【インタビュー】長野風花が考える未来「CLに出たい」「チームを勝たせられる選手」に

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2025年07月05日 12:30  サッカーキング

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[写真]=須田暉輝
 昨シーズン、ウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)を12クラブ中、7位で終えたリヴァプール・ウィメン。2023−24シーズンは4位と躍進していたため、期待も大きかったが、シーズン序盤から負傷者が続出し、シーズン中に監督が解任されるなど、難しい1年に終始した。

 なでしこジャパンMF長野風花はそんな中でも奮闘し、リーグ戦22試合中、21試合に出場し、チームを引っ張る一人としてプレーした。今オフ、帰国中だった長野に1年間、そしてリヴァプールに加入してからの2年半を振り返ってもらうとともに、ここからの成長や目標などを聞いた。

インタビュー=小松春生
※インタビューは6月後半に実施しました。

―――昨シーズン、リーグ戦は7位に終わり、2月には監督が交代するなど、苦しい1年だったと思います。

長野 難しいシーズンで、いろいろと変化が多い1年でした。けが人も多く、シーズン初めから紅白戦で11対11ができない状況で、一番多い時期は13人くらいしかプレーできる選手がいない状況もありました。練習からユースの選手にたくさん来てもらい、試合も何とかという状況で、例えば日曜日に試合であれば、金曜日にユースから選手が来て、ちょっと合わせて一緒に試合に出ることもありました。

 2023−24シーズンは4位で終わり、次のシーズンはもっと上を目指そうと言っていた中で、スタートから勝てなかったり、勝たなければいけない試合を落としてしまったり、チームとしてもすごく難しいシーズンでした。

―――その中でも成長できた部分はありますか?

長野 監督の求めるスタイルもありますし、他の選手の特徴もあるので、自分が今やりたいプレーをなかなかできなかったり、それ以前に守備の時間が多く、いざボールを取っても蹴ってしまい、すぐに失ってまた守備、という内容が多かったシーズンでした。それでも個人的にはけがをせずに試合に出続けたことと、ずっと課題にしている1対1の守備対応や、勢いがある相手に対して、その勢いを止めるところにもフォーカスしてプレーしました。

―――守備の課題と成長はこれまでも言及してきました。

長野 一気に成長するものでもないですし、取り組み続けなければいけないところです。私は海外の選手に比べて背が低いので、そういう面を含めていろいろと向上していかないといけないので、すぐ「できるようになった」とはなりませんが、徐々に徐々に相手との距離感や当てられた時の強さもわかってきたので、日々まだまだ成長ですけど、相手を知ることができていること、その時の対処法を自分の中でつかみ始めているので、そこはよかったと思います。



―――対処法とは具体的にどのような部分でしょうか?

長野 私の場合は1対1の対応で、足が少し揃いがちになるところがあって、そこは今、取り組んでトレーニングしています。あと、ドリブラーと対峙する時は、突っ込み過ぎると回られてしまうことがあるので、ボールを見ながら遅らせるといった、選手によっての対応パターンも自分の中で見つけられたことがよかったと思います。

―――長野選手は主戦場がボランチでしたが、他の日本人選手もボランチでのプレーを求められるケースも多いです。

長野 中盤の選手は、攻撃はもちろん、守備でもピッチの真ん中にいるので、指示を出す必要があります。日本人選手で守備の話もしますし、「そう思っているんだな」という発見もあったり、みんなすごく意識してやっていると思います。今、イングランドでプレーしている日本人の選手たちは、調整力といった日本人らしさの部分で評価されているとプレーをしても感じますし、例えば違うチームのプレーを移動中のバスで見ていても、「この選手、いい選手だよね」とチームメイトが日本人選手のことを言っていたりするので、日本人の特徴は出せていますね。

―――その中での自己主張も必要です。

長野 なかなかボールが受けられない部分では、もっと主張する必要がありますし、一方で前線には速い選手がいて、行けるなら行こうというスタイルなので、後ろから裏に蹴る中で、自分の良さをどう出せるかを考えた2年半でした。サッカーは正解がないですし、だからこそ面白い。どういうスタイルであれ、最終的に点を取らないといけないスポーツなので、いろいろなサッカーを学ぶことができて、個人的にはすごく楽しいです。



―――リヴァプールのサポーターや街の空気感はいかがでしょう?

