「レンタルWi-Fiからの旅立ちを」 海外eSIM「トリファ」が“eSIM後進国・日本”からの脱却に本腰

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2025年07月14日 17:51  ITmedia Mobile

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日本で海外向けeSIMサービスを提供しているトリファ

 一昔前までは、海外で通信サービスを確保する手段は、通信キャリアのローミングサービスやレンタルWi-Fiが主流で、ITやSIMに詳しい人は現地でプリペイドSIMを購入するのが通例だった。


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 しかし、近年はeSIMを用いることで海外でも手軽に通信できるようになった。eSIMはプロファイルをダウンロードするだけで通信サービスを利用できる反面、日本ではまだ認知が進んでいない。高度なIT知識が求められ、初心者にはハードルが高いと感じている人もいるかもしれない。


 そんなeSIMの課題を解消すべく、海外向けeSIMサービスを提供している日本企業が、トリファだ。社名と同名のサービス「トリファ(trifa)」を2020年から提供しており、アプリから手軽に各国のeSIM用プランを購入できる。国内の「旅行用eSIMアプリ」のダウンロード数では1位を獲得し、2022年から2024年までの売り上げが15倍に増えるなど、順調にサービスを成長させている。


 eSIMサービスの認知をさらに向上させるべく、トリファは7月14日から、国内のeSIM事業者としては初めてテレビCMを展開する。CMでは上白石萌音さんと我修院達也さん(声のみ)が出演し、「レンタルWi-Fiからの旅立ちを。」をメッセージに、eSIMの利便性を訴求する。


●日本のeSIM利用率は主要国で最下位だが、「一度使えば普及率は大きく高まる」


 このタイミングでトリファがマーケティングを強化する理由はどこにあるのか。


 トリファ代表取締役 嘉名雅俊氏は、海外とモバイル通信にまつわる市場環境について説明する。日本への訪日外国人と出国日本人の数は、2019年まで右肩上がりで伸びていた。2020年に新型コロナウイルスの影響で落ち込むも、出国日本人数は2024年にコロナ禍以前の70%まで回復している。


 日本人の旅行先として、アジアが急上昇している。これは「昨今の円安や原油高による渡航コストの上昇で、近場で気軽に楽しめる短期旅行へのニーズが高まっているため」(嘉名氏)だ。旅行先では、SNSやAIサービスを使った検索、翻訳サービスや地図アプリなどのニーズが高まっており、海外でもスマホで通信できることが当たり前になりつつある。


 そうした影響もあってか、トリファでは2024年から2025年にかけて、大容量プランの利用比率が40%から77%に伸びているという。「海外旅行の通信常識は、常時接続と大容量の2つが新しいスタンダードになる」と嘉名氏はみる。


 トリファは日本だけでなく、台湾でもサービスを提供しており、「今後は東アジアや東南アジアと順次展開を行いながら、日本ナンバーワンからアジアナンバーワンへと進んでいきたい」と嘉名氏は展望を話す。


 現在は通信事業に特化しているトリファだが、今後は旅行前の交通・宿泊・レジャー予約や旅行保険、外貨両替、旅行中のガイド、移動、決済、翻訳、出入国管理など、旅行を全方位でカバーする「スーパーアプリ」へ進化させることを目指す。「パスポートとトリファだけで、世界中を自由に旅行できる未来を作っていく」と嘉名氏は意気込む。


 その第一歩としてeSIMサービスを提供しているトリファだが、日本はeSIMの認知は大きいものの、利用意向は主要国で最下位という調査結果も出ている。こうした“eSIM後進国”からの脱却を図るべく、トリファはテレビCMを投下することでeSIMの認知率や普及率の向上を目指す。


 「日本は島国という環境から、海外渡航の機会が制限されており、パスポートの保有率は各国平均と比べても低い、約16%にとどまっている。一方で、モバイルアプリやQR コード決済の普及が示す通り、新しい技術を取り入れるスピードと感度は世界でもトップクラス。ならばeSIMというソリューションを1度使っていただければ、多くの方々が便利さを感じ取り、eSIMの普及率は大きく高まると思っている」(嘉名氏)


