
サッカー・ファジアーノ岡山のJ1昇格で今季から実現したサンフレッチェ広島との「中国ダービー」。ファジアーノが初めて広島をホームで迎え撃った5日のJFE晴れの国スタジアム(岡山市北区)は今季最多の1万5451人で埋まり、クラブが近くの岡山県補助陸上競技場で実施したパブリックビューイング(PV)も盛り上がりを見せた。
この日、J1の他のダービー2試合はサポーターによる問題行動の動画がX(旧ツイッター)で広まり、クラブが謝罪に追い込まれる事態となった。一方、中国ダービーで拡散されたのは、ファジアーノサポーターがアニメ番組の曲に合わせて踊る平和で明るい光景。「日本一平和なダービー」とSNSで絶賛されている。
サッカーにおけるダービーとは、主に同じ地域に本拠地を置くクラブの対戦のこと。Jリーグ公式ホームページによると「クラブ同士のプライドとプライドがぶつかり合うアツき戦いが見られる」そうだ。5日のダービー3試合は地域性に加え、これまでのリーグ戦の戦績からも注目のカードとなった。
「横浜ダービー」の横浜FCと横浜F・マリノス、「大阪ダービー」のセレッソ大阪とガンバ大阪は、近い順位で競り合っていることもあって試合前から荒れた。ニッパツ三ツ沢球技場(横浜市)では、一部のマリノスサポーターが入場前、近くの公園で花火と発煙筒を使って横浜FCサポーターへの挑発行為を行ったとして、手荷物検査のため入場が大幅に遅れた。マリノスは5日、ホームページで謝罪し、侮辱的行為が確認できた観客に無期限入場禁止の処分を下した。ヨドコウ桜スタジアム(大阪市)周辺と思われる場所では「青黒大阪」と書かれた横断幕を手にした集団が柵を倒す動画などがXに投稿された。ガンバ大阪は9日になって「ガンバ大阪サポーターによるJリーグ試合運営管理規定に違反する行為が発生した」と公表し謝罪した。
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中国ダービーも、4月の広島ホーム戦でファジアーノが勝利したことで、ライバル意識はこれまでになく高まっていた。ところが試合後、Xで話題となったのはファジアーノの応援を先導する「GATE10」エリアにいるサポーター集団が、子ども向けテレビアニメ「しましまとらのしまじろう」のエンディング曲「ハッピー・ジャムジャム」で踊る動画だった。
クラブによると、「ハッピー・ジャムジャム」がファジアーノホーム戦で披露されるのは、岡山市の教育大手企業による年1回のスポンサーデー。J2時代からの恒例イベントが、ちょうど中国ダービーと重なり“J1初披露”となった。
Xに投稿された動画には、試合中に野太い声を上げ、大きな旗を振って選手を鼓舞しているサポーターが、「こしに てをあて おしりフリフリ」といった歌詞とともに集団でぴょんぴょん跳ねたりかわいく回ったりしている光景がばっちり映し出される。「平和すぎてもう。尊いわ。」「荒れ狂うダービー動画しか流れてこなかったのにwwwwww 岡山さんサイコーかよwwwwwwwww」「新しいダービーの景色(笑)大きいお友達の皆様に敬意」と称賛するコメントであふれた。
マリノスや横浜FCサポーターからも「ダービーこれがよかった」「え、いいなぁ。平和で。。。」と寄せられ、J2やJ3チームサポーターからは「なるほどーこれだけ踊るサポが増えるとJ1に上がれるのか…」「ハッピージャムジャム踊りたすぎる長崎サポです」などの反応。X投稿には表示回数が100万回を超えたものもある。
「ハッピー・ジャムジャム」だけでなく、サンフレッチェ広島の選手が乗ったバスを温かく迎えるファジアーノ岡山サポーター、PV会場で並んで観戦する両チームのサポーターの様子も報告され、他チームのサポーターからも驚きの声が上がっている。
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ファジアーノ岡山は20日、ホームでヴィッセル神戸と対戦する。両クラブのルーツは1966年、岡山県倉敷市で創部した川崎製鉄水島サッカー部。ゆかりの地での“川鉄ダービー”だ。ダービーの理想は互いに高め合う良きライバルであることだろう。中国地方から明るく健全なダービー文化が広がっていくことを期待したい。
(まいどなニュース/山陽新聞)