特殊清掃業者が考える“孤独死”を防ぐためにできること「もっと地元の輪を広げていきたい」

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2025年07月16日 09:20  日刊SPA!

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ランナーとしても走る鈴木亮太さん。画像提供:ブルークリーン
 孤独死を完全になくすことはできないが、少しでも減らせるように企業で何かできることはないか——。そんな思いを胸に、地元で高齢者向けのコミュニティを作るべく奮闘している会社は多い。
 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、孤独死を防ぐために続けている地域への貢献活動について詳しい話を聞いた。

◆高齢者の孤独死を防ぐには……?

 鈴木さんが働くブルークリーンは本社がある東京都大田区を中心に地域住民との交流を増やし、少しでも孤独死を予防できるような活動を行っている。

「大田区って高齢者が多い地域で、必然的に今後は孤独死が増えていくと思われます。今、日本全体が高齢化社会なので、孤独死を完全に予防する社会を作っていくというのは難しいと思いますが、自分たちが出来ることを少しでもしよう。そんな気持ちで地域住民との繋がりを作る活動を始めました」

 大田区から始まった会社なので、大田区在住の方からの仕事の依頼が多いという。

「全国的に仕事を請け負っているわけではないので、きちんとした統計はとれておらず、体感値での話になってしまうのですが、大田区では自宅で起きる事故による孤独死が多いように思います。

 大田区は高齢者が多い街なので、自治体としてはもちろん、高齢者の方々に向けた取り組みを行っている企業も多いです。たとえば、健康を維持するための体操教室や、地域の高齢者を包括的に支援していく集まりなど、こうした活動に参加したり協賛したりして協力させてもらっています」

◆1人ぼっちの環境をなるべく作らない

 孤独死を予防するには、地域コミュニティの活動を増やしていくことが大事だと言う。

「近年は特に地域に根ざした活動に力を入れています。直近で言うと『おおたユニバーサル駅伝大会』を大田区の『平和の森公園』にて開催しました。我々が主催というわけではないのですが、協賛企業兼ランナーとして協力させていただいたという形です。選手として参加できる方たちは小学生、障害者、60歳以上と決まっていまして、多くの人に参加していただきました。駅伝なので1人1キロ走って、次の人にバトンタッチ。『がんばったね』と声を掛け合っていくのが楽しかったです。孤独死を予防するには、こういったコミュニティを増やしていって1人になる環境をなるべく作らないようにするのが大事だと思っています」

 駅伝以外にも高齢者の方達と交流する催し物には積極的に参加している。

「コロナが流行って以降、高齢者の方々は外出が今までよりも少なくなったと思うんです。でも家にいても退屈なので、何か催し物をしたいという声が自治体に多く届いたようです。弊社も何か貢献できないかなといったところで、除菌など衛生的環境を担保する活動をやらせてもらいました。高齢者の方達と交流する企画には積極的に参加するようにしており、まずは大田区から孤独死を少しでも減らすような活動をしています」

◆高齢者に向けた講演活動も

 高齢者支援の一環でブルークリーンを中心に高齢者へ向けたセミナーなどの講演活動も行っている。

「区が運営する高齢者向けの施設があるんですが、そこの会議場を借りて、活動も行っています。過去には家に眠っている物で、価値がある物とない物を教えるセミナーを開催しました。これは結構盛り上がりました。弊社は買取業もやっているので、清掃のついでに『買い取ってくれ』と言われることが多いです。

 その中で、一見価値がありそうだけど意外と価値がないものがあります。そういったものを紹介していくセミナーです。昔は嫁入り道具で買った桐タンスとか着物とか、『これ昔は高かったから今でも売れるでしょ』って言われることがあるんですが、現在需要があるかどうかで物の価値が決まるので、まったくお金にならない場合もあります」

 着物は外国人観光客に人気であり、価値は上がってきたように思えるが……。

「高価な布だから外国人に売れるだろうと言われることもあるのですが、昔の日本人が着ていた着物は外国人のサイズに合わないことが多いんです。なので、うちで買い取る時はサイズが大きいものしか値段をつけられません。有名な作家さんが作った着物であればコレクター用に売れたりするんですけど、基本的に眠っている着物は価値がつきません。古くても安定した買取価格を維持しているのはブランド品のバッグです」

 しかし、家に眠っていた物で、ガラクタだろうと思っていたものに意外な価値がつくこともあるという。

「案外、おもちゃ関係って高く売れたりするんです。昔のミニ四駆や超合金のおもちゃとか。特に超合金は保存状態が良ければ数十万円で売れたりと、かなり価値がつく場合があります。一番びっくりしたのが古いプロ野球チップスのカードです。当時のもので長嶋茂雄と王貞治のカードが出てきたことがあったんです。結構プレミアはついているんだろうなと思ってはいたものの、こちらも価値がわからず引き取ったものでした。

 でもいざ業者のオークションに出してみたところ、50万円くらいの値がつきました。この50万円のカードがどこへ売られていくのか、落札した業者が個人で所有するものなのかはわかりませんが、すぐに引き取ったご家庭に連絡してキャッシュバックさせていただきました。こういったご家庭にある価値があるもの、ないものといった内容の講演会はかなり反響があります」

 孤独死を予防するには地元から輪を広げていくことが大事だと言う。

「地域に根ざした活動をしている企業はどんどん増えてきていると思います。行政だけに頼らず、地元企業が率先して高齢者の方々と交流するイベントなどを増やしていくのが大切です。ここ最近は、地域に根ざしたイベントに誘われることも多く、事業の合間を縫って参加させてもらってます。今後ももっと地元の輪を広げていって、なるべく孤独死が起きないようなコミュニティを作っていくように努力していこうと思います」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

このニュースに関するつぶやき

  • 宗教法人って優遇されてるよなぁ。お寺さんで熱心に活動してる所少ない。檀家離れで僧侶専業では生活デキナイ。教会(プロテスタント)はウェルカムの所多いが仏壇神棚
    • イイネ!2
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