陸上世界選手権東京大会(9月13〜21日、国立競技場)の選考を兼ねた日本選手権が6日に終了した。男子100メートルは桐生祥秀(29=日本生命)が10秒23(追い風0・4メートル)で5年ぶり3度目の優勝。同200メートルは鵜沢飛羽(22=JAL)が自己タイの20秒12(無風)で3連覇した。400メートルリレーで史上初の金メダルを目指す中、好調な2人の存在は力強い。男子100メートルで10秒00の元日本記録保持者、伊東浩司氏(55)が日本選手権を総括し、約2カ月後の世界選手権のポイントを語った。【取材・構成=藤塚大輔】
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今年の日本選手権は桐生の復活が目を引いた。ウオーミングアップを見ても、心身ともに充実している様子が伝わってきた。予選では向かい風1・5メートルの悪条件の中、10秒23で1着。かなり余力をもって走れていた。決勝でも2次加速でピッチを上げていて、30〜70メートルの動きも良かった。今大会の短距離陣では最も印象的だった。
一方で他の選手たちは動きが硬かった。今年は6月までに10秒20切りを達成したのが過去最多の17人。激戦が予想される中、世界選手権2大会連続入賞のサニブラウンが大会前日に股関節の骨挫傷を明かしたことで「自分にもチャンスがある」と力が入ったのではないか。大学生は4〜6月にインカレなどの大会が続き、ピーキングが難しかったと思う。
男子200メートルでは、鵜澤に成長を感じた。昨年までは前半を自重気味に入っていたが、今年は序盤から飛ばしている。決勝での20秒12はもちろん、予選で20秒28を出した点も評価したい。日本選手は予選で力を温存しがちだが、鵜澤は力のある走りをしていた。世界大会で実力のある海外勢と走れば、流れに乗って日本人初の19秒台が出るのではないか。
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桐生と鵜澤の好調ぶりは、リレーでも追い風になる。5月の世界リレー予選ではサニブラウンが1走、鵜澤が3走で37秒84を記録。このタイムは南アフリカ、米国に次いで、今季世界3番目につけている。
そこに経験豊富な桐生をはじめ、100メートルで今季日本人トップ10秒06の柳田大輝、世界リレー4走の井上直紀らが加われば、誰が入っても力のある布陣が組める。日本選手権の短距離種目のタイムは物足りなさもあったが、悲観することはない。十分に金メダルを狙える力がある。
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