
2024年、群馬県で行われた夏の花火大会。
開催日、会場付近はたまたま雷が続き、「雷の音」「花火の音」が交互に鳴り響きました。「激しい音の連続」の影響によって、各所で小型犬が逃げ出す騒ぎとなり、結果的に群馬県動物愛護センターには「音に驚いて逃げたことで、飼い主と離ればなれになったワンコ」で溢れかえっていました。
マジョラムというメスの小さなプードルもそのうちの1匹。収容されたワンコの多くが飼い主と再会を果たしたものの、マジョラムの元には飼い主からの申し出がありませんでした。
トリミング直後なのに飼い主が迎えに来ない謎
ここで少し不可解に感じるのはマジョラムの体でした。
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動物愛護センターに収容され、飼い主から申し出がないワンコの大半は一目でひどいネグレクトを受けていたことがわかるワンコたち。
しかし、なぜかマジョラムは毛並みがとても綺麗で、トリミングを受けたすぐ後の様子です。つまり直前まで、飼い主に大切にされていたと感じるにもかかわらず、マジョラムには飼い主からの申し出がなかったのです。
事前に遺棄を考える一方、飼い主が特定された際の伏線として「いえいえ、大事に育てていたんですよ。実際、こんなに綺麗にトリミングしているじゃないですか」という言い訳を考えていたのか、それとも「飼えなくなってごめんね。最後に綺麗にしてあげるからね」ということなのか……。
いずれにしても、マジョラムが信頼を寄せていたであろう飼い主は、二度と姿を現しませんでした。
悪い人ではないとわかるとすぐに笑顔に。しかし…
ただ、唯一の救いだったのは、こんな境遇でもマジョラムは明るく前向き。当初はやや怯えた表情を浮かべながら、檻越しに対面する初めての人間には恐る恐る興味を示し、「悪い人ではないんだ」と察すると、すぐに笑顔でハイテンションになって喜びます。
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そして、その人間の周囲を見渡して、「あれ? 私の飼い主さんが迎えに来たんじゃないんですか?」と飼い主が一緒にいるんじゃないかとキョロキョロ。マジョラムの明るい無垢な様子が切なくも感じます。
イヤなことは断固拒否する立派な一面も
そんなマジョラムを保護することにしたのが、保護団体・Delacroix Dog Ranch。マジョラムは根っからの性格良好の人間大好き、他のワンコ大好きな性格で、団体代表や、預かりボランティアさんの家で、初めて会う人、その家にいる大きな先住犬を前にしても臆することなくむしろ社交的で尻尾を振り続けました。
一方、先住犬の「遊ぼう攻撃」がしつこい際には「ヤダ!」としっかり主張し、サラリとイナす場面も。小さな体のマジョラムですが、どんな場面でも周囲に流されず、しっかりと「自分のペース」を守り抜くところはとても立派です。
それまで以上に穏やかな表情を浮かべるようになった
10歳という年齢で、人間にたとえれば十分シニアの域に入ったマジョラムですが、この賢さ、このかわいさで程なくして「うちにおいで」の声がかかりました。優しい里親希望者さんからの申し出で、もちろん「マジョラムに寄り添い、ずっと一緒に過ごします」と言ってくれました。
果たしてマジョラムは、この方の家に正式譲渡となり、第二の犬生を歩み始めました。
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マジョラムはそれまで以上に穏やかな表情を浮かべるようになり、小さな体でちょこちょこと尻尾を振っては、優しい里親さんの後ろを歩いてまわっているそうです。こんな明るく穏やかな幸せの日々が1日でも長く続くと良いなと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)