大谷翔平の投球スタイルは2023年から変化したのか? 真中満と五十嵐亮太が考察する

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2025年07月16日 19:00  webスポルティーバ

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真中満×五十嵐亮太(第2回)後編

 6月16日(現地時間)、約2年ぶりにマウンドに戻ってきた大谷翔平の投球スタイルについて、ヤクルトスワローズOBの真中満さんと五十嵐亮太さんが分析。手術後のケガのリスクについても語った。

【手術後にケガのリスクはある?】

――メジャーリーグで大谷翔平選手が投手に復帰しましたが、手術後に球種を増やすとケガのリスクは高まりますか?

真中満さん(以下、真中)手術後に球種を増やすってそんなにリスクなの?

五十嵐亮太さん(以下、五十嵐)リスクはそんな高くないと思うんです。ただ、大谷選手がキャンプの時に、リリースポイントがけっこう高かったんですよ。高くすることによって、多少の肘の負担を減らすとか、そのフォームで投げると変化球の軌道も変わってくる。そっちのほうが負担がかかりにくいよなとか、あとは新しい自分のピッチングスタイルっていうのを模索しつつ、最初はやってたと思うんですよ。

 実際にライブBP(シート打撃)とかを経て最初の試合で、リリースのポイントとか、エクステンションとかも含めて(見たら)、大谷選手のフォームが2023年と一緒だったんです。本人がそうしようと思ってしたのか、それともそうなっちゃったのか、これわからないんですけど。でも、2023年ってスイーパーを投げ始めてから肘が落ちたんですよ。

真中 下げた方が曲がりやすくなるもんね。

五十嵐 そうなんです。だから、バッターを抑えようと思った時に、2023年に自分が抑えてたイメージとか軌動で、そうしなきゃいけないって体がなっちゃうのかなって思うんですよね。

真中 五十嵐のなかで、2023年のフォームは肘が下がるからあんまり好ましくないと思ってる?

五十嵐 同じように投げていたら同じようにケガをする可能性が高い。だから、僕は多少フォームを変えてくると思ったんだけど、変わってないんですよ。じゃあフォームが変わらないんだったら、まっすぐとスイーパー、このふたつで抑えたピッチャーだから、それプラス他のボールをどうするかが大事なんですよ。そうじゃないと、2023年と同じような感じになっちゃうじゃないですか。

 負担が大きいしケガをする確率が高くなってしまうから、そこをどうするかってなった時にシンカーが出てきたわけですよ。大谷選手のシンカーは曲がり幅が大きいし速いので、ゴロを打たせることができるし、うまくいけば空振りも取れるぐらいの変化量なんですよ。これが2023年からの大谷選手の変化なんだと思ったんです。

 1試合目でザンダー・ボガーツ選手を3球で打ち取ってるんですよ。追い込んでからインコースにちょっと食い込むシンカーで、サードゴロを打たせてる。こういう球数を少なくして抑えるパターンと、ここぞっていう時はスイーパーとストレートで三振を取りにいくパターン。このバランスが大事って思ったら(復帰後)2試合目シンカー投げなかったんですよ。

 ストレートとスイーパーで三振がふたつ取れたの。これはすごくよかったと思うんですよ。三振を取るパワーピッチャーだから三振を取れないってやっぱり引っかかるんですよ。スイーパーとストレートで抑えてちょっとカットボールを3球投げたんです。全体のパーセンテージで言ったら1%か2%に満たないぐらいのカットボールですよ。

 たぶん、2023年もそれくらいのカットボールを投げてるはず。そう考えたらもう2023年と全部一緒になっちゃうんです。スタイル自体が。ただ、このまま同じようにやってくと、じん帯を損傷する可能性はあるなと思ったんです。

真中 でも、2023年もそのフォームだからじん帯を壊したのか、それとも蓄積があって23年に壊したかっていうと、別に23年のフォームが悪かったから壊したっていうは直結しない。

五十嵐 しない。ただ、3年でケガをしてしまったってなると同じじゃないですか。あの年はWBCもあったし、体を無理させた可能性があるから、それが全てとは言えないですが。

【負担の少ない投球スタイル】

真中 トミージョン手術したらどのくらい(ケガしない)? その期間って大体の目安があるの?

