「Olive」で目指す“最高の金融サービス”とは? ソフトバンク/PayPay提携の狙いは? 三井住友カードに聞く

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2025年07月04日 12:40  ITmedia Mobile

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Oliveのスマホアプリから、銀行口座、クレジットカード、ポイントなどの情報を一元管理できる

 三井住友カードが三井住友銀行と共に提供する総合金融サービス「Olive(オリーブ)」。2023年3月にサービスを開始してから、約2年で500万アカウントを突破し、堅調に成長している。2025年5月時点では570万アカウントに達した。


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 その勢いは非金融サービスの拡充にも及び、3月31日には会員制の旅行サイト「Vトリップ」を開始。5月15日にはソフトバンクとデジタル分野において包括的な業務提携をし、「ヘルスケア」サービスの開始や「PayPay」との連携について発表した。そして6月16日にはSBIグループと新会社を設立。Visaの最高ランク「Visa Infinite」を採用した「Olive Infinite」サービスを提供することについても発表した。


 一方で競合他社においても、5月27日には三菱UFJ銀行がライフステージ総合金融サービス「エムット」を2026年度に開業することを発表。5月29日にはNTTドコモが住信SBIネット銀行を子会社化し、銀行業に参入するなど、さまざまな動きを見せる。


 キャッシュレス競争が激化する中、SMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)の中核をなす「Olive」は、今後のビジョンをどのように描いているのか。三井住友カードの伊藤亮佑氏に聞いた。


●最高の金融サービス実現のために“非金融サービス”を拡充する


 そもそもOliveとは、銀行口座、カード決済、ファイナンス、オンライン証券、オンライン保険などの機能を、1つのアプリ上でシームレスに組み合わせた総合金融サービス。提供されるカードはクレジット、デビット、ポイント払いを切り替えできる「フレキシブルペイ」の機能の他、キャッシュカードの役割も備える。


 「他社の場合は、ECやキャリアなどのお客さんに金融サービスを紹介するモデルだと思います。ですがSMBCグループは金融の会社なので、最高の金融サービスを提供するのが一番の目的。その上で金融サービスをより便利に使っていただくための非金融サービスを拡充させていく考えです」


 非金融サービスの第1弾は会員制の旅行サイト「Vトリップ」。そして第2弾はヘルスケアで、三井住友カードとソフトバンク子会社のヘルスケアテクノロジー社が共同で「ヘルスケアポータル」を設立。24時間365日いつでもチャットで健康医療相談ができる会員サービスを、2025年度中に開始予定だ。


 「旅行は昔からクレカとの親和性が高く、カードの付帯サービスの代表が旅行保険や空港ラウンジ。予約から決済まで完結できるという点でも、Oliveとの相性が非常に良いと思っています。ヘルスケアについても同様で、老後の不安についてアンケートを取ると、必ずお金と健康が上位になります。老後の資産形成をする上で、健康であることが最も重要といえるのではないか。そのような観点でヘルスケアを選びました」


●AIを活用し、Oliveを未来型の“スーパーアプリ”に進化させる


 多様なデジタルサービスをカバーするソフトバンクとの業務提携により、ヘルスケアサービス以外にもモビリティやデジタル保険など、さまざまなサービスを拡大することができる。そしてソフトバンクとの提携はAI活用にも及ぶ。


 「サービスがどんどん増えてくると、欲しい情報にたどり着きにくいと思うので、生成AIを活用することで、アプリをパーソナライズ化してサポートする方法を考えています。例えば預金が一定額を超えたときに資産運用するのか、住宅ローンを繰り上げ返済するのか、海外旅行に行くのかなど、複数の選択肢を提案して、その選択をサポートする機能を提供するという方法です。こういうことができるようになると、生活がかなり変わると思います」


 AI活用により、Oliveを未来型のスーパーアプリにする構想を掲げる。その中の決済機能を強化すべく、三井住友カードはPayPayとも業務提携し、PayPayとOliveの間で互いに優遇措置をとる。


