

母さんの気持ちは分からないけれど、「自分で考えなさい」というメッセージだけは伝わった。だから俺は悩んだ。今さらって思われないかな。でも連絡してもいいって言ってくれているんだよな。拒絶される? されたら嫌だな……。


母さんは確かに厳しかった。でも……たくさんの愛情ももらっていた。あのときの俺が気づけなかっただけなんだ。電話ごしに久しぶりに聞く母さんの声。うまく話せなかったけれど、母さんはあの頃と同じように優しく俺を待ってくれていた。


9年ぶりに聞く母さんの声は、ずっと記憶にあった声と何も変わってはいなかった。言いたい言葉はたくさんあるはずなのに、なかなか言葉が出てこなかった。
そんなときふと俺は、自分のなかに残っていた小学校の先生の言葉を思い出す。「相手からの許しを期待するための謝罪じゃなくて、自分が悪かったと思っていることを伝えるための謝罪をしよう」俺は母さんに謝りたかったのだ。だから電話をかけたのだ。たとえ許されなくたって仕方ない。母さんはそんな俺が話しだすまで優しく待ってくれていた。
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【第15話】へ続く。
原案・ママスタ 脚本・渡辺多絵 作画・りますけ 編集・井伊テレ子