野中誠太(KDDI TGMGP TGR-DC)のマシンから外れたタイヤ 2025スーパーフォーミュラ第7戦富士
7月20日に富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦。トランスポンダー(車載計測器)のバッテリートラブルにより進行が42分遅れた一戦は、スタート直後から接触やトラブルなどが続出、途中ではセーフティカー(SC)も導入されるという波乱の展開となった。
ここでは、何らかのアクシデントに遭遇してしまったドライバーたちの声を、レース後の『メディアミックスゾーン』での取材を中心にまとめた。
■佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING) SC中のコースオフでペナルティ
前日からこの日朝の予選に向けたセットアップ調整がフィットし、3番グリッドを手にした佐藤。
「スタート自体はかなり良かったんですけど、坪井(翔)選手と太田(格之進)選手に挟まれる形になってしまって、失速したところを大湯(都史樹)選手に抜かれてしまった形です」と、1周目を終えて4番手へとポジションを落とすことに。
「昨日からの大幅なセットアップ変更が、レースペースに対して非常によく機能していました。ペースがあったので、前(のクルマ)が入るタイミングよりも遅らせてピットに入りたかったのですが、SCが思わぬタイミングで出てしまって。昨日よりもダウンフォースをつけ気味だったのでストレートスピードは少し厳しく、集団に入ってしまうと抜けない状態になってしまいましたね」
佐藤はブレーキングに不安を抱えており、バトル時のTGR(1)コーナーに向けてのブレーキング競争では、「行ききれない部分があった」という。そしてSC中のピットアウト直後には、その1コーナーでオーバーシュート。これがSC中のコースアウトということでレースタイムに5秒加算というペナルティを受けることになった。
「一気に路気温が下がって、思ったよりもフロントが効いていなかったこと、そしてブレーキバイアスをフロントにしていたところで、(ピットで)それを戻さずに行ってしまったことから、そうなってしまったのかと思います」
当初5位でチェッカーを受けた佐藤は5秒が加算された結果、ひとつポジションを落として6位という最終リザルトとなった。
■三宅淳詞(ThreeBond Racing) シフトとクラッチにトラブル発生
予選では18番手に沈んだ三宅。スタートではホイールスピンに見舞われ、出遅れてしまう。
「その後はタービュランスがすごくて、もうまったく抜けないレースになってしまいました」
SCが導入されたタイミングでほかの多くの車両と同時にピットへと飛び込んだが、この際にトラブルに見舞われてしまう。
「シフトチェンジができない、クラッチが切れないという感じです。それがどこから来ているのか、ちょっと分からないので、チームの皆さんに分析してもらっています」
6月の富士テストからは大きくセットアップのコンセプトを変えてこの第6・7戦に臨んだという三宅。ただ、そうして準備してきた持ち込みのセットアップが「ちょっとずれていたかもしれない」という。次戦に向けてはまた、新たな試行錯誤が続くことになりそうだ。
■小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 予選Q1でエンジニアが激昂
第7戦は4位入賞となった可夢偉だが、朝の予選からバタバタする一幕があった。Q1のアタック時にチーム内でミスコミュニケーションがあり、リクエストしたものとは違うウイング角度になってタイムアタックに向かったとのこと。可夢偉が新品タイヤを装着してピットを後にした直後に、コシモ・プルシアーノエンジニアがメカニックに激昂している様子が公式映像でも映し出された。
「フロントウイングを寝かせてと言ったら、なぜか(角度が)上がっておりまして……そもそもスタート時点のウイングポジションすら間違っていたこともそこで判明して、そこでもぶちギレて、結局Q1のアタックはウイングを下げたいのに上げた状態で走りました」と可夢偉。
バタバタの詳細について土居隆二監督に確認を取った際も、基本的にマシンセッティングに関する指示はエンジニアからチーフメカニックに直接伝えられ、そこから各メカニックに伝達されるという指示系統が本来は確立されていたが、今回はなぜか混乱が生じた模様。「お恥ずかしい話です」と苦笑いをみせた。
この混乱もあって、最終的にピットアウトの時間が遅れ、最終アタックに間に合わない可能性もあったとのこと。「『もう無理かも』とは言われて……ウォームアップラップは全開でした」と可夢偉。何とかQ1を突破し、6番グリッドを手にした。
決勝に関しては、前日課題となったレースペースを改善。「(作業制限時間の)ギリギリまでサーキットにいて、データもめちゃくちゃ見直しました。それでクルマをガラッと変えたら、全然戦えるようになりました」という。
