エアリズムカノコポロシャツ/ボタンダウン(ユニクロ)―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーの
MBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第539回をよろしくお願いします。
◆もはや時代遅れなのに、なぜか身に着けてしまうアイテム
今回は「時代遅れ」「ダサい」「着こなしが難しい」……そんなアイテムをご紹介します。
ファッションの世界はどうしてもトレンドがついてまわるもの。「永遠におしゃれな服」なんてものがあるならば、皆それを買うはず。
「カッコイイ」という価値観は時代とともに変遷するため、アップデートしないと簡単に「青春時代に流行ったものを今でも使ってるオジサン」になってしまいます。今回はオジサンの価値観をアップデートすべく、「今ではもう難しいアイテム」を紹介します。
◆▼ジョガーパンツ
まずはジョガーパンツ。ドキッとした人も多いのではないでしょうか。現在現役で使ってる方も多いかと思います。そもそもジョガーパンツの流行はおよそ10年ほど前「アスレジャー」という言葉とともに流通しはじめました。
アメリカで好まれたスポーツウェアやヨガウェアを日常的なカジュアルに落とし込む着こなし。その当時、ハイテクスニーカーやスウェットトップス、ラインソックスやポロシャツなどアクティブウェアを着こなしに取り入れるスタイルが大流行しました。
その中でも顕著な人気を見せたのがジョガーパンツ。元々は「トレーニング・ジョギング用のパンツ」であり、裾がもたつかないようにゴムを入れた仕様なのがポイント。特にきれいめのスタイルが当時、流行だったため、細身スウェットのジョガーパンツは大流行。ユニクロを筆頭に多くのブランドが展開し始めました。
細身ジョガーパンツはアクティブで動きやすい反面、どうしても足が短めに見えやすい。裾が絞ってあるため、靴とパンツの境界線が目立ちやすく、日本人の短足体型がありありとわかる結果に。黒ジョガーに黒靴を合わせるなど境界線を意識させないコーディネートができるならばまだしも、スポーツの印象が強いグレージョガーなどはなかなか難易度が高い。
その後、ワイドパンツなど「足元のボリューム感が隠せるパンツ」が流行し、同時に「厚底スニーカー、厚底シューズ」が浸透。誰もが身長や脚の長さを「盛った」スタイルとなりました。その反動で「脚の長さがわかってしまう」「盛ってる靴を合わせても境界線が目立つためバレバレになる」ジョガーパンツは徐々に廃れていきました。
◆おとなしく部屋着に降格させるべき
現在、ミリタリーなどをルーツにしたルーズなジョガーパンツなどはまだまだ現役で服好きにも人気ですが、いわゆる細身のスウェットジョガーなどは上手に合わせるのが少々難しい。おしゃれに合わせることももちろんできますが、かなり難易度は高いのでしっくりこないのなら、おとなしく部屋着に降格させたほうがいいと思われます。
ジョガーパンツのようなスウェットのアクティブパンツを購入するなら、今ならワイドの方がおすすめ。特に昨今のスウェットは光沢と落ち感に優れたものが多く、ツルっとスラックスのような印象が作れます。
そのため、ワイドでもだらしない印象にはなりません。「ワイドってどうしてもだらしなく見えるでしょ?」と思っている人は間違いなく食わず嫌いです。こちらのユニクロのワイドスウェットを履いてみて「だらしない」という印象を持つ人はいないはず。それに厚底シューズを合わせれば足長にも見える。ジョガーを選ぶくらいならこちらをおすすめします。着心地や快適性もこちらの方が上ですよ。
◆▼細身のきれいめポロシャツ
90年代後半からメンズの夏服において絶大な支持のある細身きれいめポロシャツ。
ラコステを筆頭にフレッドペリーやラルフローレンなど多くのナショナルブランドが提案、さらにユニクロもカノコポロシャツを長年展開しています。
さらに近年ではより着心地を求めたエアリズム素材のポロシャツなども展開。ユニクロの人気ランキングなどを見ても必ず毎度上位に居座っているメンズ永遠の人気商品です。
しかし、ここ10年で徐々に情勢は変わっていきました。何が変わったかというと「仕事着」! 環境省が地球温暖化対策の一環としてクールビズを提唱したのが2005年の話。そこからじわじわと大手企業を中心に広がりここ5〜6年では地方企業までそれらが浸透しました。
すると、細身のポロシャツは「ビジネスシャツの代用品」として使われるようになり、今では山手線で見かけるサラリーマンのほとんどがポロシャツを着用しています。
◆オジサンサラリーマンの仕事着に
こうなってくると日常着に細身のポロシャツを着ていてはどこかビジネス着を流用しているように思われてしまう。そもそも「一般オジサンサラリーマン」が着用しているため、「おしゃれ」といいう価値観からはどんどん遠ざかっています。オジサンサラリーマンの仕事着を誰がオシャレと評価するでしょう。
さらに追い討ちをかけたのがビッグシルエットやリラックスサイズのトレンド。ここ10年でメンズの基本サイズはガラリと変わりました。
細身のきれいめポロシャツが無敵のアイテムだったのはもはや過去の話。今ではビジネス用の服として昇格(降格?)していますので、下手に手を出さないほうがおすすめです。
それでもポロシャツをカジュアルで取り入れたいと思うのなら、ややリラックスサイズがおすすめ。さらにビジネス用はエアリズムなどテック素材を使うことが多いので、クラシックなニット素材などがいいでしょう。リラックスサイズとテック素材では出せない上質な光沢感で大人なカジュアルを演出できるはずです。
◆▼サコッシュ
アウトドアで使われていたサコッシュが人気になったのはここ6〜7年の話。流行の源泉は実は「キャッシュレス化」が挙げられます。
