愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「一物五価の“土地価格”と“2025年の路線価” 4年連続の上昇」を解説

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2025年07月16日 21:00  TOKYO FM +

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愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「一物五価の“土地価格”と“2025年の路線価” 4年連続の上昇」を解説
本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

7月9日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「一物五価の“土地価格”と“2025年の路線価” 4年連続の上昇」というテーマでお話を伺いました。


(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆4年連続で上昇し続ける「路線価」

浜崎:今回、宗さまには「一物五価(いちぶつごか)の“土地価格”と“2025年の路線価” 4年連続の上昇」についてお話しいただきます。

やしろ:あまり聞いたことのない単語ですが、1つのものに5つの価格が存在するという意味の「一物五価」。その代表例が土地の価格だそうですね。

宗正:土地というのは、世界中でそこにしか存在しない唯一無二のものですよね。ただ、価格に関しては5つあるからややこしい。

まず1つ目が、国土交通省が毎年3月に発表する「公示地価」、そして2つ目は、都道府県が毎年9月に発表する「基準地価」。この2つは主に土地の売買などの目安として使われています。

3つ目が東京都や全国の市区町村が発表する「固定資産税評価額」。これは文字通り、固定資産税の計算に使われていて、3年に一度見直しがおこなわれます。4つ目は身近な「実勢価格」ですね、これは土地の取引の際に買い手と売り手の需要と供給で決まる時価のことです。そして5つ目が、7月1日に発表されたばかりの「路線価」です。

やしろ:漢字で書くと、電車の「路線」に価格の「価」で路線価ですね。

宗正:路線価は相続税や贈与税の算定基準として使われます。

やしろ:面倒臭いですね、土地って。一物五価って、なんだかいい意味で使う言葉なのかと思いきや、そうでもないんですね。大変で複雑という意味なんですね……。

宗正:それぞれ発表元が異なるのもややこしいですよね。路線価は国税庁が発表しています。

やしろ:7月に入って早々に発表されたばかりのその路線価、内容はどうだったんですか?

宗正:今年の路線価は全国平均で前年比2.7%の上昇でした。現在の計算方法になったのが2010年で、それ以降で最大の上昇率。コロナ禍以降2022年から4年連続の上昇になります。

毎年発表される路線価は、その年の1月1日から12月31日までの間に、相続税や贈与で土地を取得した場合に適用されます。先ほどお話しした、国土交通省が毎年3月に発表する公示地価の約8割程度の水準が路線価の目安です。

やしろ:今年の路線価が4年連続上昇ということでしたが、全ての調査地点のうち、どれぐらいの数で上昇したのでしょうか?

宗正:全国に路線価の調査地点は約32万地点ありますが、わかりやすく都道府県単位でお話しすると、今年は35の都道府県で平均路線価が上昇しました。前の年が29の都道府県で上昇でしたので、それを今年は上回る形です。上昇率のトップは東京都、前年比で8.1%の上昇ですから、1割弱も上昇したということです。

やしろ:とてつもなく大幅に上昇しているんですね。

宗正:路線価が上昇すれば、相続税も上がるので大変です。第2位が沖縄で前年比6.3%の上昇、第3位が福岡で前年比6.0%の上昇です。第4位は前年比4.4%の上昇で、同率になりますが、宮城・神奈川・大阪。やはり都市圏が全国的に上がっています。

最も高かった路線価は、東京都中央区銀座5丁目 銀座中央通りのお馴染み鳩居堂前です。毎年のように耳にしますよね。

やしろ:「お店の前の土地が一坪いくら」みたいな映像はよく見ますよね。

宗正:(この場所の路線価は)1平方メートルあたり4,808万円です。前年を384万円上回って過去最高です。ただこれは路線価ですから、じゃあ4,808万円を払えば1平方メートルあたりの土地が買えるのかというと、そういう訳にはいかないでしょうね。

土地の売買は実勢価格で、売り手と買い手が合意しないと成立しません。そのため実勢価格のほうが路線価よりも高くなるケースが大半です。銀座中央通りの鳩居堂前の土地が高いと言っても、そもそも売ってもらえない可能性がありますよね。

やしろ:そうですよね。東京はとにかく、不動産を含めて(さまざまなものの価格が)上がり続けているイメージがあります。

宗正:もうずっと上がり続けていますよね。「東京オリンピックまでだろう」なんて言われていた時期もありましたが、全く関係なく、当時の水準をはるかに超えて上がり続けています。

やしろ:東京ではマイホームどころか、都心部に関してはマンションを買うなんて、僕も含めて普通のお仕事をしていたら無理ですし、なんだかすごい時代に入ってきましたね。

宗正:今お話しているスタジオがある半蔵門は千代田区ですよね。不動産業界では千代田区・港区・中央区を「都心3区」と言いますが、この3区の上昇率がまた圧倒的に高いですね。

◆一方で路線価が下がった県も

やしろ:逆に今年の路線価が下がった地点もあるそうですが、それはどのように捉えるべきなのでしょうか?

宗正:先ほど35の都道府県で路線価が上がったとお伝えしましたが、逆に下がったのが12県あります。前の年に、前年比で下がった県の数が16県でしたから、下げ止まってきてはいます。

ちなみに下落率が最大となったのは奈良県で、平均路線価は前年比で1.0%の下げでした。奈良県は1993年から17年連続の下げとなっています。ただ、奈良市のような中心部などでは上昇していて、県内の人口減少が進むエリアで下落しているということです。一方で、下落率が最大の奈良県で前年比1.0%の下げということは、全国的に見ればやはりそこまで大きな下げではないんですよ。

やしろ:そうですね。東京は8.1%の上昇なので、それと比べると1.0%の下げって、そうでもないように思えますね。

宗正:ということは、この日本という国は、路線価に関しては全国的に高くて、しかも上昇傾向が続いているということが言えます。

◆インバウンドが土地の価格を上昇させる?

やしろ:路線価の上昇の要因として、何か特徴的なことはありますか?

宗正:都市部ではオフィスの空室率が下がっていて、つまりオフィス需要が高まっています。それに加えて賃料の上昇傾向が見られます。全国的には個人の住宅需要がかなり追い風になっていますね。上がり始めたと言っても、まだまだ住宅ローンの金利は低い水準じゃないですか。ですから、(今の内に)住宅ローンを組んで土地を買って家を建てようといった動きもあるのかなと。

それから、これも顕著ですが、インバウンド需要の高い市街地や観光地の路線価の上昇がすごく目立ちますね。全国の税務署別の最高路線価の上昇率、つまり「その地域の路線価の内で最も評価額が高かった地点」ということになりますが、トップが長野県白馬村で、前年比32.4%の上昇。そして第2位が北海道富良野市北の峰町で30.2%の上昇。第3位が東京都台東区浅草で29.0%の上昇と、インバウンド人気の高い所ばかりなんですよ。

やしろ:先ほどお話に出た、路線価上昇率で全国第2位の沖縄や第3位の福岡もそうですよね。この前、福岡に行ったときに、夜の道をタクシーで通っていたら、若い方が大勢いたんですよ。「センター街みたいですね」なんて話をしていたら、運転手さんが「半分は外国人ですよ」と言っていました。

台湾や韓国、中国から来ている人が多いみたいです。そうした国々の人は東京よりも福岡のほうが近いから、めちゃくちゃ観光で遊びに来ているみたいです。

宗正:韓国から福岡なんて、本当にちょっとの距離ですもんね。飛行機で離陸したと思ったら、もう着陸する……みたいな。

やしろ:やっぱり、インバウンドがいろいろなことに影響を与えているんですね。観光地で何か買ってもらって経済効果があるとか、それだけの影響ではないんですね。

宗正:つまり、この日本の相続税の算定基準となる路線価まで、インバウンドは上げてしまっているということです。

◆生前のうちに相続税対策や話し合いを

やしろ:路線価の上昇は相続税の計算に関わってくるというお話がありました。つまり相続税も必然的に上がるということで、何かしらの対策が必要ということでしょうか?

宗正:絶対に必要です。生前に相続財産を少なくしておけば、相続税も少なくなる。まずこれが基本的な考え方です。軽減制度を活用して税負担を軽くするという手段もありますし、相続税を支払うための納税資金を生前に準備しておくことは、今から始められる対策です。

生前に準備をしておけば、「争族(遺産問題を巡って親族間で起こる争い)対策」にもなります。相続が発生した後で、そこから話し合いを始めるとなると、相続税を納めるまでの期限は原則10ヵ月以内ですから、あっという間に経ってしまって争いごとになりがちです。

やしろ:確かにそうですね。残された身内で揉めなくてもいいことで、憎しみ合うこともありますよね。

宗正:具体的には遺言の活用も有効ですし、相続財産の一覧を作っておいて、生前にそれぞれの意思を確認しておくことも有効です。生命保険などを使ったテクニカルな方法もありますね。

他には、分けることが難しい財産を生前に処分して、現金に換えておく。相続税率が高くなることもありますが、現金はやはり一番相続しやすいですよね。

特に今の時代は、現住所からほど遠い場所にある、先祖が残した田舎の実家や田畑や山林の相続に関する問題が増えています。「負ける」という字をつけて「負動産」なんて言われてもいますが、極端な話、どこにそれがあるかも分からない人に相続が発生するケースも普通にありますから、大変です。

やしろ:それで、取り壊しが必要な建物があるときに、誰に許可を取っていいか分からなくなっている……なんてことも起きていますよね。

宗正:そうなんですよ。相続は全ての人に関係してきますから、一度自分のケースはどうなるのか、確認しておくことをおすすめします。

やしろ:ラジオの前のみなさんも、今は相続税が上がっているということですので、気をつけて準備していただけたらなと思います。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/

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