終盤にはトップ集団の争いに加わって、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)の逆転を狙って、最後のメインストレートでオーバーテイクシステム(OT)使えるように温存しておいたものの、0.2秒届かず4位となった。
終盤のバトルについては「坪井選手はOTがないのは分かっていました。最後“ごっつぁん(のオーバーテイク)”をしたかったんですけど、意外と前にくっつくとペースが落ちたりして……ずっとベタベタではいけないので、1回タイヤを休ませて、もう1回プッシュをするというタイミングが、まったくあわなかったです」と可夢偉。
「もちろん狙っていたけど、あの使い方は間違えたなという気がします。かなり厳しかったのかなと思います」と、勢いはあったが現実的には追い抜くまでのパフォーマンスは充分ではなかったようだ。
■福住仁嶺(Kids com Team KCMG) 左フロントタイヤが脱落
11番手からスタートし、真っ先にピットストップを済ませる作戦に出た福住。
「1周目ピットインするか引っ張るかをずっと悩んでいましたけど、状況的にリスクを取っても良いだろうということで、1周目に入りました。翌周に入ったイゴール(・オオムラ・フラガ)の前に出られたので、実質(ピットストップを終えたメンバーの中では)一番前で走れたので、そこからタイヤの摩耗がどうなるのか読めない状況でした」と、レース前半の状況を振り返った。
その後、7周目にピットインした岩佐歩夢(TEAM MUGEN)とポジション争いをするが前に出ることはできず。そのまま周回を重ねていた12周目の300Rで左フロントタイヤが外れてコースオフを喫した。
「岩佐選手を抜こうとした時にタイヤを痛めつけて、苦しくなったんですけど、そこから諦めずに走ろうと思ったら、前触れもなく突然左フロントが外れちゃいました」と福住。なお原因については取材時点では不明とのことで、調査中だという。
■野中誠太(KDDI TGMGP TGR-DC) 左フロントタイヤが脱落
福住と同じく左フロントタイヤの脱落で戦線離脱となった野中誠太(KDDI TGMGP TGR-DC)だが、朝の予選Q1Bグループに出走するも、チーム側のオペレーションミスで制限時間内にコントロールラインを通過できず、タイムアタックができないままセッションを終えていた。
「エンジニアの時間設定の部分でミステイクがあって、最後のアタックに間に合いませんでした。4〜5秒くらい足りませんでした」と悔しそうに語る野中。
後方からのスタートと、今週末は全体的にペース不足に悩まされているなかで周回を重ねていたが、17周目の300Rで左フロントタイヤに違和感を感じダンロップコーナーでのブレーキング時に外れたという。
「1スティント目でタイヤ交換する前の状態でした。急に左フロントが外れた感じです。300Rでちょっとフロントが抜けていって、Bコーナー(ダンロップコーナー)のブレーキングでタイヤが外れかけて、まっすぐ行きました。それまでは前兆というか症状は何もなかったです」と野中。
平良響に代わり、後半戦の29号車シートを任された野中だが、2日続けて不本意な結果で終了。だが、「最初のレースですし、これからもレースは続くので、腐らずに頑張りたいなと思います」と前を向こうとしていた。
■イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING) SC中の追突でペナルティ
7番手からスタートしたフラガは、2周目にタイヤ交換を済ませる作戦に出たが、2スティント目の感触が芳しくなかったという。
「なるべくクリーンエアで走りたいと思って、2周目にピットインしましたが、福住選手の前に出られませんでした。なんかよく分からないですけど、リヤタイヤがズルズルになりました」
レース中盤にセーフティカーが導入され、7番手で再開の時を待っていたフラガ。しかしリスタート直前、大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)と加速タイミングが合わず接触。フロントウイングを破損し緊急ピットインを余儀なくされた。のちに、この接触に対して10秒加算のペナルティが与えられている。
この時の状況については「GRスープラコーナーを曲がっているところで起きたんですけど、39号車の前のクルマとはスペースが空いていました。ちょうどレースが再開されるタイミングというで、前のクルマも加速とブレーキを繰り返している状況でした」とフラガ。
「『(前との)スペースもあるし』と思って、加速しようとしたら向こう(大湯)が加速しなくて、避けようとしたけどフロントウイングと右リヤタイヤが当たってしまった感じでした」と語った。
これで勝負権を失ったフラガだが、思わぬ発見があったとのこと。
「フロントノーズを変えたタイミングで1スティント目に履いていたタイヤに戻したら、よく分からないけどクルマのフィーリングも良くてペースも速かったです。なんでそういうことが起きたのか……データが残っていると思うので、しっかりと分析して次に活かせられれば、パフォーマンスは上げられるかなと思います」と、前向きに捉えていた。
[オートスポーツweb 2025年07月20日]