シャープは2025年夏、「AQUOS R10」と「AQUOS wish5」の2機種を投入している。
AQUOS R10は、2024年のフルモデルチェンジを果たしたハイエンドモデル「AQUOS R9」の後継機で、「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、ディスプレイ、カメラ、スピーカーを強化している。価格は10万円前後。
今回はAQUOS R10について、シャープで商品企画やソフトウェア開発、機構設計に関わった以下の方々にインタビューした。なお、エントリーモデルのAQUOS wish5についても、別途インタビュー記事をお届けする。
・通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長 原泰祐氏
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・通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任 鎌田隆之氏
・通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 技師 関文隆氏
・通信事業本部 パーソナル通信事業部 第一ソフト開発部 技師 文元英治氏
・通信事業本部 パーソナル通信事業部 回路開発部 技師 三島啓太氏
●AQUOS R10の開発意図 エンタメ重視で進化を心掛けた
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―― 好調だったというAQUOS R9を受けて、AQUOS R10はどのような意図で開発したのでしょうか。
鎌田氏 2024年のAQUOS R9とAQUOS wish4はデザインを象徴的に刷新しました。ブランドとしてはAQUOSの提供価値として「最高最新の映像体験をあらゆるシーンでお楽しみいただくスマートフォン」と定義して、多くの方々にお届けしようと考えました。
その結果、広告も含めて賞をいただき手応えを感じていました。AQUOS R10の商品企画を検討する際に、なぜそこまでデザインも含めて評価いただけたのかを調べました。どのようなワードをネットで検索されるのかに着目したところ、映画や音楽、漫画を含めてエンタメ情報を収集されていることが分かりました。そのような背景を踏まえて、エンタメ体験を重視した進化を心掛けてきました。
また、もう1つの観点として、R9とR10の間には、シャープが2024年10月29日に発表したAQUOS R9 proがあります。そのモデルで培ったカメラの技術や新機能をどのようにRシリーズにも展開していくか、というところも意識しています。
―― プロセッサをAQUOS R9と同じSnapdragon 7+ Gen 3を搭載した理由を教えてください。
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鎌田氏 プロセッサの選定は皆さんが興味を持たれているところかと思います。選定は毎回悩むところではあります。最も大きな理由の1つは、Snapdragon 7+ Gen 3という7の中でも高い性能持ったプロセッサの後継が具体的に出なかったことです。
加えて、シャープが2024年11月7日に発売した「AQUOS sense9」のSnapdragon 7s Gen 2と比べてもCPUで約2倍、GPUで約4倍と高い性能を持っていることも踏まえて、もう1度やりたいことはできそうだと思い、R10でも引き続きSnapdragon 7+ Gen 3を採用しました。
―― ちなみに、MediaTekは検討しなかったのでしょうか。
鎌田氏 先ほどもプロセッサの選定は難しいと話しましたが、正直開発のだいぶ前から検討の俎上(そじょう)には乗っています。つまり、われわれとしてもMediaTekのプロセッサについては、常に注目して検討しています。しかしながら、今回のAQUOS R10でMediaTekのプロセッサを選ばなかったのは、AQUOS R9でご好評いただいた「エンタメを楽しむ」というテーマをいかに進化させるか、そしてAQUOS R9 proもQualcommのプロセッサで開発していたという点が大きく関係しています。
ただ、MediaTekのプロセッサを検討していないわけではありません。引き続き検討は行っています。
●基本的なデザインはAQUOS R9を踏襲しながらブラッシュアップ
―― AQUOS R9からサイズやデザインがほぼ変わっていないが、あえて変えなかった理由はありますか。
鎌田氏 AQUOS R9のデザインは、おかげさまで多くの方からご好評をいただきました。特に、アニメのキャラクターに似ているというようなバズり方をしたことには驚きましたし、市場での反響も非常に大きかったです。
