Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(2025年7月7日〜13日)は日向夏の「薬屋のひとりごと」シリーズほぼ一色。1位は最新刊の『薬屋のひとりごと16』(ヒーロー文庫)で、4位に第5巻、5位に第6巻、7位に第7巻、8位に第8巻、9位に第9巻、10位に第10巻が入ってベストテンの中の7冊を『薬屋のひとりごと』シリーズが占めた。
参考:【画像】『薬屋のひとりごと』猫猫の頭にのる毛毛がかわいい! オンラインくじ引き
理由はやはり1月から放送されたTVアニメの第2期が盛り上がったからだろう。猫猫が遠方の砦に拉致され、壬氏が正体を明かして助けに向かう展開の中で、第2期から本格的に登場してきた子翠という名の虫好きの下女が、意外な正体を持っていたことが明かされ驚きを誘った。悲劇的な最後を迎えたかに見えた子翠のその後が第2期のラストで明かされ、そこに至る過程が原作者のショートショートとしてウェブで発信されてサーバーが落ちるほどの注目を集めた。
第1期の時もランキングを既刊本が独占するような状況が起こったが、第2期ではそれ以上の盛り上がりを見せていて、12位から17位までと、20位、21位、23位をシリーズが占めて既刊本すべてが並ぶ状況となっている。TVアニメ第1期のシナリオ集が付いた『薬屋のひとりごと16 アニメ第1期シナリオ集付き限定特装版』(ヒーロー文庫)も4,840円と高額ながら45位に入るほど。すでに購入している人たち以外の、TVアニメで作品に触れて興味を持った層にまで原作小説が届き始めている現れと言えそうだ。
そんな“猫猫づくし”のランキングに割って入った作品が鴨志田一の「青春ブタ野郎」シリーズ最新刊で、完結した本編を補足するような短編集『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない+』(電撃文庫)。パッケージの特典として付いてきた短編を文庫にまとめたもので、表題作「青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない」ではまだ高校生の梓川咲太が体育祭に臨むことになって、そこで起こったビーチバレー選手として知られた同級生の大津美凪が引き起こす「思春期症候群」に巻き込まれる。
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併録の「青春ブタ野郎はトロピカルサマーの夢を見ない」は麻衣とプール付きの貸別荘に行くことになり、妹の花楓や麻衣の妹でアイドルグループにいる豊浜のどかや、グループメンバーの広川卯月もついてきて水着姿を披露するという、絵で見たくなる展開が繰り広げられる。TVアニメの第2期『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』も7月から始まって、卯月の変貌ぶりが話題になっていることもあり読んでおきたい一編。アニメが盛り上がれば次は「青春ブタ野郎」シリーズがランキングを席巻するかもしれない。
3位は7月25日発売の衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 3年生編2』(MF文庫J)。6位は7月22日発売で映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』の原作小説にあたる坂口和久『完全版 小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』(朝日新聞出版)で、こちらは以前に刊行されたものに映画の中で詳しくは描かれなかった天鬼誕生の秘密が明かされる。根強い人気を持つ映画だけに改めて完全版を読んで何が起こったのかを確かめたい人にヒットしそうだ。
11位以下で「薬屋のひとりごと」シリーズ以外では、上遠野浩平が長く書き続けている「ブギーポップ」シリーズの最新刊となる『ブギーポップ・ナイトメア 悪夢と踊るな子供たち』(電撃文庫)が11位にランクイン。シリーズの第2作から登場している織機綺と谷口正樹が、玖良々三兄妹という未来を視て変える力を持った面々と出会い起こる事態が描かれ、その渦中にブギーポップも姿を現す。街の片隅で起こっている出来事が人類レベルの大きな出来事とつながりつつ、その一部をうかがわせる筆さばきは「ブギーポップ」シリーズの真骨頂。読み終えて不思議と爽やかになれる新刊だ。
18位は浅葉なつによる「神様の御用人」シリーズ最新刊『 神様の御用人 見習い』(メディアワークス文庫)。神様の御用を聞いて動き回る御用人に突然されてしまったフリーターの萩原良彦を主人公にしたシリーズだったが、最新刊は御用人を輩出し続けて来た神社に生まれ、自分も御用人になりたいと願ってきながらなかなか指名されなかった桜士朗が主人公。大国主神に頼み込んで見習いの御用人となり、白狼の青藍とコンビを組んで活動を始める。新しい展開でファンの関心を引き続けそう。7月25日発売。
19位は将棋の世界を描いてきた白鳥士郎のライトノベルシリーズ最新刊で、本編の完結編となる『りゅうおうのおしごと!20』(GA文庫)。若くして竜王という将棋のタイトルを獲得した九頭竜八一の弟子に、小学生の身でおしかけなった雛鶴あいの師弟コンビが見せてきた戦いありラブコメありの展開で読ませたシリーズだったが、途中であいが八一と別れ、女流ではなくプロ棋士になろうとする道を歩み始めシリアスさを増していく。
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藤井聡太七冠がプロデビューする前から始まっていたシリーズだが、フィクションならではの最年少記録などの難関が藤井七冠に破られ、現実に超えられたと話題になった。他にも、AIが普及して将棋が変わる可能性と、それでも人間が対局する意味などが問われる内容や、女流棋士が編入試験によってプロ棋士になれる道が検討される展開が、現実の将棋界でも起こっているトピックとリンクし、将棋への関心と理解を深めた。女性のプロ棋士誕生だけがフィクションのままだが、これもいずれ現実のものとなるだろう。完全に現実に超された作品となる日も遠くないかもしれない。
※参考:Rakutenブックス「ライトノベル 週間ランキング」
(文=タニグチリウイチ)
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