日本は比較的キャッシュレス化が遅かったですが、欧米などでは浸透が早くカードや電子マネーなどを活用した支払いが多くなりました。
そのためヨーロッパのハイブランドやラグジュアリーでは「長財布」から「短財布」が売れるようになり、ルイヴィトンやバレンシアガなど人気の高級財布を展開する多くがそれに倣う様になりました。すると当然持ち運ぶものが少なくなるため、かつての「デカバッグトレンド」から「ミニバッグトレンド」が進みました。その流れを受けて流行したのがサコッシュなのです。
小さなポーチくらいしか入らないようなサコッシュ、10年以上前なら「こんなの財布が入らねえよ」と敬遠されたでしょう。しかし近年ではスマホも薄型になり財布も小さくなり「このくらいがむしろちょうど良い」わけです。またレザーを使ってもさほど量を使わないため比較的安価で作れることから、多くのメーカーが大量に展開。猫も杓子もサコッシュ状態となったわけです。
◆実用性は高くてもおしゃれにもはや見えない
現在でも大手量販店ではサコッシュが人気で、実用面においては確かにこれ以上なく便利です。しかしながら、おしゃれという意味でいえば、もはや子供もおじいちゃんも持つようになってしまったサコッシュ。おしゃれなイメージがかなり薄れてしまいました。
特にアクティブな夏場では手ぶらで歩きたいという需要が強く、サコッシュが飛ぶように売れた。現在でも街を歩いているとサコッシュをつけている人が多いですが……やはり服好きな人は「ここまで流行っちゃうと……」と敬遠しているようです。
そこでサコッシュの代わりに流行っているのが「ユーティリティーショーツ」。釣具メーカーのダイワとBEAMSが組んでる「DAIWA PIER39」を筆頭に多ポケットを装備したショーツが展開。これらは機能面をとことん考えられており、スマホや財布をストレスなく収納できる多機能になっています。
これにユニクロやGUも追従。本格的なアウトドア素材で多機能多ポケットのショーツを格安で展開しています。これならサコッシュを持たずともポケットに全てしまって、しかもシルエットは崩れない仕様に。合理的かつトレンドフルな荷物解決法として服好きを中心に支持されています。
◆▼数珠
メンズのアクセサリーで根強く生き残っているのが数珠ブレス。いったいどこから流行ったのか検証が難しいですが、90年代後半から2000年前半にスピリチュアルブームが到来。その際にパワーストーンなどが流通しはじめ、おそらくそのあたりからファッション業界にも流入してきた記憶があります。
当時は「オーラの泉」(2005年放送)などを始め、地上波でもこうしたスピ的コンテンツが許された時代であり、比較的寛容でした。
現在は自主規制が強くなり、地上波でこうした心霊やスピリチュアルコンテンツを取り扱うのがタブーとなり、徐々にこうした内容はアンダーグラウンドに進んでいます。
◆おしゃれに見せる難易度はかなり高い
「おしゃれでワンチャン運気もよくなる?」といった扱いで人気を博した数珠ブレスですが、その当時から愛用しているオジサンも今やすっかりオジイチャン。
現在、街を歩いていて数珠ブレスを見かけることはほとんどありませんが、稀に高級店のレジカウンターを見ると成金風のオジイチャンの腕もとに数珠ブレスを見かけます。
当然のことならブームも一昔前、現在も「あえて」数珠ブレスを展開するブランドもあるにはありますが……難易度は相応に高い。変な宗教と思われることもあるでしょう。ここはおとなしくタンスの奥にしまって、シルバーアクセサリーなどを選ぶほうがいいかと思われます。
◆▼AirMAX 90
こちらもアスレジャーブームに乗って大流行したアイテム。90年の発売から復刻を繰り返し、現在も展開されているNIKEの定番シューズです。
しかしながら、こうしたハイテクスニーカーはご存知の通り、下火に向かっています。NIKEの近作で話題なのがローファースニーカー。ついにスニーカーブームの下火に我慢できず、NIKEはローファーを作っちゃったのです。
そのくらいハイテクブームは終焉に。もちろんコレクターが消えることはないし、スニーカーが廃れることもありませんが……少なくとも今までのような異常な盛り上がりは消えていくでしょう。
そして、NIKE AirMAX90はメンズもレディースもキッズも愛用者が多いモデル。他モデル以上に量販店での流通量が多く、地方でもどこでも手に入る様になりました。NIKEは時に自社の重要モデルは流通量を意図的に制御して価値を高めていることで知られています。
◆流通量が多すぎて「見慣れた普通の靴」に
一時のエアフォースワンはABCマートなど安売り量販店で多く値引きが行われブランド毀損が進んだため、流通ルートを制限し市場の希少性を高め、その結果現在ではまた「服好きのマストアイテム」として語られるほどには価値を回復できています。
AirMAX90もおそらく未来においては再び価値を取り戻すと思われますが、現在はあまりにも流通量が多すぎて「見慣れた普通の靴」以上の感想が出てこない。
同じようにスニーカーを買うにしても今はPUMAやアシックスなどがおすすめ。シャープなフォルム、フォーマルシューズのような素材使い、シンプルなデザインで「革靴に近いスニーカー」が今のトレンドです。
特に韓国が火付け役となり世界に浸透しているのがPUMAの名作スピードキャット。今季はバレンシアガもコラボモデルとしてピックアップしている今一番旬のスニーカーです。今選ぶならこちらがおすすめです。
以上、もう買っちゃダメな服でした!
―[メンズファッションバイヤーMB]―
【MB】
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