東京商工リサーチが発表した「2024年度の倒産発生率(普通法人)」の調査によると、倒産発生率は0.282%と前年度(0.252%)から0.030ポイント悪化し、2015年度以降の10年間で最悪となった。コロナ禍が落ち着く一方で、円安や物価高、人手不足、賃金上昇といったコスト増が企業収益を圧迫している。
企業倒産は、コロナ関連支援の縮小・廃止に伴って増加しており、それに連動して倒産発生率も上昇している。2021年度は支援策の効果により0.167%に低下したが、2022年度は0.196%、2023年度は0.252%と年々悪化。2024年度は0.282%となり、2015年度以降で最悪の水準を更新した。
●倒産発生率を都道府県別でみると
都道府県別では、「悪化」が37都府県(前年度は45都道府県)、「改善」は8県(同2県)、「同水準」は2県(同ゼロ)となった。
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倒産発生率が最も高かったのは岩手県で0.423%(前年度0.324%)。前年度5位からさらに悪化した。2位は山形県の0.408%(同0.309%、前年度6位)、3位は青森県の0.397%(同0.285%、同11位)。そのほか、宮城県が5位(0.368%)、福島県が9位(0.321%)と、東北5県すべてがワースト10入りした。最も低かったのは、2年連続で沖縄県の0.174%(前年度0.132%)だった。
●倒産発生率を産業別でみると
産業別では、「金融・保険業」と「運輸業」を除く8産業で倒産発生率が悪化した。
最も高かったのは「情報通信業」で0.499%。前年度(0.379%)から0.120ポイント悪化した。ソフトウェア業では、政府や自治体の創業支援を受けて少資本での起業が増えており、事業が軌道に乗る前に資金繰りが行き詰まるケースも少なくないという。
次いで「卸売業」が0.464%(前年度0.398%)、「運輸業」が0.449%(同0.472%)だった。倒産発生率が0.4%台の産業は3産業(前年度は1産業)に増加した。
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卸売業では、円安による仕入れコストや人件費の上昇に対し、販売価格への転嫁が追いつかず、倒産が増加した。運輸業では、ドライバー不足や時間外労働の上限規制といった課題があるものの、価格交渉の進展もあり、倒産は4年ぶりに減少。倒産発生率も前年度を下回った。
2025年度はコロナ借換保証の返済が本格化するほか、トランプ関税の行方や金利上昇など、中小企業を取り巻く経営環境は引き続き厳しい。東京商工リサーチは「業績改善が遅れた企業を中心に、2025年の倒産は緩やかに増勢しており、倒産発生率の悪化は避けられない」と分析している。
本調査は、国税庁の「統計年報書」に記載された法人税課税対象の内国普通法人(298万2191件)と、東京商工リサーチが集計した2024年度の企業倒産(負債1000万円以上)のうち普通法人(8421件)を基に算出された。倒産発生率は、「普通法人の倒産件数 ÷ 普通法人件数 × 100」で算出している。なお、普通法人には株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社、企業組合、医療法人などが含まれる。
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