災害きっかけで「減塩ピザ」=広島・呉の元自衛官―西日本豪雨、6日で7年

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2025年07月05日 21:01  時事通信社

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時事通信社

取材に応じる成本豊さん=6月25日、広島県呉市
 災害関連死を含め300人以上が犠牲となった2018年7月の西日本豪雨は、最初の特別警報から6日で7年。大きな被害が出た広島県呉市に、元自衛官成本豊さん(46)が営むピザ店がある。メニューには本場イタリア・ナポリから輸入した石窯で焼き上げる人気の本格ピザと共に、原材料や製法のルールが厳格なナポリピザにとって「邪道」とも言える減塩ピザも。きっかけは豪雨災害での経験だったという。

 成本さんは、海上自衛官として呉基地(同市)に勤務していた27歳の時に食べたナポリピザのおいしさに衝撃を受け、ピザ職人への転身を決意。自衛隊を辞め、高松市の店で修業しながらナポリにも渡って勉強し、10年に地元呉市で店を開いた。

 その後、地元で減塩食の普及を図る医師らから減塩ピザを作ってほしいと依頼された。伝統の製法にこだわっていた成本さんは断ったが、繰り返し頼まれ、一度だけイベント用に作った。予想に反して好評だったことが印象に残っている。

 その2カ月後に西日本豪雨が発生。店に被害はなかったが、救助活動をする自衛隊の姿をテレビで見て「もし自衛官を続けていたら、自分もその場所にいただろう」と思い、何もできない状況にもやもやしたという。

 そんな中、高齢者が多く避難する呉市安浦地区の避難所へ炊き出しに行く知人に同行した。配られる弁当やおにぎりなどには濃い味付けのものが多いと聞き、イベントで考案した減塩ピザを提供したところ喜ばれた。

 成本さんは「求められるピザを作ることがどれだけ大事か経験した。だいぶ考え方が変わった」と話す。

 減塩ピザのニーズの高さを実感し、店での提供に向けて専門家らの助言を受けながら約1年間、試行錯誤を重ねた。完成したピザは、塩分が約2グラムで通常の半分以下。全粒粉やごま、ヒマワリの種などを混ぜ込んだ灰色の生地は、かむほどに深い味になるという。

 今は原材料の輸入が止まってしまい提供できていないが、「高齢化で食事制限が必要な人も増える中、やらないといけない」と再開に向けて意気込む。 

成本豊さんが営むピザ店で提供する減塩ピザ(本人のインスタグラムより)
成本豊さんが営むピザ店で提供する減塩ピザ(本人のインスタグラムより)

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