長野 リヴァプールと言えばフットボールみたいなところがありますし、男子の試合を見に行っても、ファンの方々の熱量はすごいです。女子の試合も男子に比べると観客数はまだまだですけど、一緒に戦ってくれるような感じで、女性も男性も子どもも本当に幅広い層の方々が見に来てくれるので、やっぱり文化だなと思います。

―――今シーズン、ようやく加入後初得点を挙げましたが、それがアンフィールドでのマンチェスター・ユナイテッド戦(2025年3月)でした。

長野 一生忘れられない経験、瞬間でしたし、得点した時は本当に時間が止まった感じでした。女子チームがアンフィールドでマンチェスター・ユナイテッドに勝った初めての試合でしたし、チームの関係者みんながすごく喜んでいました。もちろんチームメイトもロッカーでお祭り騒ぎみたいに、すごく盛り上がっていましたし、歴史的な勝利を自分の得点でできたことはすごくうれしかったです。

―――加入から2年少々を要しましたが、時間がかかったな、という気持ちでしたか?

長野 チームメイトやスタッフにも「風花いつ点取るの?」といじられていて(笑)、さすがに今シーズンは取らなければとは思っていました。何度かチャンスはありましたが、ようやく決めきることができて「やっと取れた」という感じでホッとしましたね。



―――長野選手は男子チームの試合もたくさん見に行かれている印象です。

長野 アンフィールドまで家から車で10分くらいなので、行きやすいということもありますし、(遠藤)航くんからチケットをもらえるので、行ける日は必ず見に行くようにしています。そういう環境があること自体にすごく感謝しています。自分ではそんなに自覚はなかったですけど、リヴァプールにいることの意味というか、あんなに熱狂的なファンは世界中を見てもいないですし、選手たちも異次元の選手たちばかりで、見に行けるのであれば見に行った方が絶対に自分のサッカーのためにもなるので。そもそもリヴァプールがすごく好きなので、一ファンとして行っていますね。

―――地元の友人もできたそうですが、街にすっかり馴染んでいますね。

長野 すごくいい街で、落ち着きます。ロンドンはすごくキラキラしていて楽しいですけど、住むとなったらリヴァプールが本当にちょうどよくて。落ち着くし、でも田舎過ぎず。素晴らしい環境で生活させてもらっています。オフは何にもしてないですね(笑)。最近できたスカウサーの友達には、いろいろなところに連れていってもらいましたけど、基本、何もしていないですね。試合を見に行くか、友達と食事に行くくらい。ほのちゃん(エヴァ―トン在籍の林穂之香)やマンチェスター組とも行きますけど、頻繁ではない感じです。

―――これまでに韓国、アメリカ、イングランドでプレーし、様々なカルチャーなども体感されてきたと思います。

長野 私は自分の知らないことを知ることがすごく好きで、日本も韓国もアメリカもイングランドも、いろいろな人がいて、いろいろなサッカーのスタイルがあって、いろいろな生活がある中で、自分の知らないことだらけで、びっくりすることもありました。でも、いろいろなことを知っていく中で、自分の幅も確実に広がるので、楽しみながら生活しています。



―――こんなキャリアを歩むと考えていましたか?

長野 全然していなかったです。直感で生きているタイプなので、こういうキャリアは想像していなかったですし、びっくりですね。サッカーを通じて、いろいろな人と出会う中で、正解は絶対に一つではないということが一番学んだことです。一人ひとり考え方が違うし、その一つのパス、一つのシーンに対しても海外の選手は自己主張もすごい。いろいろな意見が出てきて、自分はこうと決めつけては絶対に駄目だなと、強く学びました。

―――ここからどういった成長をして、どういった選手になっていきたいですか?

長野 私が常に思っているのは、サッカーはチームスポーツであり、もちろんみんなで戦うことも大事ですが、そのためには一人ひとりの個が強くないと、チームが大きくならないと思っているので、個の成長は永遠の課題ですけど、そこに取り組みながら、チームを勝たせられる選手でいたいです。

―――長野選手の中では、そのためには何が必要だと考えて向き合っていますか?

長野 答え的にはすべてですけど、それが答えというか、本当に思っていることで。世界で戦う、なでしこジャパンが世界一になるためには、まだまだというか、全てにおいてレベルアップしないといけないので。私たちが目指しているものは、そうしないとつかみ取れないところにあるものです。なので、一日一日が無駄にできないし、自分と向き合ってやっていくしかないと思っています。

―――クラブチームの選手としての目標は何でしょうか?

長野 今はヨーロッパでプレーしているので、チャンピオンズリーグに出たいとはずっと思っています。でも、やはりまずは個人の成長です。チームに貢献するため、個が大事なので、そこにフォーカスをして、その先にいろいろな結果が見えてくると思うので、一日一日、日々成長をテーマにやっていきたいと思います。


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