サッカー日本代表が対戦する韓国代表のいま ワールドカップ予選無敗突破と監督不正就任騒動

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2025年07月14日 19:10  webスポルティーバ

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 サッカー日本代表はE-1選手権優勝をかけて、7月15日に韓国と対戦。日本と同じく欧州組が主力となり、W杯アジア最終予選は無敗で突破。韓国サッカー界のレジェンド、ホン・ミョンボ監督がチームを率いている。ライバルのいまをレポートする。

【日本のように欧州組で11人を構成することができない】

「日本、どうなんですか?」

 韓国で行なわれているE-1サッカー選手権の第2戦、韓国−香港戦に出向くと、現地メディアは日本に対してかなり興味津々だった。4媒体ほどの記者が筆者に聞いてきた。

 大会自体は日本でも「観客687人(7月8日の日本−香港戦)」と報じられるとおり、連日の酷暑と男子部門の開催地・龍仁(ヨンイン)ミルスタジアムのアクセスの困難さなどから、ここまで大きな盛り上がりは見せていない。

 それでも韓国メディアは早々に「15日の日韓戦が決勝戦」と決め込んで、こちらにあれこれと聞いてくる。尖ったライバル意識という感じではない。先の森保ジャパンのW杯予選での快進撃はかなり多く報じられており「近年、強くなり続けている日本の実情はいったいどうなっているのか?」という関心だった。

 こちらからは、今大会の日本代表の状況について「W杯予選が終わり、新たなチーム内競争が始まったところ」「今大会のメンバーは実質上のJリーグ選抜という点でかなり興味深く思う」「今回かなり強いインパクトを残す存在が出てくれば、当然競争に加わっていくことになる」と答えておいた。

 韓国は国内組+Jリーグ組3人の構成で臨むが、日本と少し位置づけが違うという。

「韓国は日本のように欧州組で11人を構成することができません。この大会は、はっきりと"海外組でカバーしきれない主力を探す"という目的があります」(韓国サッカーメディア記者)

 ソン・フンミン(トッテナム)、キム・ミンジェ(バイエルン)、イ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)の‟三銃士"は、クラブチームではやや苦しい状況にあるものの、代表チームでは存在感を発揮し続けているため、彼らが埋めきれないポジションの選手を探すことになる。同記者は「具体的なポジションのひとつは、サイドバックになる」という。

 一方、韓国−香港戦後、センターバックとして韓国代表デビューを果たしたキム・テヒョン(鹿島アントラーズ)がこんな話をしていた。

「韓国代表のなかでも、日本についてはすごくいい選手が多いチームだという印象が持たれています。僕も食事の時などにすごく日本のことを聞かれます。逆に僕のほうからは、ふだんJリーグで対戦する選手たちの特徴もチームメイトに伝えていっていますね」

【日本を上回る"無敗"でW杯予選を突破】

 ホン・ミョンボ代表監督率いる韓国代表の現在を表現するなら、こういった状況にある。

「W杯予選を終え、新たなステップに向かう。ただしそこには"影"もある」

 先の北中米W杯アジア最終予選(ヨルダン、イラク、オマーン、パレスチナ、クウェートと同組)は、6勝4分0敗の勝ち点22で首位突破した。

 一見、韓国はもたついているように見えた。昨年9月5日の第1節(ホーム)と11月19日の第6節(中立地のヨルダン・アンマン)の双方で、パレスチナと2試合連続ドローに終わったのだ。特に第2戦ではキム・ミンジェのバックパスが短くなり、相手に先制を許すシーンも。三銃士の一角のミスにより、チームの厳しい状況が露呈した。