デザイン面では、グッドデザイン賞のベスト100に選出され、ドイツのデザイン賞であるiFデザインアワードも受賞しました。これは、スマートフォンの枠を超え、デザイン全体として高い評価をいただけた証だと考えています。
AQUOS R10では、AQUOS R9で確立したデザインを継承しつつ、さらにブラッシュアップすることで、ブランドの刷新を図るとともに定着を狙って、お客さまにご満足いただける製品をお届けできると判断しました。
実は、R10のデザインにはいくつか手を加えています。例えば、新たに搭載したスペクトルセンサー部分にはダイヤカットの処理を施し、本体との一体感を高めています。また、本体カラーも今回は3色展開とし、お客さまの選択肢を増やしています。
―― カラーバリエーションを2色から3色に増やした理由を教えてください。
鎌田氏 AQUOS R10で増やしたカラーバリエーションには、より多くのお客さまにお届けしたいという思いが込められています。AQUOS R9のグリーンは非常に好評をいただきましたが、お客さまから「黒が欲しい」という声が多かったのです。スマートフォン全体でブラックの需要が高いこともあり、今回はホワイトとブラックをしっかりとご用意しました。
R9のグリーンも深みのある独特な色で「癖になる」というお声を多くいただきましたが、今回、特徴的なカラーとしてトレンチベージュを採用しました。この色は、スマートフォンではあまり見られないような色味だと思います。
スペクトルセンサー部のデザインは、完全な円でも四角でもない曲線にしており、大きさを変えると見え方が大きく変わるというこだわりがあります。miyake designの協力を得て、その大きさやバランス感、配置については細かく監修していただきました。少し大きさを変えるだけでもデザインが成り立たなくなるほど、緻密に設計されています。
●カード型のSuicaよりも薄いベイパーチャンバーで発熱対策
―― 発熱対策で工夫したことはありますか。あわせて、AQUOS R9からサイズを維持しつつも、ベイパーチャンバーを搭載する上で苦労したことを教えてください。
鎌田氏 AQUOS R9で初めてベイパーチャンバーを搭載したところ、「端末が熱くなりにくくなった」「性能が長持ちするようになった」といったご好評の声をいただきました。そこで、私たちはこれをさらに進化させる必要があると考え、さまざまな検討を行う中で、今回は熱伝導性の高い銅ブロックをベイパーチャンバーに圧着させ、3D構造を採用することで、スマートフォンの最大の熱源ですとなるCPUの熱をさらに素早く拡散できる構造にたどり着きました。
この銅プレートは単に板を貼ったわけではありません。CPUの熱をいかに早く伝えることができるか、さまざまな形状をシミュレーションしました。単に形状を立体にするだけでなく、銅を圧着させたことで効果を上げています。
その結果、表面温度を最大約2度抑制し、パフォーマンスの持続時間も最大約2倍に向上させることに成功しました。25度の環境下など、条件はありますが、このような効果が確認できたことが今回の大きな成果です。
―― AQUOS R10のベイパーチャンバーはAQUOS R9と同じものでしょうか。
鎌田氏 はい。基本的に同じものです。サイズ変更や形状変更も検討しましたが、一番効果が出るのがこの構造であると判断しました。もちろん、このベイパーチャンバーだけでなく、他の放熱対策と合わせて効果を出しています。
―― ベンダーのものをそのまま採用したのでしょうか。それともシャープが独自にカスタマイズしたのでしょうか。
鎌田氏 このベイパーチャンバーは、市販のものをそのまま使っているわけではなく、シャープ独自のカスタム品です。ベイパーチャンバーを扱っているベンダーはもちろんいますが、基板設計と形状は非常に密接に関わるため、既製品の板をただ貼るだけでは十分な効果が得られないか、そもそもサイズが合わないといった問題が発生します。部品同士がぶつかることにもなりかねません。そのため、シャープがベンダーと密に連絡を取り、相談しながら設計しています。面積の拡大により効果が得られるなら、サイズの変更を検討します。
―― 薄い板のような形状ですか?
鎌田氏 はい。非常に薄い板状のものです。AQUOS R10のベイパーチャンバーの厚みは0.4mmで、ベイパーチャンバーに圧着している銅ブロックの厚みは0.3mmです。例えるなら、0.76mmのカード型Suicaよりも薄いです。内部は毛細のような管を利用して水を伝える構造で、その水を気化して循環させる仕組みになっています。この非常に薄い構造の中に、効率的な熱移動の仕組みが詰まっているのです。
●向上したディスプレイの表示性能 ピーク輝度3000ニトのメリットは?
