DVが心に残す傷跡……トラウマとPTSD回復に向けた対処法と支援のポイント【精神科医が解説】

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2025年07月20日 20:50  All About

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【精神科医が解説】DV(ドメスティックバイオレンス)は、心にトラウマやPTSDなどの影響を残してしまうことがあります。具体的な対処法から、精神科・心療内科での治療法、専門機関から受けられるサポートの重要性まで、分かりやすく解説します。
DV(ドメスティックバイオレンス)は、社会のどこかで今この瞬間も起きている問題です。もしこの記事を読まれている方が、DVやその傷跡に苦しんでいるのなら、問題を抱えているのは決してあなた一人だけではありません。同じ境遇を理解し、支え合える仲間は必ず存在します。

DV(ドメスティックバイオレンス)が心に残す傷跡、トラウマとPTSD

DVが心に与える影響として、トラウマが挙げられます。トラウマとは深刻な心的外傷を意味し、その原因は過酷な体験にあることが一般的です。その苦しみは非常に長期間続くことがあり、心理的な苦痛に加えて、悪夢やフラッシュバックといった症状が現れることもあります。

これらの症状が原因で通常の日常生活を送ることが困難になる場合、「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)と診断される可能性があります。

DVによるフラッシュバックとその対処法

フラッシュバックは、トラウマとなった体験がまるで今起きているかのように鮮明に蘇る現象です。その時の映像だけでなく、音、におい、痛みといった感覚までもが呼び起こされます。

精神医学的には「侵入症状」と呼ばれ、特定の音やにおい、思考内容などが引き金(トリガー)となって、突然、脳裏にそのイメージが「侵入」してくることがあります。

フラッシュバックが起きた際には、急激に高まる不安や恐怖への対処が重要です。気持ちを落ち着けるためには、「呼吸を整える」や「何か言葉を唱える」といった方法を試してみるのが良いでしょう。また、場所の何かがトリガーになっている場合は、その場を離れることも有効な対処法です。

また、いざというときに周囲に助けを求めらるように、信頼する人にだけでも、あらかじめ自分の状態を伝えておくことは非常に大切です。

DVによるトラウマとフラッシュバックの治療法

DVの後遺症が深刻化している場合は、専門家への相談を強くおすすめします。脳内の機能異常や、自分では認識しにくい思考の問題が症状を悪化させている可能性があるためです。

精神科や心療内科での治療は、患者さんの症状タイプによって異なります。例えば、気分の落ち込みが深刻な場合は、脳内のセロトニン機能の変調が考えられ、抗うつ薬が必要となることもあります。

トラウマの後遺症が続いている間は、日常生活でのストレスが症状を悪化させやすいため、環境調整が非常に重要です。そのためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。DVの過去に目を背けることが、克服を困難にしている場合もあります。

起きたことは起きたこととして受け入れることで、初めて終わった過去になります。

そのため、もし被害者の方が自身の体験を語り始めたら、周囲の人はしっかりと耳を傾けてあげてください。しかし、無理に話をさせようとすることは、症状の悪化につながる可能性があるため避けるべきです。

「もう一人じゃない」:支援機関と、精神科医としてのメッセージ

DVに関する情報は、インターネット上にも数多く存在します。例えば、NPO法人が運営する『もう一人じゃない』のウェブサイトでは、DVの具体的な体験談や相談窓口の情報を得ることができます。

最後に繰り返しになりますが、もしDVの後遺症が続いている場合は、専門家のサポートをぜひ検討してください。回復への道のりは人それぞれですが、トラウマを克服することは十分に可能です。実際にDVによるトラウマを克服し、ご自身の体験から啓発活動にあたられている方もいます。

まずはあなたの安全と心の回復を最優先してください。私たち専門家や支援機関は、あなたに寄り添い、共に歩む準備ができています。

中嶋 泰憲プロフィール

千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。
(文:中嶋 泰憲(医師))

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