夏休みの自由研究「10円玉をピカピカにする実験」にドキッ!…磨きすぎたら“犯罪”になるの? 弁護士が語る「貨幣損傷等取締法」の境界線とは

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2025年07月19日 18:10  まいどなニュース

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10円玉を磨きすぎると罪になるの? ※画像はイメージです(kai/stock.adobe.com)

Aさんは小学4年生の息子の母親です。夏休みの自由研究に早速取り組む息子の様子を、リビングで眺めていました。Aさんの息子が選んだテーマは「10円玉をピカピカにする実験」です。息子の計画では、お酢や醤油、ソース、ケチャップといった家庭にあるさまざまな液体に10円玉を浸し、どの液体が一番きれいになるかを調べるというものでした。

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実験が始まってからの間、息子は毎日液体に浸かった10円玉の色を観察し、熱心にノートに記録していました。Aさんは真剣に向き合う息子の姿を見て、「立派になったなあ」と感動しています。

その後、実験は最終段階に入り、息子は「もっとピカピカにしたい」と言い出し、歯磨き粉や金属磨き用のクリームで10円玉を磨こうとし始めます。しかしAさんは以前にインターネットで見かけた記事の内容を思い出します。そこには硬貨に穴を開けたり、デザインを削り取ったりすると罪になるという内容が書かれていました。

「歯磨き粉や金属磨き用のクリームで磨くくらいでも罪になるのか?」とAさんは不安になります。硬貨を磨く行為は、どこまで許容され、どこからが罪になるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

洗浄が目的でも磨きすぎると罪になることも

ー硬貨を磨いて綺麗にする行為は罪になりますか

夏休みの自由研究などで硬貨の汚れを落として綺麗にする程度の行為であれば、罪に問われる可能性は極めて低いと考えます。日本の法律には「貨幣損傷等取締法」というものがあり、貨幣を故意に傷つけたり、溶かして別のものに作り替えたりすることを禁止しています。

法律の目的は、貨幣が本来の通貨としての役割を果たせなくなるような深刻な損傷を防ぐことです。したがって、一般的な「洗浄」の範囲内であれば、「損傷」には当たらないと思われます。

ー法律違反となるかどうかの判断基準はどこにありますか?

法律違反となる「損傷」にあたるかどうかの判断基準は、「貨幣の通用を妨げるほどの行為かどうか」という点にあります。貨幣損傷等取締法で禁じられているのは、貨幣を「鋳つぶし」したり「著しく損傷」させたりする行為です。

ドリルで穴を開けたり、意図的に曲げたり削ったりして形を大きく変える行為や、模様や文字が判読できなくなるほど削ったりする行為は「損傷」とみなされるでしょう。ただ洗浄の目的でも、磨きすぎて刻印が薄くなってしまえば「損傷」と判断されるかもしれません。

ー法律に違反した場合、どのような罰則が科される可能性がありますか?

貨幣損傷等取締法に違反したと判断された場合、罰則は「一年以下の懲役または二十万円以下の罰金」と定められています。また、損傷させる目的で硬貨を集めることも、同様に禁止されています。

過度に硬貨を磨きすぎると、せっかくの自由研究が法律違反となり残念な思い出になってしまいます。過度な研究にならないよう、適切にサポートをしてあげてください。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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