阪神・伊原陵人、中日・金丸夢斗、ヤクルト・荘司宏太 ルーキー左腕3人の「現在地と可能性」を阿波野秀幸が徹底解説!

2

2025年07月08日 07:20  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 1年目からローテーション投手として奮闘する阪神・伊原陵人。まだプロ未勝利だが素材のよさが光る中日の金丸夢斗。そして抜群のチェンジアップを武器に快投を続けるヤクルトの荘司宏太。いずれもプロ1年目の左腕たちが、個性を発揮しながらプロの世界で戦っている。プロ1年目に15勝、201奪三振で新人王に輝いた元近鉄のエース・阿波野秀幸氏に、3人の現在地と今後の課題について語ってもらった。

※成績はすべて7月7日現在

【防御率1点台を支える抜群の制球力】

── まずは阪神のドラフト1位ルーキー・伊原投手です。ここまで17試合に登板(先発11試合)して、5勝2敗1ホールド、防御率1.26の成績です。

阿波野 大学から社会人経由の即戦力として、チームの期待にしっかり応えていると思います。

── 伊原投手は身長170センチと小柄で、軸足(左足)から動く投球フォームは、ヤクルトの高橋奎二投手に似ています。

阿波野 小柄で細身の投手は、反動をつけるために、初動で足踏みをしたり、かかとを上げたりするものです。セットポジションからの投球フォームにおいても、左腕の使い方がコンパクトで安定しています。現在は190センチ台の大型投手が目立つ時代ですが、小柄な投手は体の使い方が器用ですね。伊原の場合、打者からすると、投球に差し込まれるようなタイミングになるのでしょう。

── 開幕6試合は中継ぎで登板。それから先発ローテーションに入りました。

阿波野 最近は新人投手が大事に起用される傾向がありますが、彼は開幕からリリーフで結果を残し、先発の座を勝ち取りました。ドラフト1位ですから、もともと能力は高いのでしょうが、プロ初先発初勝利(4月20日の広島戦)以降、約2カ月にわたり、中6日でコンスタントに登板を続けていました。その姿からは、試合に向けた準備がしっかりと構築されていることが伝わってきます。

── 71回2/3を投げて、52奪三振、13四球。コントロール抜群なのは高校(智辯学園)の先輩である村上頌樹投手を彷彿とさせます。そして左投手はやはりスライダーとチェンジアップのコンビネーションが大事なのでしょうか。

阿波野 チェンジアップも時折投げているように見受けられますが、現時点での投球スタイルは、右打者への内角ストレートとカットボールを軸としています。新人ながら、しっかりと攻める投球ができています。そして彼の最大の特長は、なんと言っても優れた制球力だと思います。さらに、ここまで被本塁打0というのもすばらしい。新人としてこれがどこまで続くのか、今後も注目しています。

── 今後、どのような投球をすべきでしょうか。

阿波野 セ・リーグのペナントレースから始まり、交流戦を挟んで、再びペナントレースに戻ってきました。これまでは、相手にとっても初見の投手でしたが、今後は相手も配球の傾向や手の内を把握したうえでの対戦になります。ここからが、本当の意味で真価を問われることになるでしょう。そうしたなかで、たとえば外角へのチェンジアップのような新たなコンビネーションを、どのように使っていけるかですね。

【打者の特徴を見極めていくことが重要】

── 金丸投手はドラフトで4球団が1位指名した逸材です。実際の投球を見ていかがですか。

阿波野 今年の新人のなかで、素材としてはズバ抜けています。最速154キロのストレートが魅力ですね。最近少なくなった、本格派の象徴であるワインドアップモーションも、私としては惹かれます。

── ここまで37回1/3を投げて37奪三振です。カーブは往年の中日エース・今中慎二投手を彷彿とさせます。

阿波野 ストレートがいいとわかっていても、(カーブで)これだけ三振を多く奪えるのは大きな強みですね。あとは緩急です。もう少し緩い"オフスピード"のボールをコントロールできるようになれば、打者はさらにストレートに手が出しづらくなるでしょう。今中投手のカーブは、もっと遅いボールでしたね。

── いまだ未勝利なのが不思議なぐらいです。

阿波野 昨春に腰を痛めた影響もあり、キャンプではかなり慎重に調整が進められ、開幕も二軍スタートとなりました。一軍での初登板は5月5日でした。勝ち星に関して言えば、今季の阪神と中日では、1試合平均得点がちょうど1点ほどの差があり、打線の援護が少ないなどの影響もあるのでしょう。ただ、広いバンテリンドームを本拠地とするチームに入団した以上、勝ち星を積み重ねていくためには、「1点の重み」をより強く意識しながら投げていくことが大切だと思います。

