大津地裁での判決後、「県に勝訴」などと書かれた紙を掲げる弁護団メンバーら=17日午後、大津市 滋賀県東近江市(旧湖東町)の湖東記念病院で死亡した男性患者に対する殺人罪で服役し、出所後に再審無罪が確定した元看護助手西山美香さん(45)が、違法捜査で虚偽自白を強いられたなどとして、国と県に計約5400万円の賠償を求めた訴訟の判決が17日、大津地裁であった。
池田聡介裁判長は、警察官の取り調べについて「社会通念上相当と認められる範囲を超える」として違法性を認め、県に約3100万円の賠償を命じた。一方、検察官の起訴については「相応の合理性がある」などとして、国への請求は退けた。原告側は控訴する意向。
西山さんは2004年、捜査段階での自白を基に逮捕され、公判で否認に転じたものの、最高裁で懲役12年が確定。出所後に「自白の信用性に疑いがある」などとして再審開始が認められ、20年に無罪が確定した。
判決で池田裁判長は、西山さんが否認したのに、取り調べを担当した警察官は否認調書を作成せず、「不当に働き掛けて虚偽自白を維持させようとした」と指摘。また、患者がたんを詰まらせた可能性を示唆する捜査報告書を検察に送らなかったことは「職務上の法的義務に背く判断だった」と非難した。
一方、検察官の判断に対しては、「殺人という重大な事実を虚偽供述したと推察できたとは認められない」と結論付けた。
県警の木林誠監察官室長は「判決内容を精査した上で、今後の対応を検討する」、大津地検の中山博晴次席検事は「基本的に国の主張が認められたものと考えている」とコメントした。