 具体的には、今夏以降、「PayPayカード(ゴールド含む)」以外の他社クレカで決済する場合、利用料の負担を依頼する可能性があるなど、新しい方式に移行する予定なのだが、三井住友カード発行のクレカ(ANAカード、Amazonカードなどの提携カード含む)は、今後も利用料なしで、今まで通り利用することができる。


 一方、OliveアプリではPayPay残高の確認や、三井住友銀行からのPayPayチャージや出金などの操作が、Oliveのアプリからもできるようになる。通常、PayPay残高を「PayPay銀行」以外の他銀行口座に出金する場合は手数料として100円が必要になるが、三井住友銀行口座への出金なら手数料が無料になる。


 そしてOliveのフレキシブルペイの支払いモードに、新たにPayPay残高による支払い方法が追加される。PayPay残高用のバーチャルVisaプリペイドを発行して決済可能にするもので、PayPayが世界中のVisa加盟店で利用できるようになる。


 「例えば、飲み会で幹事をすると、PayPayで清算をする機会が増えていると思います。その際、幹事の方に、高額のPayPay残高が残ることになりますが、それをPayPayで使ってもいいし、Olive口座に出金してもいい。フレキシブルペイで、Visaで使ってもいいと、選択肢が増えます。お客さまの志向やライフスタイルに応じて、自由にご利用いただきたいと考えています」


 そしてPayPayポイントとVポイントの相互交換もスタート。PayPayポイントをVポイントに交換してOliveのポイント払いにすることで、PayPay残高同様、世界中のVisa加盟店でPayPayポイントが使えるようになる。


●Oliveが目指す姿とは? キーワードは「オープン」「店舗」


 三井住友カードは2024年7月に、マネーフォワードと個人向け事業における資本業提携を締結した。マネーフォワードが提供するお金の見える化サービス「マネーフォワード ME」は、銀行やクレジットカード、証券、ポイントなど、2430以上の金融関連サービスを連携して、あらゆる家計や資産を管理することができる。この機能と、Oliveの金融機能を掛け合わせることで、「お客さま起点のオープンなお金のプラットフォーム」を創出。これまでにない革新的な顧客体験を提供する予定だ。


 「今までのOliveは当社のサービスのみでしたが、マネーフォワードと組むことで、他社を含むいろいろな口座情報や証券情報をOliveで確認できるようになります。お金を移動させることもできるので、例えば、みずほ銀行口座から三井住友銀行口座に資金移動するといったことを、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で実現できる機能を検討しています。他の口座を含む全ての作業がOliveアプリだけで完結できるのがベストだと思っているので、これまでにない革新的な顧客体験を目指しています」


 振込や送金など、さまざまな操作がアプリでできれば店舗業務が基本的には少なくなってくるので、店舗の在り方が変わってくる。SMBCでは既存の銀行店舗を、銀行とスターバックス、シェアラウンジが一体となった新しいタイプの店舗「Olive LOUNGE」としてオープン。現在、首都圏と関西に店舗を拡大している。


 「Olive LOUNGEでは、Olive会員なら専用席に座れたり、スタバのコーヒーが10%ポイント還元されたりといった、会員メリットを感じてもらう場所になっています。休憩がてら来てもらって、そういえばアプリの使い方で分からないところがあるといったときに、行員が教えることもできます。Olive自体はデジタルバンクですが、こうやって気軽に銀行と触れ合える場所もあるので、若い人だけでなく全世代にとって良いサービスだと思っています」


 このOlive LOUNGE は、2026年春に提供を予定する「Olive Infinite」サービスでも活用される予定だ。最高ランクのプレミアムサービスとして、デジタルとリアルのコンサルティングサービスをフレキシブルに受けることができるのだが、Olive LOUNGEもその相談拠点として想定されている。


 SMBCグループでは、今後もOliveの柱である金融サービスをより便利に使うための非金融サービスを拡充していきたい考えだ。なおパートナーについてはソフトバンク、SBIなど、これまで提携しているところやグループ企業を問わず、顧客にとってベストな選択をしていくとのこと。激化するキャッシュレス競争をどのように駆け抜けていくのか、今後の動きにも注目だ。



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