―― 「生で見るより生々しい」という製品コンセプトにおいて、ピーク輝度3000ニトという数値はどのような狙いで設定したのでしょうか。
関氏 ディスプレイの輝度に関しては、近年、他社も含めて急速に向上していますよね。シャープでも、毎年登場する新しいデバイスに合わせて、最新のディスプレイを採用するようにしています。メリットとしては、屋外の明るい場所でも画面がより見やすくなること、HDR(ハイダイナミックレンジ)コンテンツを再生する際に、ピーク輝度を生かした鮮やかでクリアな映像表現が可能になることです。
―― そもそも、ピーク輝度とはどのような状態を指すのでしょうか。
関氏 有機EL(OLED)パネルは、その特性上、画面に表示されている内容によって輝度が変化します。例えば、画面全体を白く表示したときと、背景が真っ黒で小さな点だけを表示したときで、実は輝度が異なります。画面の点灯面積が狭くなるほど輝度が向上するようになっています。AQUOS R10では通常の全画面表示時で1500ニトの輝度が出ますが、点灯している面積が狭くなると、より高輝度になり、ピーク輝度としては3000ニトを達成しています。参考までにAQUOS R9のピーク輝度は2000ニトでした。
実際に表示される映像というのは、通常、画面全体の10%から高くても50%程度の領域に集中しています。そのため、R9からR10になったことで、この輝度の「振れ幅」を生かし、より鮮明な映像を楽しんでいただけるようになっています。
AQUOS R10のディスプレイの輝度は表示しているコンテンツや画面の状態に応じて、1500ニトから3000ニトの間で変化します。HDRコンテンツを表示しているときに最大3000ニトの輝度となります。ただし、画面全体を白色で表示した「全白(ぜんしろ)」の状態では、3000ニトにはなりません。この場合の輝度は1500ニトです。ただ、今の説明では、全白という言葉を使いましたが、メーカーによっては消費電力を抑えたまま明るさをアップする「ハイブライトネスモード」と表現する場合もあります。
―― バッテリーの持ち具合への影響はありますか?
関氏 するかしないかでいえば、あります。ただ、ディスプレイの表示内容によって輝度が変化するため、一概に「影響が大きい」とはいえません。画面の明るさが上がるときは電力消費も増えますが、そうでないときは消費が抑えられます。そのため、ピーク輝度が3000ニトに達するからといって、「極端にバッテリー持ちが悪くなるという顕著な影響は出にくい」と考えています。
―― 発熱への影響はいかがでしょう。
関氏 単純に3000ニトという高輝度を採用すると、発熱の問題が必ず発生します。今回、AQUOS R10で3000ニトのピーク輝度を実現できたのは、まさに「進化した放熱機構と一体で設計」しているからです。強力な放熱対策が講じられているからこそ、この高輝度ディスプレイを実現できています。
―― バーチャルHDR機能も対応していますが、HDRコンテンツ以外での実用的なメリットは何かありますか?
関氏 バーチャルHDRは、正直なところ、動画コンテンツを主なターゲットとしています。そのため、それ以外の用途では、その効果を発揮できません。
これまでのバーチャルHDRでは、鮮やかさや明るさを強調しようとすると、画面全体が明るくなってしまい、表現としては微妙なところがありました。以前は、全体を明るくする映像処理でしたが、AQUOS R10では、周囲の明るさを抑える処理が追加されました。これにより、周りの明るさを変えずに、強調したい部分だけを明るくするという、より賢く自然な表現ができるようになっています。
本来のHDR(ハイダイナミックレンジ)の定義からすると、以前の処理では全体を「やりすぎ」てしまっていた部分があったかもしれません。しかし、R10では、必要な部分だけを強調することで、より適切にハイダイナミックレンジの表現を実現しています。
―― どの映像コンテンツがバーチャルHDR機能に対応していますか?
