ちで描いています。自分の中では「怒り」の感情が一番心が揺すぶられるし、行動するエネルギーにもなるので大切にしています。
―読者にメッセージをお願いいたします。
好きな人と好きなことを共有したりデートしたり、楽しいことをたくさんしてください。
（海川 まこと／漫画収集家）
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