


結婚の報告をして母に言われたのは、「ええ! 本当に!? よかったよかった。もう結婚できないと思っていたのに。やっと片づいたのね」でした。(相変わらずヒドい言い方......)母は私に対して昔からつめたいのです。「でね、お相手が東京本社に戻るから、私もついて行くわ」



私は東京での大学生活を経て、憧れの食品メーカーに内定が決まりました。ずっと目指していた業界です。ここから社会人としての一歩を踏み出せるのが嬉しくてたまりませんでした。「実家に帰る」という選択肢は想定しておらず、東京で暮らしていくことを楽しみにしていました。



地元に戻って約20年。結婚を機にようやく介護から解放されると感じる一方で、20年前のことを思い出しました。私は東京の大学を卒業し、憧れの食品メーカーへの就職が決まっていました。
しかし祖父母の世話を担う母から帰ってきてほしいと頼まれたのです。母は私に家族を優先してほしいと言いましたが、私は自分の仕事を大切にしたかったです。
当時の私は東京での生活を続けたい気持ちと、母の申し出を無下にできない気持ちの間で悩んでいました。
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