
「できて当たり前」が前提の学校生活。その中で「わざとじゃないけどできない」と苦しむ子どもがいることを知ってほしい――。生まれつき自閉症と発達性協調運動障害(DCD)がある7歳の男の子が、体育の授業で経験した出来事が、SNSで大きな反響を呼んでいます。母親が語った息子の障害の特性、学校とのやりとり、家庭での取り組みとは。
【話題になった投稿】体育の授業で縄跳びができず、一人だけ立たされたという
「あり得ないほど不器用」――発達性協調運動障害とは
現在7歳の息子さんには、自閉症と発達性協調運動障害(DCD)があるといいます。
「息子は知的には遅れがなく、IQも平均域なので勉強は今のところ遅れていません。ただ、普通に見える分、困りごとに気づかれにくい場面が多いです」
DCDは「あり得ないほどの不器用な子」という表現がわかりやすいといいます。
|
|
「幼少期は手先がとても不器用で、細かい積み木が積めなかったり、スプーンもうまく使えませんでした。コップ飲みができるようになったのも遅かったです。今は細かい作業は改善されましたが、粗大運動が苦手で、スキップはまだできませんし、ボール遊びも苦手です。自転車も補助輪なしでは乗れません」
縄跳びができないまま、一人だけ立たされた体育
そんな息子さんが1年生の体育の授業で体験したのが、縄跳びの授業でした。
「縄跳びができなくて、誰にも助けを求められないまま、座ることもできずにずっと立たされていました」
母親は息子に詳しく尋ねることを避けましたが、「縄跳びが嫌だ」という強い拒否反応が残り、以後、学校への行き渋りが始まったといいます。
「最終的には両親が交代で教室まで送らないと登校できなくなりました」
|
|
学校側には伝えてあったはずの障害特性
息子さんの障害のことは、入学前から学校に伝えてあり、担任にも共有されていました。しかし、なぜ一人だけ立たされてしまったのか――。
「まだ理由は分かりません。発覚したのが先週末で、これから学校や教育委員会と確認する予定です。親としても理由を知りたいです」
登校拒否を避けるために体育は見学に
母親は息子の心がこれ以上傷つかないよう、縄跳びの授業は無理に受けさせないと決めました。
「支援級の担任には相談して、体育の授業はできる限り付き添ってもらっていましたが、どうしても息子が嫌がったので、登校拒否になるよりはと判断して、縄跳びがある授業は見学させてもらいました」
息子さんは知的障害がないため、普段は支援級の情緒級に在籍しながら、体育などは交流級で受けていました。
|
|
親だけでは限界、医療機関と二人三脚で
家庭でも息子さんの運動機能向上を支え続けています。
「医療機関で作業療法士(OT)の指導を受けています。一見遊んでいるように見えますが、息子がどこでつまずいているのかを見極め、家でできるエクササイズも教わっています」
息子さんは赤ちゃんの頃、ハイハイの期間が短く、両手で体を支える訓練が不十分だった影響が残っているそうです。
「家では親が両足を支えて、両手を使って前に進む練習をしています。お相撲さんの四股のポーズも、体幹を鍛えるのに役立っています。姿勢を保つのも負担なので、体の軸を意識して取り組んでいます」
「わざとじゃないのに、できない子がいる」知ってほしい
母親は今回の投稿に、ある思いを込めました。
「できて当たり前の中に置かれた息子が、努力しても報われず心をすり減らしていく姿を見るのは、親として本当につらいことです。『親が一緒にやればいい』とか『甘えている』という声もありましたが、そんなに単純なことではありません」
息子さんはとても真面目で穏やかな性格。多動もなく、見た目には障害がわかりにくいため、気づかれにくさが逆に生きづらさにつながる面もあります。
「頑張り屋さんでこだわりも強いですが、それを強みにしていきたいです。週末は家族で息子の好きな水車や自然を見に出かける時間を大切にしています。好奇心旺盛で、突き詰める力はとても高いんです」
「わざとじゃないけどできない」――。発達性協調運動障害や自閉症という言葉が、もっと多くの人に届き、理解されることを願って。母親は今日も、息子とともに前を向いています。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)