 トリファも、eSIM市場は大きなビジネスチャンスだと見ている。海外のeSIM市場の推定成長率は年次62.5%を見込み、2034年には40兆円規模へ成長するとの観測もある。国内では2021年にSIMロックが撤廃され、iPhoneを筆頭にeSIMに対応したスマートフォンが増えたことで、海外eSIMを使う土壌は整いつつある。


 海外旅行者が増え、市場環境が整った今だからこそ、トリファはeSIMの普及に本腰を入れるタイミングと判断したようだ。


●文字通り“無制限”のプランも用意、通信品質の高さも強みに


 eSIMの利便性は、何といっても手軽に利用できることだ。


 レンタルWi-Fiの場合、空港でルーターをレンタルして荷物に入れ、現地で通信を開始し、必要に応じて充電をし、帰国後に空港で返却するなど、プロセスが多い。帰国時に返却を忘れてしまうことも起こりうる。一方、eSIMなら、渡航前にアプリをダウンロードして料金プランを選択して支払い、現地で通信の設定をするだけで利用開始できる。Wi-Fiルーターの荷物が減るメリットもある。


 トリファは世界200以上の国と地域に対応しており、通信プランはデータ無制限に加え、3GBや10GBなどを選択できる。無制限は文字通りデータ無制限で、原則として、一定のデータ量を超えたら速度を下げるといった制限は設けていないという。


 料金はいくつかの国で確認したところ、7日間だと無制限が5990円、3GBが1960円、10GBは割引ありで3000円台〜4000円台だった。トリファは各国のMNOと直接取引をしており、「たくさん買ってくれるところに対して、優遇したプライシングで卸していただいている。トリファは日本で特に使われているので、ロープライスで卸していただいている。今後、よりたくさんの人に使っていただければ、仕入れ価格をさらに落として還元できるのでは」と嘉名氏は期待を寄せる。


 通信品質の高さも強みとしている。海外ではMVNOではなくMNOと直接提携しており、「通信回線の品質がいいという口コミの要因になっている」と嘉名氏はみる。また、海外では停電や通信障害が日本よりも頻繁に起きることがあり、そうした場合に備えて、各国のバックアップ回線に接続するといったオペレーションも取っている。


●「最短3分」でeSIMを設定可能、24時間の有人サポートも


 「最短3分で設定できる」という使いやすさにもこだわった。アプリ起動後は「行き先を選択する」「プランを選んで購入する」「手順に沿って回線を切り替える」という3ステップで通信を開始できる。クレジットカードで支払える他、AppleやGoogleのアカウントからログインすれば、Apple PayやGoogle Payで支払うこともできる。


 アプリ内に「旅行前にやること」「現地でやること」といった説明が表示され、これらの情報を画像として保存させる導線もある。そうすることで、現地で通信がつながらない状態でも焦らず通信の設定ができる。さらにトリファでは、24時間有人の日本人によるサポートも展開しており、日本人が安心して利用できる環境を作っている。


 現時点でトリファのユーザー層は20代後半の女性が最も多いのだという。これは、InstagramやTikTokなどのSNSで、インフルエンサーを使ったマーケティングに注力していたことが大きいそうだ。今回、テレビCMを打つことで、「30〜40代の男性にも使っていただきたい」と嘉名氏は期待を寄せる。


 若い女性も違和感なく使えていることを示すエピソードとして、嘉名氏は「ユーザーさんの中にはトリファのことをeSIMのサービスではなく、Wi-Fiにつながるサービスだと思っている方もいる」と話す。「アプリをインストールして、ポチポチ進めていけば、勝手につながるようなサービス」だと認識している人が多いそうだ。「eSIMをブラックボックス化させても成り立つようなユーザー体験を提供していることが、強みだと思う」(同氏)


 ITに詳しくないユーザーでも簡単に使える工夫が功を奏し、App Storeでは平均4.6点、Google Playでは平均4.5点という高いレビュー点数を獲得している(2025年7月14日時点)。今後海外への渡航者がさらに増え、トリファの認知が進むことで、日本でのeSIM普及率が高まることは間違いないだろう。



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