
連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第122話
マレー料理が身体に合っていたのか......? 胃腸は徐々に復調し、いよいよ目的地であるジャングルのど真ん中に向かう。
※(2)はこちらから
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■ボルネオ島へ
2024年5月。今回の出張の目的地が、「水曜どうでしょう」と同じく、マレーシアのジャングルであることについては、前話まで繰り返し紹介してきた。しかし、この番組と私の出張で違うところがひとつある。
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「水曜どうでしょう」の「マレーシアジャングル探検」の目的地は、マレー半島のタマン・ヌガラ国立公園(にある「ブンブン」)であった。それに対し、私の目的地は、マレー半島から海を隔てたボルネオ島にあった。
東京からジャングルまでの道のりは遠い。羽田空港を出発し、シンガポールのチャンギ国際空港で乗り継いで、クアラルンプール国際空港へ(ちなみに、120話の冒頭の写真は、クアラルンプール国際空港に着陸する直前の飛行機からの景色)。空港併設のホテルで1泊し、翌朝、ボルネオ島最大の都市コタキナバルへ飛ぶ。
コタキナバル空港では、サバ州に入ることを示すスタンプがパスポートに押された。ホテルに荷物を起き、香港大学のトミーが滞在するホテルで、トミーとカーホンと合流した。およそひと月ぶりのことではあるが、再会を祝いながら、いろいろなマレー料理で舌鼓を打つ。
■ひとつ目の目的地、コタキナバル周辺の施設を視察
今回の旅では、トミーが開拓した、ボルネオ島にある3つの施設を視察する予定になっていた。
ひとつ目の施設は、コタキナバル市街地から車で30分ほどのところにあった。私たちはその施設を見学し、どのような設備があるか、そこでどのような実験操作ができるかなどの動線を確認した。
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■コタキナバルの夕べと、東南アジアの夜の喧騒
コタキナバルの市街地に戻り、4人で海辺のレストランに入店。南シナ海に沈む夕陽を眺めながら、「ジャングルツアー」の成功を期して、タイガービールで乾杯をした。そして夕食をとりながら、明日からの行程や、共同研究の方向性などについて話をした。
食後に解散し、ひとりホテルに向かう途中、煌々と明かりの灯るナイトマーケットがあった。乾物類だけではなく、新鮮なシーフードや飲食店の屋台が並んでいた。特筆するなにかがあったわけでもないのだが、東南アジアの活気とエネルギーにあふれるその光景は、私の気分を妙に高揚させた。
滞在するホテルの近くで、アマチュアバンドが生演奏をしているバーのようなところを見つける。その熱気に焚き付けられたように、ふらふらと足が伸びる。
湿気と熱がこもる東南アジアの夜風に吹かれながら、テラス席に座る。そしてバンド音楽を聴きながら、冷えたタイガービールで喉を潤す。こういうエネルギーの中に身を置くだけで、何に対するものともわからないやる気が沸々と湧き上がるのであった。
■そしていよいよ、ジャングルへ!
東京を発って3日目の朝。胃腸が復調しないまま始まった今回の旅であったが、マレー料理が私の口と胃と腸に合っていたのかもしれない。快便が戻り、スッキリとした気持ちで身支度を整え、「Grab(グラブ。Uberの東南アジア版のようなもの)」を呼んで、コタキナバル空港へ向かう。
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話の流れ上、この旅のBGMはもちろん、「水曜どうでしょう」のテーマソングである「1/6の夢旅人2002」。武者震いをしながらこの曲を耳にすることもなかなかないが、
一人きりでは できない事も タフな笑顔の 仲間となら乗りきれる
という歌詞は、いよいよジャングルへと向かう私を奮い立たせた。
東京からは、私と大学院生のF。そして香港からは、トミーとカーホン。
――と、Grabを待ちながらこの曲を聴いていたら、「水曜どうでしょう」よろしく、奇しくもわれわれも4人組であることに、ここではたと気がついたのであった。
※7月6日配信の(4)に続く
文・写真/佐藤 佳