写真 皆さんは自分をより良く見せたいという思いが働いて、つい嘘をついてしまった経験はありませんか?
今回はそんな嘘が原因で寝込んでしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆会社の後輩といい感じに
会社員の佐久間茉里さん(仮名・44歳)は、2年前に離婚をして現在1人暮らしをしています。
「1人娘も進学を機に家を出たので、今は新たな人生という感じでひとりの時間を楽しんでいるんですよ」
そんな茉里さんに最近アプローチしてくる男性がいるそう。
「同じ部署の広瀬くん(仮名・34歳)という後輩で、仕事のフォローをしたり悩みを聞いてあげたりしていたら妙に懐かれてしまったというか……最初は私の勘違いというか自意識過剰なのかな? と思っていたのですが、徐々に広瀬くんの言動や態度から、明らかにデートに誘われているんだなと気づいてしまって」
茉里さんはそれまで社内恋愛はしない派でしたが、
「社内恋愛をして揉めたり別れたりして気まずくなってしまった人たちをたくさん見てきたので。ですが、離婚を経験して40代も半ばになった私が、久しぶりにデートなんかに誘ってもらって……もうこんな機会あるか分からないし、別に1回一緒に出かけるくらいいいんじゃないかな? と思えてきて何となくOKしてみたんです」
◆植物園デート中、予想外の暑さで汗びっしょりに
そしてある休日に、お互いの共通の趣味である植物園に一緒に行ったそう。
「ボタニカル男子である広瀬くんおすすめの植物園は広大で見応えがあり、私たちはキャッキャとはしゃぎながら、珍しい植物やお花を見てまわったんですよ」
するとその日は気温が急激に上がり、予想外の真夏日になってしまったせいか、茉里さんは汗が止まらなくなり、みるみるびっしょりになっていきました。
「広瀬くんが『広瀬くんが『大丈夫ですか? もしかして熱中症ですか? すぐに冷たい飲み物を買ってきます』とオロオロしながら心配してくれて、まずいなと思いました」
◆本当は更年期の症状だけど……
実は茉里さん、最近更年期の症状が出るようになり「これはきっとたまに起こるホットフラッシュで、熱中症ではないな」と思いましたが……。
「せっかくのデートなのに広瀬くんにおばさんだと思われたくなくて、つい熱中症のフリをしてしまったんですよね」
そして涼しいカフェで休憩をして汗が引いて落ちついた後、大事をとって茉里さんはタクシーで帰ることになったそう。
「広瀬くんは私をマンションの前まで送ると言ってくれましたが、大丈夫だからとひとりで家路につきました。そして、そのまま寝込んでしまったんです。
彼の心配そうな顔を思い出して、そんな要らない心配をかけた理由が、自分を若く見せたかったという浅ましい見栄からくる嘘だということが苦しくなってしまって。さらに、暑さで本当に熱中症になり苦しんでいる人も少なくないのに、そんな病状の振りをするなんて不謹慎すぎるし最低だ……と」
茉里さんはそんなふうに罪悪感に苛まれ、ベッドから起き上がれなくなってしまったのでした。
◆「心外だな」彼から飛び出た衝撃の言葉とは
そして反省をした茉里さんは、広瀬くんにありのままを告白して謝ることにしたそう。
「私の気持ちを伝えた後の、広瀬くんの第一声が『心外だな』だったのでビクッとしてしまいました。でも怒られて当然だしとにかく謝るしかないと思いました」
ですが広瀬くんは「僕は茉里さんの年齢を知っていて、ちゃんと考えたうえで誘っているんですよ? たしかに更年期のことはあまり詳しくないし頼りにならないところも多いかもしれませんが、そんなことでおばさんだから嫌だとか思うわけないでしょ? 本当に心外です」と優しく言ってくれたそう。
「さらに『これから更年期のこともちゃんと勉強しますから』と言ってくれて……本当に広瀬くんを見くびるようなことを言ってしまい失礼だったし、つい自分はもう歳だしと自信が持てなくて、つく必要のない嘘をついてしまったことも反省しましたね」
◆その後の2人は
この件でしっかりと話し合ったことで心が近づいた2人はお付き合いをするようになりました。
「広瀬くんは歳下ですが頼りがいがあり、一緒に居るととても安心できる大切な存在になりました。そして後日暑さ対策をして植物園デートリベンジもしたんですよ。熱中症と更年期は似た症状も多いので気をつけないといけませんね」と微笑む茉里さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop