▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆無敗の重賞制覇で今後に期待
7月10日から12日にかけて、ニューマーケット競馬場のジュライコースで行われた「ジュライ・フェスティバル」から、主要な2歳戦を回顧したい。
まずは、初日の10日に行われた牡馬とセン馬によるG2ジュライS(芝6F)。創設されたのは1786年で、英国に現存する2歳戦では最も長い歴史を誇る。
オッズ2.5倍の1番人気に推されていたのが、C.アップルビー厩舎のマキシマイズド(牡2、父メーマス)。祖母フーレイがG1チーヴァリーパークS(芝6F)勝ち馬という血統背景を持ち、ゴフスUK2歳市場にて75万ポンド(当時のレートで約1億4537万円)でゴドルフィンに購買された。5月22日にヘイドック競馬場で行われたノーヴィス(6F)でデビュー。ここを1.1/4馬身差で制し緒戦勝ちを飾ると、6月6日にエプソム競馬場で行われた条件戦(芝6F3y)も1.1/2馬身差で制し、2連勝を飾っての参戦だった。
続くオッズ3.25倍のオッズで2番人気だったのが、A.オブライエン氏が管理するブリュッセル(牡2、父ウートンバセット)だった。LRロンドデニュイ賞(芝1300m)勝ち馬フォンドワーズの6番仔で、タタソールズ10月1歳市場のブック2にて30万ギニー(当時のレートで約6286万円)でクールモアの代理人に購買された同馬。5月25日にカラ競馬場のメイドン(芝6F)を制し、デビュー勝ちを果たしての参戦だった。
すなわち、ゴドルフィン、クールモアというスーパーパワーの所有馬が人気になっていたのである。しかし、ブリュッセルは4着、マキシマイズドは5着に敗退。勝ったのはオッズ19倍で、6頭立ての最低人気だったザヴァテリ(牡2、父ウィズアウトパロール)という波乱となった。
3代母が無敗の凱旋門賞馬ザルカヴァという牝系出身の同馬。しかし、母も祖母も未出走馬で、24年のタタソールズ10月1歳市場ではブック2に分類され、女性調教師E.ジョンソン・ホートンの代理人に3万5千ギニー(当時のレートで約733万円)というお手頃価格で購買された。
6月10日にソールズベリー競馬場のノーヴィス(芝6F)でデビュー。このレースを2.1/2馬身差で制し、緒戦勝ちを果たしての参戦だった。
ここも制し無敗の重賞制覇を果たした同馬について、ジョンソン・ホウトン調教師は「もっと長い距離にも対応できる」とコメント。大手ブックメーカーのパディーパワーやユニベットは、来春のG1、2000ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、同馬に34倍のオッズを提示している。
続いて、開催2日目の11日に行われた、2歳牝馬のG2ダッチェスオブケンブリッジS(芝6F)。
ここでオッズ1.4倍の圧倒的1番人気に推されたのが、K.バーク厩舎のヴェネチアンサン(牝2、父スターマン)だった。
G3アンドレバボワン賞(芝2000m)4着馬ジョハラの3番仔で、タタソールズ10月1歳市場にて24万ギニー(当時のレートで約4996万円)で購買された同馬。5月19日にカーライル競馬場で行われたノーヴィス(芝5F)を1.1/2馬身差で制しデビュー勝ち。続いて出走したのが、ロイヤルアスコット4日目(6月20日)に行われたG3アルバニーS(芝6F)で、ここも1.1/2馬身差で制し無敗の重賞制覇を果たしていた。
G2ダダッチェスオブケンブリッジSにおけるヴェネチアンサンは前半、6頭立ての4番手を追走。残り500mを切った辺りから鞍上が動くと、残り1Fの手前で先頭へ。そこから一旦は2馬身近く抜け出した後、前走サースク競馬場のノーヴィス(芝6F)を制しての参戦だったロイヤルフィクセイション(牝2、父パレスピア、15倍の5番人気)の強襲にあったが、これをクビ差しのいでヴェネチアンサンが優勝。2つの重賞を含む無敗の3連勝を飾った。
次走は、8月24日にドーヴィル競馬場で行われるG1モルニー賞(芝1200m)が有力。
最後にご紹介するのが、開催最終日の12日に行われたG2スーパーレイティヴS(芝7F)。
20年の勝ち馬マスターオブザシーズが、のちに3つのG1を制覇。21年の勝ち馬ネイティヴトレイルが、翌春にG1愛2000ギニー制覇。23年の勝ち馬シティオブトロイが、3歳となった翌年に3つのG1制覇と、勝ち馬のその後の活躍が目立っており、英国における出世レースの1つとなっている。
今年の勝ち馬は、オッズ7倍の3番人気だったサバデザート牡2、父ドバウィ)だった。ゴドルフィンによる自家生産馬で、祖母がG1愛1000ギニー(芝8F)勝ち馬ゴッサマーという牝系出身のサバデザート。C.アップルビー厩舎からデビューし、6月13日にサンダウン競馬場で行われたメイドン(芝7F)を制し、緒戦勝ちを果たしての参戦だった。
G2スーパーレイティヴSを勝ち、無敗の重賞制覇を果たした同馬を、ブックメーカー各社は来春のG1英2000ギニー芝8F)へ向けた前売りで、オッズ15〜17倍の3〜4番人気に浮上させている。
(文=合田直弘)