かつて『キャプテン翼』や『SLAM DUNK』など、名だたるスポーツ漫画を生み出してきた『週刊少年ジャンプ』(集英社)。しかし近年は、スポーツを題材とした新連載が短命に終わることが多くなっている状況だ。
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そんな中、7月7日発売の『週刊少年ジャンプ』32号にてまったく新しい表現のスポーツ漫画が幕を開け、大きな注目を集めている。
新連載のタイトルは『ピングポング』。主人公の御門平(みかど・たいら)は、中学時代に卓球で全国大会を3連覇し、ゆくゆくはプロを目指していた……という経歴をもつ高校2年生だ。
しかし平は家庭環境の都合で、すでに卓球を辞めている。母親が病で亡くなった上、父親も失踪し、10億円の借金を押し付けられたため、卓球どころではなくなってしまったのだ。家に押し掛けた借金取りは双子の妹・桃を海外の富豪に売り飛ばそうとしており、まさに人生のどん底に置かれている。
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そこで突如現れたのが、要睦月(かなめ・むつき)と名乗る謎の少女だった。高級ホテルの「超VIP」エリアに連れていかれた平は、裏社会の卓球「顰愚碰喰(ピングポング)」の世界に足を踏み入れることになる。
この「ピングポング」はギャンブルが前提となっており、平の記念すべき初戦では100万円が賭けられることに。さらに競技の内容自体も、決してただの卓球ではなく、“何でもあり”の闇卓球となっている。
たとえば卓球台は金色に輝く成金仕様で、マグネシウムでできた白球との摩擦で火花を発生させる仕掛けが施されている。対戦相手はこの仕掛けを利用し、平を追い詰めていく。そして火花が引火して燃え盛り始めた部屋のなかで、2人は死闘を繰り広げる……。卓球マンガとは到底思えないクレイジーな第1話だ。
■本当に卓球漫画は鬼門なのか?
実のところ『週刊少年ジャンプ』では、これまでも卓球漫画の連載が行われてきた。しかしほとんどヒット作は生まれず、短命に終わっている。
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たとえば2014年には、人生を卓球に捧げる高校生の活躍を描いた『卓上のアゲハ』が連載され、全23話で完結。また2017年には卓球元世界王者の孫が頂点を目指す『フルドライブ』が連載されたが、年をまたいで全16話で完結している。
そのなかで運動音痴の少年と卓球の出会いを描いた江尻立真の『P2! ―let's Play Pingpong!―』は、全58話と健闘したものの、2年以上の長期連載には至らなかった。
いずれも卓球という競技と真正面から向き合った正統派のスタイルで、読み応えのある内容だったが、そもそもスポーツ漫画が伸びにくい『週刊少年ジャンプ』では難しい挑戦だったのかもしれない。
そんな“鬼門”のジンクスを踏まえて考えると、『ピングポング』が正統派とはかけ離れた設定を導入したのはクレバーな選択だったように思えてくる。『ライジングインパクト』や『黒子のバスケ』など、異能力バトルの要素を盛り込んだ異端スポーツ漫画の系譜として注目に値するだろう。
しかも『ピングポング』の場合は異端といっても能力バトルどころか、「そもそも競技自体が異常」というユニークな設定。より一層物語の幅を広げる余地がありそうだ。
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鬼門とされる卓球漫画で短命のジンクスを打ち破れるのか。新たな大ヒット作になることを期待して連載を見守りたい。
(キットゥン希美)
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