日本代表DF望月ヘンリー海輝 [写真]=Getty Images 東アジアE-1サッカー選手権2025、事実上の決勝戦となった韓国代表戦。日本代表は開始8分、キャプテンマークを巻いた左ウイングバック相馬勇紀の鋭いクロスに飛び込んだジャーメイン良が左足を巧みに振り抜き、早々と先制に成功する。ここから追加点を狙いに行きたかったが、韓国がじわじわと攻撃を加速。前半こそボール支配率、シュート数ともにほぼ互角だったが、後半は圧倒的に攻め込まれる展開になる。日本はクロスやリスタートからのハイボールを跳ね返すことで精一杯。前線でボールを収める時間も作れず、守備陣は一瞬たりとも集中力を切らせない緊迫した状況が続いたが、最後の最後まで韓国の攻撃を跳ね返し続け、1−0でタイムアップ。2022年大会に続く連覇を達成したのである。
まさに耐え忍ぶ展開となった90分間。奮闘が大いに光ったのが、右ウイングバックの望月ヘンリー海輝だった。久保藤次郎を先発起用すると目されたが、12日の中国戦で代表初ゴールを奪った勢い、高さ・強さ・速さを併せ持った望月の抜擢を決断。FC町田ゼルビアのチームメートでもあるナ・サンホ封じのキーマンに指名したのだ。
今季のナ・サンホはJ1リーグ20試合4得点と好調で、敵に回したら嫌な存在だということを望月自身は重々承知していた。やはり開始7分にはナ・サンホの抜け出しから右ポストを強襲するシュートを打たれ、29分にも安藤智哉がかわされるピンチもあったが、それ以外のところは確実に対応する。望月のスピードと守備力が光った象徴的なシーンだったのが、後半12分のプレー。ナ・サンホがタッチライン際でドリブルを開始したところに遅れて駆け寄り、長い足を出してボールを外に出したプレーだ。
「サンホさんは中のカットインから右足のプレーが怖いので、完全に中を切りながら縦に誘導して、左足でプレスした方がどちらかといったら脅威は減る。そういうイメージでプレーしていましたし、その通りうまくいってクロスをカットできたこともあったので、悪くなかったのかなと思います」と本人も自信を見せていた。その後、ナ・サンホが下がると、対峙する相手がムン・ソンミンに代わった。その彼も韓国にとって重要なキーマンの一人に他ならなかった。
「彼もキーマンだとすごく言われていたので、スピードを警戒していた。あまりやられることはなかったし、求められる仕事はある程度、できたかなと思います。中国戦では何回かパッと相手に行かれるところがあって、そこは改善点として自分なりに捉えていた。韓国戦では思い切り行かれることはなかったので、一つの成長として捉えられると思います」
望月はこのようにも発言し、試合ごとの前進を実感した様子。ホンコン・チャイナ代表戦の代表初キャップから、23歳の大型プレーヤーは短期決戦の3試合で目覚ましい変化を遂げたと言っていい。となると、楽しみなのは今後だ。身長192センチの大型右ウイングバックというのはそうそういない。日本の右サイドはこれまで堂安律、伊東純也のような攻撃的なタイプがチョイスされてきたが、ワールドカップを視野に入れると、相手に攻め込まれる時間帯も増えるだけに、守備力に長けた選手が絶対に必要になってくる。その枠には菅原由勢や関根大輝といった人材はいるが、彼らも望月ほどの高さと速さはない。望月の頭抜けた身体能力はアフリカ勢などと対峙する際には大いに役立つだろう。そういう意味で1年後の大舞台への挑戦権を得たのではないか。
「右でよく出てる律くん、純也くんもそうですけど、彼らは攻撃に特徴がある。自分は守備とか競り合いで貢献していく選手だと思うので、今日の試合である程度できることを見せられたのかなと。これからゼルビアに帰って試合もありますし、その中でもっとそういう能力をコンスタントに見せ続けられるように頑張りたいですね」と本人も力を込めていた。
とはいえ、まだ香港、中国、韓国という東アジアとの3試合で存在感を示しただけ。本当の勝負はこれからだ。菅原や関根は欧州5大リーグで世界最高峰クラスのサイドアタッカーとマッチアップし、対応力を磨いている。このままいけば2人とも今季はイングランドとフランスの2部が主戦場となりそうだが、国際経験値を高めることはできる。そこは望月にとってはハンディキャップとなるだけに、彼もまた今後の身の振り方を考えていかなければならないだろう。
今夏の海外移籍があってもなくても、とにかく望月は高みを目指して成長曲線を引き上げることを第一に考えるべき。これだけのスケール感があれば、2018年のロシアW杯、2022年のカタールW杯の両大会に参戦した酒井宏樹をしのぐ存在になれるかもしれない。そういう可能性を垣間見せてくれたことは、森保一監督や日本サッカー界にとって紛れもなく朗報だ。ここから大舞台までの1年間、彼がどんな軌跡を辿っていくのか……。我々は興味深く見守る必要がありそうだ。
取材・文=元川悦子
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