── 被本塁打は2本ですね。

阿波野 5月16日の巨人戦(東京ドーム)では、4回に増田陸に外角高めのストレートを左中間へ運ばれまた。6月5日のソフトバンク戦(みずほペイペイドーム)では、初回に野村勇に真ん中のストレートを左中間へ運ばれました。ふたりともいわゆる本格的なホームランバッターではないものの、一発のパンチ力は十分に秘めており、もう少し慎重さが必要でしたね。

── 増田選手は先制本塁打、野村選手は逆転本塁打でした。

阿波野 先述したように、5月に初めて一軍に途中合流し、まだプロの打者の傾向が十分につかめていないため、今は自分のなかのベストボールを投げている段階だと思います。今後は、"ランク分け"や"カテゴリー分け"を行ない、打者の特徴を見極めていくことが大切になってきます。

 たとえば、回の先頭で出塁させてはいけない俊足の打者、不用意に投げると一発を浴びる長打力のある打者、比較的省エネで対処できる打者など、それぞれに応じた打ち取り方を追究していくことで、勝ち星も伸びていくはずです。スタミナを温存することも大事ですから。

── 相手打者や試合展開を読むことが必要になってくると?

阿波野 そうですね。今年のケースで言えば、伊原の場合は6回を投げ終えた時点で、1点ビハインドでもバックの援護が期待できるため続投となることが多いですが、金丸の場合は代打を送られる可能性があります。また、これまでは先発登板の間隔を10日から7日ほど空けてきましたが、今後は中6日での先発ローテーションを視野に入れていくことも必要になってくるでしょう。

【チェンジアップは秀逸】

── ドラフト3位の荘司投手は開幕から12試合連続無失点を記録しました。

阿波野 彼の魅力はストレートとチェンジアップのコンビネーションにあります。特にチェンジアップの抜け方が非常に優れており、体全体を使った躍動感が感じられます。ストレートのような腕の振りから、巧みにチェンジアップを投じています。

── チェンジアップ以外はどうですか?

阿波野 平均球速は140キロですが、もう少しスピードが上がればさらによくなると思います。この3人のなかでは、コントロール面ではやや粗さがありますが、普通にストライクを投げる能力は持っています。

── 荘司投手のフォームは、岡島秀樹さん(元巨人ほか)に似ていませんか?

阿波野 荘司のほうが、もう少し捕手を見て投げているのではないでしょうか(笑)。力投派なので疲労の蓄積は大きいですし、おもに2球種で勝負しているため、短いイニングのリリーフ登板が中心になるでしょう。ですが、打者に見極められた時にどう耐え抜くかが今後の課題です。投球回数は少ないものの、まだ被本塁打がないのは立派なことです。

── この左腕トリオが、今後新人王候補として注目を浴びそうですね。

阿波野 伊原は現在、防御率1.26で規定投球回に達すれば、タイトル争いに絡んできます。このままシーズンを通して防御率1点台を維持できれば、新人としてすごい成績です。あとは、それを追う金丸がどれだけ勝ち星を伸ばせるかですね。

── かつて阿波野さんと日本ハムの西崎幸広さん(日本ハム)は、ともに15勝をマークするなど、ハイレベルな新人王レースを繰り広げました。

阿波野 私も西崎投手も大学では春と秋のリーグ戦が主だったため、プロの暑い夏場の登板を乗り切るのは大変でした。投手出身の藤川球児監督は、そのあたりのコンディション面をよく理解してくれているので、(伊原にとっては)とても心強く感じています。


阿波野秀幸(あわの・ひでゆき)/1964年7月28日、神奈川県出身。桜丘高から亜細亜大学を経て、86年のドラフトで近鉄、巨人、大洋による競合の末、近鉄が交渉権を獲得し入団。入団1年目に、最多奪三振王(201個)、新人王のタイトルを獲得。88年、伝説となる「10.19」のダブルヘッダーに連投し悲劇を経験。89年、最多奪三振(183個)と最多勝利(19勝)のタイトルを獲得し、悲願のリーグ優勝を果たす。その後、95年に巨人、98年に横浜(現・DeNA)に移籍。98年は50試合に登板するなど日本一に貢献。2000年に現役を引退。現役引退後は巨人、横浜、中日のコーチを歴任。現在は解説者として活躍の傍ら、ジャイアンツアカデミーのコーチも務めている

このニュースに関するつぶやき

  • 阿波野みたいな奴が何を偉そうに解説しよんねん!
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングスポーツ

前日のランキングへ

ニュース設定