大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 2025スーパーフォーミュラ第6戦&第7戦富士 7月19日、静岡県の富士スピードウェイで全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の予選と決勝が行われ、2番グリッドからスタートした坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が抜群のレースペースを見せつけ、今季2勝目を挙げた。
レース後、トップ3以外のすべてのドライバー出席するメディアミックスゾーンから、第6戦の予選と決勝に挑んだドライバーたちの声をお届けする。
■小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 予選9番手 決勝22位
予選9番手からスタートした可夢偉は、序盤は9番手のままレースを展開して19周目にタイヤ交換を完了。ポイント獲得を目指していた24周目に太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をダンロップコーナーで追い抜いたが、その際に行き場を失った太田がランオフエリアに逃げてコースに合流するというシーンがあった。
これについては他車への押し出し行為として、可夢偉に黒白旗が出された。
この時の状況について「ちょうど彼はアウトラップで、Bコーナーのブレーキは(奥まで)いけないから、僕は普通にインに入ったんですよ。そうしたらアウトから粘ってきて、最後は諦めて向こう(ランオフエリア)に行ったんですよ。逆に『(アウトラップでブレーキがいけない)あの状況で粘ったことで、彼はどこに行きたかったのか?』となりました。諦めればいいのに粘ってきたという感じですね」と可夢偉。
のちにタイヤのウォームアップが終わった太田が可夢偉に接近すると、26周目のパナソニックオートモーティブコーナーで可夢偉の抜きにかかった際に2台が接触。可夢偉の右リヤタイヤが破損し、緊急ピットインを余儀なくされ、最終的に22位でレースを終えた。
接触に関しては、位置関係的にミラーの死角に入っていたとのこと。「僕がブレーキングした時は(真後ろに)いなくて、めっちゃイン側にいたから、(ミラーの)死角にいた感じなんです。それでインに入ったら、突然横から来て『絶対に曲がる気ないでしょ!』という勢いで来られて、避けたけど……間に合わなかったです」と、可夢偉は状況を語る。この接触では、今度は太田に黒白旗が提示されている。
かなりヒートアップしたバトルだったように感じたが、レース後のメディアミックスゾーンでふたりは笑顔でお互いの状況を説明しあっていた。
可夢偉は「1ポイントを取れるか取れないかの意地の張り合いをしていただけ。あそこで前に出られるか出られないかで、ポイント圏内に入れるかどうかやから。意地を張るしかなかったです」と、当時の心境を振り返っていた。
■福住仁嶺(Kids com Team KCMG) 予選3番手 決勝4位
予選では3番手を獲得した福住。スタート直後は坪井と2番手争いをするも前に出られず、3番手で1スティント目を展開。ピットウインドウが開いた10周目にピットインする作戦を採ったが、後半は少し劣勢の展開となり、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)に追い抜かれ、4位でチェッカーを受けた。
「残り10周〜15周くらいからタイヤ的にはキツくて、オートポリスから抱えている問題が出てきて、ペースを上げられませんでした。岩佐選手を抑えようと頑張ったんですけど、ペースが違いすぎて抜かれてしまいました。その後は4位をキープできるようにプッシュしたという感じです」と福住。
第5戦オートポリス後にJRPから科された罰則適用により、金曜のフリー走行2回目の出走制限があった影響で、ロングランの確認ができていなかったとのこと。レコノサンスラップでのフィーリングから、グリッド上で急きょサスペンション周りのセッティング変更を行うなど、福住陣営には慌ただしさがみられた。
「スタート練習をしながらクルマの感覚を探っていたんですけど、『こっちは違うかな』という感じで、また変更した感じです。それが良かったか悪かったかと言われると……まだ分析しきれていないです。ただ、あれが原因というわけではないです」
総じてレースペースの部分で課題が残ったような印象だが、「今回ちゃんとレースができたことでいろんなデータをとることができましたし、他車のボトミングの仕方を見て、ヒントになるなと思った部分もありました。そこも含めてチームと話をして、まずは仕切り直して予選からしっかり走って、なるべく前のポジションからスタートできるようにするのと、今日より決勝を改善できるように頑張りたいなと思います」と語った。
■山下健太(KONDO RACING) 予選16番手 決勝12位
予選Q1B組では8番手と、Q2に進出できず。決勝ではピットインを引っ張って勝機を狙うも、ポイント圏外でのフィニッシュとなった山下。今季はもてぎやオートポリスで予選上位に進出するシーンも見られたが、全体的には苦しみが続いている。
