動物愛護センターの「新聞紙」で覆われたケージ 中には大けがを負った猫 「引き取ります。連れて帰ります」そして奇跡が起きた

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2025年07月14日 18:40  まいどなニュース

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動物愛護センター内の片隅に置かれた「新聞紙で覆われたケージ」の中にいた猫、しんしん

動物愛護センターに収容されている身寄りのない猫たち。たいていは檻に入れられているものですが、その片隅に新「新聞紙で覆われたケージ」があります。

【写真】折れた大腿骨手術は大成功。奇跡が起きたね

たいてい、そのケージの中には「人によっては大きなショックを受けるほどの、あまりに悲惨な傷を負った猫」で、来訪者への心情的配慮によって、新聞紙に包まれているというわけです。

さらにかわいそうなことに、群馬県動物愛護センターでは「悲惨な傷を負った猫」のほとんどが最短で処分に回されます。また老犬、唸るワンコ、攻撃性が見られるワンコなどもほぼ待ったなしで処分となります。

他方、こういった犬猫たちは「殺処分」にはカウントされません。要は「処分する必要があった問題のある犬猫」として扱われるわけで、処分したとしても「殺処分」としてはゼロとしての公表となります。

今の日本における動物愛護の不条理を感ぜざるを得ない状況に感じますが、保護団体・Delacroix Dog Ranch代表はこうも言います。「保護できる頭数にも医療費にも限界がある。私はすべての動物を救えるわけではない」と言い、この言葉を前に筆者は何も返すことができませんでした。

「新聞紙で覆われたケージ」の中の猫と目が合った

ある日のこと。冒頭で触れた動物愛護センターの「新聞紙で覆われたケージ」を通りがかった代表は、センター職員に「この中にいる猫はどんな状況ですか?」と尋ねました。職員によれば、「後肢を骨折した状態でセンターに収容されて来た子猫だ」と言います。さらに「断脚の可能性があり治療が大変な子ですから、保護はお勧めしません」とも。職員は保護団体のキャパシティや運営状況をよく知っていて、団体側への配慮としてこう告げたのでした。

しかし、新聞紙の隙間から代表と目が合った子猫は、澄んだ瞳で何かを訴えるように映りました。代表は、その1秒にも満たない子猫とのアイコンタクトが頭に焼き付き、咄嗟にこう職員に申し出ました。

「この子、引き取ります。今日連れて帰ります」

職員の「保護を勧めない」理由の話が終わらない段での代表の決意に、職員は「え?」と驚いている様子でした。しかし、代表の決意が揺るぎないことを知ると、大喜びし、引き出しの準備をしてくれました。

「処分」の淵から見事奇跡を起こしてくれた

子猫は「処分」予定だったため、「その必要はない」としてワクチンも打たれず、猫エイズなどの検査もされておらず、なんなら個体番号もナシ。まるで、廃車となり鉄屑になるのを待つ動かないクルマのような状況です。代表はそんな状況の子猫を引き出し蘇らせる行動に出たというわけです。

保護後、すぐに動物病院へ子猫を連れて行きました。ボッキリ折れた大腿骨は数日のうちに手術されました。そして、代表のアツい思いが実って子猫の手術は無事に大成功。奇跡的に断脚にはならずに済んだばかりか、術後の経過次第では、自分の脚でもう一度歩けるようになる可能性も出てきました。

息を吹き返した猫にさらなる幸せを!

子猫は、後に団体提携の預かりボランティアさんの家で、お世話を受けることになりました。

まだ治療中の状況ですが、次第に子猫の表情に笑顔が溢れ始め、体を自由に動かすようになりました。……それはおおいに良いことですが、元気になるにつれて「遊びたいモード」が炸裂。治療中の子猫を安静にさせることほど大変なことはなく、預かりボランティアさんは「よしよし。抱っこ抱っこ」と、「遊びたいモード」を抱っこでごまかす、という日々を送っています。

ともあれ、一時は「処分」対象だった子猫の命が息を吹き返すこととなり、本当に良かったと思います。この先も、子猫にとっての明るい未来が待っていると良いなと思いました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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