鎌田氏 具体的なサービス名は公開していませんが、YouTubeなど一般的な動画コンテンツには対応しています。対応アプリはAQUOS R9から2.5倍に増えています。
●カメラはAQUOS R9から「解像感が格段に向上」、スペクトルセンサーも効果あり
―― 新メインセンサーを採用した狙いと、具体的にどのような性能向上があったのか教えてください。
文元氏 AQUOS R10ではメインカメラのイメージセンサーが新しくなりました。新しいセンサーは、特にノイズを抑える機能に優れています。この機能を活用することで、暗い場所でのノイズを大幅に減らすことができました。これが新しいセンサーを採用した大きな狙いです。
鎌田氏 AQUOS R10ではメインカメラのイメージセンサーのサイズは1/1.55型です。カメラに関しては、AQUOS R6からライカとの協業が始まり、2025年で5年目になります。ライカの一貫したポリシーのもと、シャープは共に技術を磨いてきました。今回のR10のカメラは、見た目こそ前モデルとほぼ同じに見えるかもしれませんが、大きく進化しています。そのポイントは、新しいイメージセンサーの採用と、AQUOS R9で培った画像処理技術の融合です。
最も顕著な進化は、暗い場所での撮影性能です。単に明るく写すのではなく、光と影のメリハリをしっかり残すことに注力しました。これは、ライカが追求する「目で見た風景をそのまま切り取るリアリティー」を実現するためです。高感度に強いセンサーに変更したことに加え、AQUOS R9 proのスペクトルセンサーを踏襲しています。(無印の)Rシリーズとしては初めてスペクトルセンサーを搭載し、より正確な色再現が可能になりました。
一般的に暗所撮影では、テクスチャー感が失われる印象があるかもしれません。しかし、R10で撮影した画像では、木の質感や影になった部分、葉の細かな表現など、解像感がR9よりも格段に向上しています。これらの技術は、特に暗所や夜景といったシーンで効果を発揮します。新しいセンサーが夜景に強い特性を持ち、それにこれらの画像処理技術が組み合わさることで、高いクオリティーの撮影が可能になっています。見た目だけで判断せずに実機で試していただきたいです。
―― スペクトルセンサーの採用によりどのようなメリットが得られるのか、もう少し詳しく教えてください。
文元氏 スペクトルセンサーの主なメリットは、ホワイトバランスの精度向上と、色の再現性がよくなることに貢献している点です。AQUOS R10では、このスペクトルセンサーによって、ホワイトバランスの精度がAQUOS R9に比べてかなり向上していると思います。特に屋外での撮影など、全般的にホワイトバランスの改善を実感していただけるはずです。
鎌田氏 スペクトルセンサーの効果を特に実感していただけるのは、色温度がはっきりと特徴的に出るシチュエーション、中でも屋内の撮影が一番でしょう。AQUOS R9 proでも少しお話しましたが、例えばカフェやレストランのような、少し落ち着いた照明環境のお店で撮影していただくのがおすすめです。そういった場所で、目で見た色に近い写真が撮れるのが、このスペクトルセンサーの大きな強みです。
―― HDR処理やノイズリダクションのアルゴリズムは見直したのでしょうか。
文元氏 今回、AQUOS R10では、HDR処理や画像処理のアルゴリズムを刷新しました。 これは、AQUOS R9 proで採用されたものをベースにしており、AQUOS R9に比べて格段に精度が向上しています。特に、ディテールの表現力が大きく向上しました。この新しいアルゴリズムは全ての撮影シーンで適用されるよう工夫しており、どのような場面でも細部までしっかりと描写されるようになっています。
―― AIによる自動補正の精度は向上したのでしょうか。
文元氏 今回の新しいアルゴリズムには、AIを積極的に活用しています。AIの力を借りることで、より効率的に、そして効果的に画質を向上させています。
●意識しなくても使えるAI機能を目指す
―― 他にもAIを活用した機能があれば教えてください。
鎌田氏 AQUOS R9では、AIを活用して料理の影を自動で消す機能がありましたが、AQUOS R10ではテキスト認識されるものであれば、その影も消せるようになりました。 例えば、免許証や新聞、記事の切り抜きなどの写真で、影が入ってしまっても除去できます。最近はやりの「推し活」で、雑誌やグッズなどを撮影する際に影が入ってしまうといった場面でも、この機能が役立ちます。
原氏 シャープは「半歩先を行くモバイル体験の実現」を目指し、AIの効率性と創造性を生かして、既存のモバイル体験の向上に取り組んでいます。
これは通話関連だけでなく、カメラの影除去や画質向上など、さまざまな機能にAIを適用しています。通話機能に限らず、多様な分野にAIを適用していくのが、私たちの基本的なスタンスです。
―― ユーザーから要望のあったAI機能はありますか?