「テストの時にはいろいろ試してまとまってきたと思ってたのですが、走ってみたら全然違って。もう、そういうのは繰り返してきているので、なんとも言えないですけど……自分的にはGTで36号車に乗っていて、シーズンを通して速く走るために何が必要かというのはいろいろ感じるところがあるのですが、(SFで)そこに持っていくにはまだ全然力が足りないというか。『まとまった』と思って次の日に走ったら全然違うとか、そういうのが多すぎて……」
昨年の夏の富士では「トガったセットアップをしていた」という山下だが、今年は「『普通に走れるだろうな』というセットアップで持ってきているんですけど、それでもやっぱり走らない」と首をひねる。
「コンディションにすごいセンシティブです。そのあたり坪井選手を見ていると、どんなコンディションでも、いつも5番以内を走っていますし、なんだか(自分は)10段階くらい下のレベルにいるな、と感じました」
長きにわたってKONDO RACINGに在籍し、さまざまなエンジニアと仕事をしてきた山下だが、「起きていること自体は変わらない」と言う。
「もちろん、いま大駅さん(俊臣エンジニア/今季より加入)はすごい頑張ってくれていて、なんとかもてぎとか、オートポリスみたいなパフォーマンスを出せるようにやってくれているのですが、ちょっとあまりにも変わりすぎてしまって……」と、悩みは深そうな様子だった。
■大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 予選4番手 決勝8位
4番グリッドからスタートした大湯。序盤から上位につける走りをみせ21周目にピットストップを済ませたが、最終的に8位にポジションを落としてチェッカーを受けた。
大湯といえば、いつも作戦名に独特な名前をつけることで知られているが、今回は『ギンギラ作戦』と『俺のやり方作戦』があったそう。
早速、4周目にチームラジオで「これちょっと……『ギンギラ作戦』ダメかも。『俺のやり方(作戦の方向)』で考えて」という大湯からチーム対する無線が流れ、観戦をしていたファンや関係者の間で注目を集めた。
レース後に話を聞くと、「本当は『ギンギラ作戦』にしようと思っていたんですけど、『俺のやり方作戦』に変えましたと大湯。気になる作戦詳細だが、『ギンギラ作戦』は早めにピットに入るというもの。『俺のやり方作戦』は逆に後半まで引っ張るということだった模様。改めて、この作戦変更をした意図について、大湯はこう語る。
「(1スティント目のペースに対する手応えは)ちょっとだけあったんですけど、その中でも『なんか怪しいな』という雰囲気も感じつつ……。ただ、早めに入ってきた人たちのペースがあまり落ちなかったので『これはまずいな』と思いながら走っていました」
「でも、ズラすんだったら、それなりにズラさないと取り分がなくなっちゃうので、あのタイミングだったというイメージでした。あとはイゴール(・オオムラ・フラガ)選手もいたので、そこも意識したタイミングになりました」
ピットストップで少し時間がかかったところもあったようだが、「現状ではペースを改善することが重要です。そもそもペースがないと始まらないところがあるので、そこをどうにかできないと上位フィニッシュは厳しいなと感じています」と大湯。それでも、ポジティブな点もある様子だ。
「予選のパフォーマンスは今日より良くできる気がしているので、そこで上位にいって、そのまま抑え切って、戦略と気合いのブロックでどうにかするというレースができれば……明日は望みがあるかなという気はしています」
20日の第7戦終了後のアフターグリッドパーティでは、DJパフォーマンスも行う予定だが、そこにつなげるためにも良いレースをしたいと意気込んでいた。
■イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING) 予選8番手 決勝9位
予選Q1B組を2番手タイムで突破したフラガだったが、Q2では8番手に沈んでしまった。それでもレースではスタート直後に6番手まで順位を上げ、可夢偉、大湯、太田格之進らと順位を争いオーバーテイクシーンも見せるも、最終的には9位で終えることになった。
「やっぱりSFは難しいですね(苦笑)。予選はクルマ自体のパフォーマンスが悪くなかったのですけど、少し自分のミスが響いたところがありました。1コーナーの立ち上がりでダートを少し踏んじゃって、そこで結構タイムロスしてます。レースもペース的にはそこまで悪くはなかったのですけど、作戦含めてピット作業もうまくいかなかった部分があって、セカンドスティントで後ろの集団に飲み込まれてしまって、そこで結構タイムロスがあったのかなという印象でした」
「(バトルは)可夢偉さん、大湯さん、太田さん……なんか周りが結構アグレッシブで、当たっていた1台がいたので順調に前に出られてよかったな、みたいな感じでした。太田選手とは少し軽い接触はあったのですけど、他のクルマともそういう感じでなんか押されたりみたいな感じはあったので、レースの一部かな、みたいなところです」
「今日ちょっとうまくいかなかったことを修正して、きちんと明日、予選でも決めれるようにしたいです。レースはやっぱりズバ抜けてるクルマがいる感じはするんですけど(苦笑)、今日の9位より上のパフォーマンスを自分は持ってるとは思っているので、そのパフォーマンスをしっかり発揮できるようにしたいです。特に予選はクルマのパフォーマンスはもっとあったけど、自分がまとめきれなかったという悔しさもある。改善しないといけない部分がまだまだあるなと思っています。修正してもっともっと強くなりたいです」
[オートスポーツweb 2025年07月19日]