五十嵐 いや、ないと思います。だって僕もトミージョン手術をして、そのあとずっと大丈夫だったから。

真中 そうなんだね。ずっと大丈夫だったんだ。

五十嵐 そう、だから負担がかかるところを見直さなきゃいけない。大谷選手もたぶん自分のなかで負担のかからない投げ方とか、なんとなくわかっているはずなんですよ。100マイルぐらい投げるピッチャーだから、ちょっとしたタイミングのズレとかで負担は大きくなるんです。そのへんをどう改善していくのか。同じフォームでも力の入れ方とか抜き方さえ変われば、負担を減らすことはできるんです。だから、どう負担を減らしていくのかが大事。

真中 ドジャースの解析班みたいな人たちとか、大谷選手も含めて、亮太が考えているようなこともある程度考えてるよね。これからリハビリ段階でまた色々変えていく可能性もあるってことか。

五十嵐 (2023年と)同じようなスタイルにならないだろうし、復帰登板ではストレートとスイーパーとシンカー、この3つのバランスが非常によかったんですけど、その次の試合ではシンカーを投げなかった。この次の試合では、シンカーとかカットボールとかいろんなものを混ぜて抑えるのかなとか、このままシンカー投げないでいくのかなとか。

真中 俺らはメジャーリーグの試合だと思って大谷選手を見ているけど、彼としてはリハビリというか。

五十嵐 調整なんだよね。1試合目、2試合目の調整の形が違ったから、次の3試合目の調整はどうなるのかなっていう。とにかく今は投球スタイルを決めるって感じじゃないですよね。

真中 試してるよね。

五十嵐 普通に考えたらすごいことですよ。試合のなかで試してるから。

――去年、練習でスプリットは投げていましたか?

五十嵐 割合で言ったら少ない。

――フォークは肘に負担がかかりますか?

五十嵐 実はそうでもなくて。昨日、山本昌さんと番組でご一緒して、フォークボールでも負担のかかる投げ方とかからない投げ方っていうのを、話したんですよ。で、結局投げる時にこっち側(内側)に負担がかかる投げ方っていうのはやっぱスライダー系とかフォークとか。ストレート系っていうのは投げた時に自然と外旋するので背中に(負担が)かかるんですよ。だから、なるべく背中を使って投げれば、負担がからないよねって。山本昌さんは肘の故障をしたことないんです。

 昌さんとか(腕を)返すの早いんです。もちろん背中とかうしろ側は張るんだけど、肘の負担は減らせる。そのフォームのなかでどういう球が投げられるのかを見つけるピッチャーと自分が投げたいボールをイメージして、フォームが近づいてくっていうパターンもある。負担はかからないように投げることはたぶんわかってるんですよ。でも、いざ抑えようと思ったら大谷選手も(負担のかかる)そういったボールを選択するんじゃないかな。

 大谷選手って一応力を抑えようと思ってたけど、出ちゃったタイプじゃないですか。ただ最初のライブBPでもいきなり97マイル出ていたのでね。それぐらいで試合で投げようと思っても、結局100マイル出た。ガッと入り込んだ時にはもう抑えられないんですよ。

真中 でもそれってみんなそうだよね。あの舞台で投げたらさ。

五十嵐 そうですね。でも大谷選手って出力がすごいじゃないですか。だからそれを抑えようって思ってもやっぱり無理。もちろん、慣れてきて試合感覚を掴んでくれば、抑えられるのかもしれないですけど、どう調整していくのかなって思います。

真中 ここから、球数が増えたり球種が増えたり......。

五十嵐 どこかのタイミングで、これ使えるなっていうボールが見えてくるだろうし、それが何なのかっていうところですよ。

真中 そうだね。

Profile
真中満(まなか・みつる)/1971年1月6日、栃木県大田原市出身。1992年にドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年にはリーグ優勝、日本一に貢献。2014年からはヤクルトの監督を務め1年目でリーグ優勝を達成。現在は野球解説者として、テレビやYouTubeなど幅広く活躍している。

五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道出身。1997年にドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。リリーフエースとして活躍し、メジャーでもプレー。2013年にはソフトバンクに移籍し日本一に貢献。2020年に現役を引退。現在は野球解説者として、テレビやYouTubeなど幅広く活躍している。

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