原氏 AI機能に関して、インタビューの場などでよくご意見としていただくのが、録音や文字起こしといった議事録作成のような機能です。確かに、インタビューされる方々、特にジャーナリストのような職業の方は、そういった機能を強く希望されることが多いです。しかし、一般のユーザーの方々にとっては、その用途がそこまで高くないのではないかという考えもあります。
そのため、まずは通話のような普遍的な体験や、カメラ機能といった、より広くニーズのある機能、より多くのユーザーにご利用いただける分野へのAI適用を優先して進めています。議事録やメモ作成系の機能については、既にサードパーティーのサービスがクラウドを活用して大規模に展開されています。
ただ、さまざまなご要望をいただいており、それらをシャープで精査した上で、現状の形でAI機能を展開しているのが実情です。
鎌田氏 シャープがAIについて特に重視しているのは、「ユーザーが意識することなく、自然に役に立つAI」というアプローチです。例えば通話中に先回りして情報を提示する、あるいは「代わりにやっておいてくれる」といった形で、AIが自動的にバックグラウンドで機能することが理想です。
SIMフリーモデル限定の機能として、「Glance AI for AQUOS」というAI機能があります。これは、ユーザー自身がインカメラを使ってセルフィー撮影を行うと、AIがその写真に基づいてファッションを提案してくれるサービスです。
提案された服に似たアイテムをECサイトで購入できるのも特徴です。もちろん、この機能はオン・オフの切り替えが可能ですし、もし気に入っていただければ、ロック画面がちょっとした楽しみになるかと思います。
―― これらのAI機能はクラウドとオンデバイスのどちらでしょうか。
原氏 今回ご説明した機能は、全てオンデバイスで処理されています。シャープはAQUOS R9から生成AIをオンデバイスで扱うことに注力しており、Qualcomm様との協業を通じてノウハウを蓄積してきました。今回のモデルで特に大きかったのは、生成AIのモデルを載せ替えたことです。ここにもAQUOS R9から脈々と受け継いできたAI技術がさ生かれています。
●フルメタル構造で音質アップのスピーカー 部品は新規で開発
―― スピーカーはどのように強化したのでしょうか。
三島氏 AQUOS R10では、音質面で主に2つの大きな進化を遂げています。1つ目は、スピーカーユニット自体を新規開発した点です。スピーカーユニットを構成する主要パーツ、つまり振動板、ボイスコイル、磁石のそれぞれを再開発しました。
振動板の材質と形状を見直すことで、音圧を向上させるとともに、音のひずみを改善しました。ボイスコイルの巻き数を増やすことで、より力強い音が出せるようになりました。上側スピーカーには、磁石の数を増やすことで磁気結合をより強力にし、音圧をさらに高めることを可能にしました。下側スピーカーはサイズを大きくすることで、低音の出力レベルを大幅に増強しています。これらの改良により、全体的な音質の底上げを図っています。
もう1つの進化は、上側スピーカーにフルメタルボックスを採用したことです。このフルメタルスピーカーボックスを採用した目的は、スマートフォンの本体サイズをなるべく大きくせずに、スピーカーボックスの容積を最大限に確保することです。スマートフォンの上部、特に耳元付近は、カメラやSIMトレイなど、多くの大きな部品が搭載されており、内部スペースが非常に限られています。
この限られたスペースの中で、容積を最大化し、かつ音質を高めるための方法論として、フルメタル構造を採用しました。メタル素材にすることで、効率的に内部容積を確保しつつ、不要な振動を抑え、クリアな音を出すことに貢献しています。
―― フルメタルスピーカーボックスはR9 proには採用していなかったのでしょうか。
三島氏 R9 proでもフルメタルスピーカーボックスを採用していましたが、R10では、スピーカーユニット自体を全て新規で開発しています。
●取材を終えて:撮って、見て、聞くことを大切にしたモデル
AQUOS R10は、R9の成功を踏まえつつ、ハイエンドの技術資産を生かして価格を抑え、「10万円前後」の競争が激しい市場で存在感を示そうとしていることがうかがえた。発表会では、「生で見るより生々しい」という製品コンセプトが示され、特に注力した分野がディスプレイに見えるが、スピーカーや日々の生活に寄り添うAI機能も総合すると、実は「撮って、見て、聞く」という一連の流れを踏まえて、R9からさらにブラッシュアップされた1台といえる。
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1文字違いの偽アカウントが横行(写真:TBS NEWS DIG)70
1文字違いの偽アカウントが横行(写真:TBS NEWS DIG)70