 こういった流れもあり、森保ジャパンが順調に勝ち星を重ね、2試合を残しての「世界最速突破」を果たしたのに対し、韓国は1試合突破確定が遅れた。

 しかし。

 日本が6月5日にアウェーでオーストラリアに敗れたことにより、少しだけ"構図"が変わることになった。

 韓国は結局、アジアで唯一の「無敗での本戦進出国」に。これは同国のデータでは1990年イタリア大会、2010年南アフリカ大会の予選以来3度目の快挙だった。

 もちろん来年の本大会では、日本の「世界最速」も、韓国の「アジア唯一の無敗」も、決して何かを保証するものではないのだが。

【ホン・ミョンボ監督不正就任疑惑】

 一方で、いまのホン・ミョンボ監督率いるチームと韓国サッカー界を取り巻く環境において、無視できない要素がある。

「監督不正就任疑惑」

 2024年7月に韓国代表監督に就任したホン・ミョンボ。その選定課程について、大韓サッカー協会の不正が指摘された。「強化委員会の承認を経ていない」と。大韓サッカー協会は韓国の公益法人たる大韓体育会の傘下組織ゆえ、政府からの調査の対象になった。

 結果、ホン・ミョンボは当事者として9月に韓国国会から呼び出され、「文化体育観光委員会の懸案質疑」で証言するまでの事態に陥っていた。これは当然、韓国メディアでも大々的に報じられることとなり、ホン・ミョンボ監督のネガティブキャンペーンにまでつながった。

 いったい何があったのか。

 ホン・ミョンボ監督は、アジア杯での成績不振により解任となったユルゲン・クリンスマン監督の後任として7月8日に正式に選出された。

 大韓サッカー協会はその過程で幾多の外国人監督の候補にフラれ、さらにその後、2020年に蔚山でACL優勝の結果を残したキム・ドフン氏にもオファーしたが、「外国人がダメだったから、自分に来るのか」とフラれた。結局、代表監督の空白期間は約5カ月にも及んだ。その間、強化委員長がふたり辞任するという深刻な事態に陥った。

 焦った大韓サッカー協会が白羽の矢を立てたのは、蔚山の監督として前年のKリーグで優勝するなど、結果を残していたホン・ミョンボだった。しかし、度重なる辞任でその時強化委員長が空位だった。そこで、技術総括理事という役職だったイ・イムセン氏がホン・ミョンボ氏の自宅まで訪れ、オファーしていたことが発覚。これをかつてJリーグでも活躍したパク・チュホ元技術委員が「手続き違反ではないか」と暴露。ここから批判の嵐が吹き荒れた。

 背景がふたつある。ひとつ目は、韓国社会が「公正・平等」に厳しい目線を向けているということ。特に2017年から2022年までの文在寅政権時代にこの意識が高まった。

 もうひとつは折からの大韓サッカー協会会長批判。チョン・モンギュ氏はHYUNDAI創業者の甥にあたる。いわゆる「お坊ちゃま」キャラとして韓国では敬遠されがちなのだ。優しそうな顔をして、裏では独裁者のように振るまっているといった批判を浴びることが多い。実際、クリンスマン前監督解任からホン・ミョンボ監督選任までの過程のほか、「協会の私物化」「代表チームトレーニング施設建設費の不正申請」といった疑惑が投げかけられている。

 こういった流れに、ホン・ミョンボ監督は巻き込まれてしまった。本来なら多くが望んだであろう、過去のスター選手で認知度抜群。しかもKリーグで最高峰の地位にあった存在だ。しかし自国サポーターからブーイングを浴びせられ、国会で弁明する必要に迫られたのは悲劇としかいいようがない。

【直接対決では勝つという矜持】

 W杯予選を無敗で突破した今、騒動の"後遺症"はどうなっているのか。こればかりは韓国記者団の反応も半々で「突破したことによって悪いイメージは払拭された」という記者もいれば、逆の意見も。「ホン・ミョンボ監督本人が悪いということはないがく、間違った課程で選ばれたのだから、彼は去るべきというファンも存在します」(現地に取材に来ていた現地サッカーメディア元編集長)。

 7月15日のE-1"決勝戦"に臨む韓国の状況としては「日本に敗れたり、優勝を譲っていいはずがない」である。2試合を終えて双方全勝。ただし得失点差では日本が2点上回る。韓国は勝ってこそ優勝という状況だ。韓国サッカー界の近年の矜持のひとつに「どんなに日本の状況がよくても、直接対決では勝つ」というものがある。このマインドが発揮されるのが、15日の日韓戦になるだろう。

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