今回試用したHDDは、ウエスタンデジタルの「WD Red Pro」シリーズで容量が26TBとなる「WD260KFGX」だ。スペックとしてはSATA 6Gbps接続で、回転数が7200rpm、キャッシュは512MB となっている。同シリーズでは現在のところ最大容量だ。
●エンタープライズ向けNASの大容量モデル
WD Red Proシリーズは、24時間365日稼働し続ける商用やエンタープライズ向けのNASに最適化されたHDDだ。通常のHDDとの違いはNASwareテクノロジーでNASシステム用にパラメーターを微調整しており、NASとの互換性が高いということ、24時間365日の動作できるように作られていること、複数台HDDを搭載した時に発生するノイズや振動から保護するための回転振動センサーを備えている点だ、
またWD RedやWD Red Plusとの違いはマルチベイのNASに対応できるかどうか、つまり8ベイまでのホームオフィスや中小企業向けのNASではPlusまでで十分だが、それ以上のベイ数のある、中規模やクリエイティブ用途のプロといった商用NASには本製品のWD Red Proが該当する。
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WDのHDDは他にも一般的なHDDがBlue、キャッシュサイズが多くゲーミング向けのHDDがBlack、データセンター向けのHDDがGold、監視システム用のHDDがPurple、そしてNAS用がRedだ。用途ごとにカラーで分かれており、選びやすいのが特徴となっている。
特にBlackは最近だとSSDが主力で、直近ではサンディスクからではあるが「WD_BLACK SN8100」が登場している。
速度面ではSSDが有利だが、容量ではHDDに分があり、使い分けて両方使うのがベストだろう。SSDは今のところ4TBまでだが、HDDは一般用途のBlueでも12TBモデルまで用意されている。
そしてWD Red Proは、さらに大容量の26TBだ、個人でなかなかこの容量を使うという人はいないかもしれないが、昨今、動画や写真でも解像度が上がっており1ファイルの容量はどんどん大きくなっている、
そうなってくると、内蔵のストレージだけでは当然容量が足りなくなるため、外付けHDDかNASの選択肢が出てくる、マルチにアクセスすることを考えるとNASになり、そこで本製品の出番となる。
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仮に4台でもRAID5構成で78TB、12台でRAID6なら260TBとなり、1つの動画編集に必要なファイルが合計4TBとしても、それぞれ19/65ファイルの動画編集分データを納めることが可能だ。もちろん1つの容量が大きいため少ないベイ数のNASでも済むというユーザーには、設置スペースを増やさず大容量にできるというメリットもある
●試しに単体ドライブとしてテスト
それでは早速、実物を見てみよう
まずは重さを量ったところ、実測で655.3gだった。手に持ってみた印象としては、もっとずっしり来るものかと思っていたが、意外と軽い。手元にあったWD Blueの4TBモデルの重量は680gだった。ディスク枚数も増えているはずだが、少し軽くなっている。
今回は、少し本製品の用途とは離れるが、実際のパフォーマンスをチェックするためにデスクトップPCでの接続、SATAおよび外付けUSB接続でのテスト、そして本命のNASでの動作テストを行った。
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接続環境は以下の通りだ。SATAとUSB接続の際は冷却ファンをあてずにテストした。
・SATA接続にはAMD X670Eチップセット搭載のマザーボードを使用
・USB接続にはセンチュリーのUSB 10Gbps接続対応クレードル「裸族のお立ち台 M.2ダブルスタンディングプラス」(CROSMDSP10G)を使用
・NASはASUSTORの「NIMBUSTOR 4 Gen2(AS5404T)」(2.5GbE対応の有線LAN接続)を使用
まずディスク情報から見ていくと、ディスク領域の表記はフォーマット後にWindowsからは23.6TB、CrystalDiskInfoからは26000.6GBと認識している。
そして、下記がデスクトップPCでのパフォーマンス結果だ。
CrystalDiskMark 9.0.0では、連続読み出し/書き込み速度が毎秒約290MBと、通常のデスクトップHDDに比べて倍近い速度が出ているのが分かる、ランダム書き込みが読み出しより速いのは、一部キャッシュが効いていると思われる。USB接続でも同様のパフォーマンスが出ている。
次に、HD Tune Pro 6.1を使って全領域でスピードをチェックした。最大で毎秒301.3MB、最小でも毎秒133.3MB、平均で毎秒241.8MBと、USB接続でもほぼ同じ結果となった。単品で使うシーンはあまりないかもしれないが、内蔵でも外付けでも十分なパフォーマンスが出ていた。
●発熱や消費電力、NASでの動作もチェック!
発熱に関しては、ベンチマーク中にサーモグラフィーカメラを使ってチェックした。表面で40度、裏面で42.3度、コントローラー付近で48.5度だった。無風状態でこの温度なら、実環境であるNASでの使用やデスクトップケース内に入れて使用する場合はファンがあるので安心だろう。
消費電力もチェックしておこう、測定にはUSB接続時に使うACアダプターに、ワットチェッカーを付けて数値を読み取った。
HDDを取り付けない状態でUSBクレードルをオンにした状態で1W、アイドル時には7〜8Wとなり、アクセス時には9〜10W、スピンアップ時は最大で21Wとなった。HDD以外の部分の電力も上下あると思うが、1Wと考えるとHDD単品ではスピンアップ時を除けば6〜9Wと大容量だから消費電力が高くなることもない。
動作音については計測してないが、モーター音やシーク音などで気になることはなかった。
●NASを使って動作チェック
最後に、ASUSTORのNAS「NIMBUSTOR 4 Gen2」を使って、iSCSI接続で内蔵ドライブと同様にCrystalDiskMarkでベンチマークテストを行った。結果としてシーケンシャルはSATA接続とほぼ変わらない速度になった。
これは、今回使ったNASが2.5GbE対応というのもポイントだろう。ランダムのスコアが高くなっているがこれはNASのキャッシュが効いているためだ。
続いて、実際のファイルをPCからNAS、NASからPCで転送時間を測定した。こちらはiSCSI接続ではなく通常のネットワークドライブとして転送した。ファイルは動画データ362ファイル/274GB分、DiskBenchソフトを使いコピーにかかった時間を計測した。
結果は以下の通りだ。
・PC→NAS:1066秒(毎秒264MB)
・NAS→PC:2952秒(毎秒97.7MB)
ここではHDDが1台のため、ミラーリングなどのRAIDは構築できなかったが、パフォーマンスとしてはネットワーク経由としても十分な速度だろう、これならNAS側も2.5GbE対応の有線LANが必要になってくる。
●まとめ
NASで大容量のHDDが欲しいなら、これを使おうと思えるだけのパフォーマンスと容量を備えているのが本製品だ。価格は同社直販で1台12万6500円となるが、1TBあたりの単価は4865円と5千円を下回る、もちろん、TB単価ではコンシューマー向けの8TBあたりが一番安いが、24時間365日稼働できてNASに最適化されている上に、何より8TB×3台分のスペースと電力が1台に収まる魅力がある。
ハイエンドユーザーや動画編集など、クリエイティブ作業のファイル置き場に容量が欲しいNASを活用しているユーザーにはいいHDDとなるだろう。
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1文字違いの偽アカウントが横行(写真:TBS NEWS DIG)70
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