※写真はイメージです もうすぐ長期休暇シーズンに突入する。旅行や里帰りなど、新幹線に乗る機会もあるだろうが、とにかく混雑するのがネックである。
座席をめぐって、ちょっとしたトラブルが起きることも多々……。
◆指定席を横取りする親子連れが「お前が適当な席に座ればいいだろ!」
中島橙子さん(仮名)が軽井沢から金沢に新幹線で移動した際の出来事だ。
あらかじめ予約していた指定席に向かうと、すでに見知らぬ家族連れが座っていたという。
「真ん中の席に母親が座っていて、両サイドに小学生ぐらいの子どもがいました」
中島さんが「すみません、ここ私の席なんですが……」と声をかけると、母親は「小さい子がいるから代われません」と言い出したという。
思わず「じゃあ、私はどこに座れば……?」と困惑していると、後ろの席に座っていた男性から予想外の一言が飛んできた。
「子どもがいるから譲れないと言っているんだから、お前が適当な席に座ればいいだろ!」
男性は怒鳴り声で中島さんを威嚇したという。彼が父親なのだろうか……。まさかの逆ギレである。
◆声をかけても今度は無視
恐る恐る指定席である旨を何度も伝えたが、埒が明かない。そうこうしているうちに、新幹線は次の駅に到着。そこでサラリーマン風の男性が乗車してきた。
そのサラリーマンが指定した席が、子どもが座っている通路側の席らしい。中島さん同様に「そこは私の席ですよ」と伝えたが、今度は母親は「無言」を貫いたという。
サラリーマンが強く要求すると、先ほど中島さんを怒鳴っていた男性が立ち上がり、再び威嚇するという事態に発展したのだ……。
もういい加減にしてほしい。
周囲の乗客の誰かが通報したのか、車掌が登場。説得されて、ようやく家族連れは荷物を持って移動してくれた。
「時期的に混んでいたこともあり、家族がバラバラでしか指定席を取れずに、適当に空いていた席にみんなで座っていたみたいです」
中島さんとサラリーマンの男性は車掌にお礼を言い、ようやく自分の席に座ることができた。せっかくの旅行にもかかわらず、とにかく「疲れた」という感想だったとか。
◆景色の良い窓側席を狙う外国人観光客との攻防
小澤玲香さん(仮名)は長期休暇を利用して新幹線で博多へ向かう道中、忘れられない“席争奪戦”を経験した。近年は外国人観光客が増加しているが……。
「1か月以上前に2人掛けの窓側が良くて選んだ座席です。しかし席に向かうと、そこには外国人観光客の女性2人が並んでいました」
小澤さんが予約画面をスマホで見せると、2人はおとなしく自分たちの席へと戻っていった。一件落着かと思いきや、トイレから戻るとまた同じ光景が。
「再び同じ2人が私の席に座り、窓にスマホを向けて景色を撮っていたんです。近くに立ち止まると、元の席へ戻っていきました。テーブルは勝手に畳まれ、置いていたペットボトルは前のネットに押し込まれていました……」
小澤さんが唖然としていると、外国人観光客の1人が「チェンジ、チェンジ!」と笑顔で座席交換を求めてきた。しかし、わざわざ選んだ席。小澤さんは軽く首を横に振り、断った。
◆「もう二度と席は離れない」
新神戸駅を過ぎたあたり、小澤さんはデッキで休憩することにした。しかし、戻るとあの2人が自分の席に座っていた。
「私に気づくと、さっと席を移動したのですが、掛けていたコートが座席に落ちてその上に座ったようでシワシワになっていました」
「もう二度と席は離れない」と決意したが、また仕事の電話が入る。デッキで対応している間にも、2人は再び席を移動していた。小澤さんは車掌に事情を説明し、直接声をかけてもらうことに。
「彼女たちが自分の席に戻ったのを確認してから私が席に戻ると、『ソーリー』と声をかけてきました。ようやく伝わったのかと思いましたが……」
広島駅を発車してしばらくすると、再び会社から着信が。デッキで電話対応を終えて戻ると、またしても2人が座っていた。今度は小澤さんの顔を見るなり、すぐに自席へ戻っていったという。もう何度目なのか……。
小澤さんの長期休暇は、こうして予想外の“座席攻防戦”で始まったのだった。
公共の場ではお互いにマナーやルールを守る意識が必要不可欠。周囲への配慮を忘れずにいたい。外国人観光客への対応に関しては社会として課題が残されているものの、何かあれば近くの駅員に伝えるのがいちばんだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo