
アメリカで開催されているクラブワールドカップは、ベスト4が出そろった。賛否両論、さまざまな意見がある大会も、いよいよ佳境を迎えている。
今のサッカー界の仕組み――世界中から優れた選手がヨーロッパに集まる――を考えれば、ヨーロッパ勢がベスト4を独占しても不思議はなかったが、南米勢がその一角を崩したことは、この大会の盛り上がりにおいて価値あるものになったと言えるだろう。
ただ、クラブチームによる世界選手権がこれほどの規模で開かれるのは初めてとあって、正直、この大会をどうとらえればいいのか、その判断は難しい。
特にヨーロッパ勢にとって、今の時期はシーズンの狭間。昨シーズン(2024−2025)がまだ続いていると見るべきなのか。あるいは、新シーズン(2025−2026)がすでに始まっていると見るべきなのか。
たとえば、今大会で絶大な人気と集客力を誇るレアル・マドリードに対する視線は、明らかに"新チーム"へのそれである。
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新たに就任したシャビ・アロンソ監督から、何を求められているかを尋ねられたヴィニシウス・ジュニオールは、こんなことを話している。
「(今までよりも)少しインサイドでプレーすることが多いが、それは試合内容やチームの状況次第。いいプレーをするためには、ピッチ上で多くのことが必要になるが、今は非常にいいプレーができている」
また、新加入のトレント・アレクサンダー=アーノルドは、リバプールとレアルとの違いについて問われると、「言語と場所」と笑って答え、「でも、結局のところ、サッカーだから」と言い、こう続けている。
「会話に参加するのは大変で、今は相手の言っていることを理解しようと努力しているが、ピッチに立った瞬間に自分の役割は理解しているし、監督は僕がゲームプランを含めたすべてを理解しているかを確認するために、個別にたくさん話しかけてくれる。どのチームでプレーするかに関係なく、ピッチに立ったら、相手チームと対戦し、自分の役割を担う。それがサッカーであることに変わりはない」
新たに3バックを導入したり、ヴィニシウスの言葉にもあるように、前線を2トップに近い配置にしたりと、レアルが興味深い動きを見せているのは間違いなく、それが新チームに対する注目をより一層高いものにしているのも確かだろう。
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とはいえ、その一方で、これまで長くクラブを支えてきたルカ・モドリッチは今大会を最後に、マドリードを去る。
そんな選手がピッチに立っている以上、まだ昨シーズンが続いているのである。
実際、リーグによって多少の違いこそあれ、おおむね昨シーズンの終了は5月下旬で、新シーズンの開幕は8月中旬なのだから、時期的に言えば、クラブワールドカップは2024−2025シーズンの締めくくり、と考えるほうが自然ではあるのだ。
そのレアルと準々決勝で対戦し、激しい打ち合いの末に敗れたドルトムントも、新たな監督を迎えたクラブのひとつ。そこへ向けられる興味もまた、レアルに通じるものだ。
「彼は毎日、チームを蹴散らそうとしている」
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ニコ・コヴァチ新監督について、笑いながらそう表現したのは、カリム・アデイェミである。
「最終的には、(新監督が目指すスタイルの)すべては自然に身につくと思う。一番大切なのは、チームとしてひとつになり、スピリットをひとつにすること。彼は毎日私たちにそれを教えようとしてくれる。もちろん、他にも戦術的なことはあるが、それは私たちにとても合っている」
ここで触れた2クラブについて言えば、新指揮官が就任し、新たなシーズンへの準備がすでに始まってはいる。
だが、選手のコンディション的にはどうだろうか。
長いリーグ戦に加え、チャンピオンズリーグをはじめとするヨーロッパでの大会も終わったばかり。まして、今大会に出場した選手のなかには、6月上旬の国際Aマッチデーで各国の代表として大事なワールドカップ予選を戦った選手が少なくない。
それを考えれば、すでに新シーズンが始まっているどころか、そのための準備が整っているとさえ言い難いのが、実際のところだろう。
まだ昨シーズンが続いているのか。それとも、新シーズンはすでに始まっているのか。
5月中旬にブンデスリーガ最終節を終えたあと、ノルウェー代表としてワールドカップ予選2試合を戦い、その後、ドルトムントで今大会に出場しているユリアン・リエルソンはそう問われ、「この大会のあとに少し休みが取れると思う」と苦笑いで言い、こんなことを話している。
「リーグ戦を終えたところからまだ試合が続いているし、その間には代表の試合もあった。だから、あまり休みが取れていないので、本当に休んでいるという感覚がない。すべてが続いていて、気がつけば(新シーズンの)リーグ戦にも出場しているのだろう。
だが、フットボール選手としてそんなに先のことを考えることはできない。数日先か、せいぜい数週間先まで。今はここにいる以上、この大会に集中している」
新シーズンに向けた戦いは、今大会からすでに始まっている。特に監督が代わったクラブは、その意味合いが強いのだろう。
だが、心身両面での選手の状態に関して言えば、まだシーズンは終わっていない。
今大会を終えたら、ようやくひと息入れられる。それがヨーロッパでプレーする選手たちの正直な気持ちではないだろうか。