画像はイメージです(以下同)毎日暑い、暑すぎる!7月に入って気温37℃前後のエリアが続出、40℃級の極暑(ごくしょ)も予想されている。夏バテを超える“極暑バテ”で、体が悲鳴をあげる今日このごろ――2025年の夏を乗り切れるのだろうか?
そこで、心身を総合的に診ることで定評がある「たけしファミリークリニック」(千葉県船橋市)の北垣毅院長に、夏の不調の正体と、その対策を聞いた。
◆倦怠感、よく眠れない、むくみ……極暑バテかも
北垣医師のもとには、病名がわからないけれど体調がおかしい、という人が多く訪れるという。この夏、どのような症状を訴える患者が増えているのだろうか?
「倦怠感や頭痛、眠れない、朝起きるのがしんどい、体がむくむ、食欲がない……といった、いわゆる不定愁訴を訴える方が多いですね。いろいろな病院で検査をしても特に異常が見つからず、『どうしてだろう?』と最後に私のところへやって来る方が結構いらっしゃいます」(北垣医師、以下同)
病気というほどではないけど、ずっと体がおかしい……思い当たる人も多いだろう。原因は何なのだろうか?
「一言でいえば、自律神経のバランスが乱れている状態です。暑い屋外と冷房の効いた室内を行き来するなど、急激な温度変化に体が対応しようと、交感神経と副交感神経が切り替わり続けて疲弊してしまう。その結果、うまくバランスが取れなくなり、さまざまな不調として現れるのです。いわゆる夏バテ、極暑バテですね。診断名をつけるなら、『暑気あたり』です」
アクセルのような交感神経と、ブレーキのような副交感神経を切り替えながら、心身を正常な状態に保つのが自律神経。だが、異常な気象環境の中で、正常を保ちきれなくなるわけだ。
◆自律神経の乱れで免疫力も低下? 夏の感染症が流行るワケ
また、自律神経と免疫機能は深い関係があるという。免疫とは、ウイルスや細菌など異物から体を守る仕組みのこと。この仕組みのコントロールにも、自律神経が関わってくる。
この夏、百日咳を筆頭に感染症が増えているのは、免疫力ダウンと関係あるのだろうか?
「今、特にお子さんに流行っているのは百日咳で、大人の百日咳も増えています。他にも溶連菌、手足口病、アデノウイルスも広がっていますね。まずお子さんがかかって、家族全員に広がってしまうケースも非常に多いです。
感染するかどうかは、本人の免疫力に加えて、外出が多くてウイルスに曝露される(さらされる)機会が多いか、ワクチンを打っているかといった要因も大きいのです。一方で、もし感染しても症状が軽くすむか・回復が早いか、といった点では『基礎体力』、つまり広義の免疫力が大いに関係していると考えられます」
実感値として、同じ職場で同じように働いていても、次々と流行りの感染症にかかって寝込む人と、感染しないか軽症の人がいるものだ。“広義の免疫力”は、まちがいなく生活の質を左右する。
◆自律神経を整え、免疫力を高める生活とは?
では、極暑バテを防ぎ、自律神経を整える・免疫力を高めるには、どのような生活を心がければよいのだろうか? 北垣医師は、以下のようなアドバイスをする。
1.体を冷やさない
暑いからといって、冷たいものばかり飲んだり、毎日シャワーだけで済ませたりするのは避けるべき。
「ぬるめのお湯にゆっくり浸かって体を芯から温め、汗をかく習慣をつけましょう。もちろん、仕事終わりの冷たいビールを楽しんでもいいのですが、例えば、昼間は温かいお茶を飲むようにするなど、工夫次第で体への負担は減らせます」
2.朝食を抜かない
「朝は食欲がないという人も、パン1枚、ヨーグルトドリンク1本でもいいので、何かお腹に入れてください。睡眠中に休んでいた胃腸を起こし、一日の活動のスイッチを入れることが重要です」
活動モードの交感神経に切り替えるために、胃腸を動かすことは大切なのだ。
3.たんぱく質と発酵食品を意識して摂る
中年男性の食事は、ラーメンや大盛り飯など炭水化物に偏りがち。意識して、たんぱく質と発酵食品を摂ろう。
「たんぱく質は、免疫細胞をつくるための重要な材料です。コンビニで売っているサラダチキンやスティックでもいいのです。また、ヨーグルトは、たんぱく質でも発酵食品でもあるのでおすすめ。乳酸菌などのいわゆる善玉菌は、腸内環境を整えるのに役立ちます」
免疫細胞の約70%は腸内にあるとされ、腸内環境は免疫力に直結する。ヨーグルトなら食べるタイプやのむタイプなど、好みに合わせて選べるのもよい。
4. 適度に汗をかく
「汗をかくことで、自律神経の体温調節機能が鍛えられます。炎天下での運動は危険ですが、先ほどお話しした入浴や、室温を少し高めにした部屋でのストレッチなど、安全な方法で汗をかく機会をつくりましょう」
◆朝から疲れてる……極暑バテのサインを見逃さないで
日刊SPA!の読者である30〜50代の男性は、忙しさもあって、多少の不調は気合で乗り切ろうとしがちだ。
「それが一番危ないですね。『疲れたら栄養ドリンクを飲んで、サウナで汗を流せば大丈夫』と思い込んでいる男性もいますが、自分の体の悲鳴に蓋をしているだけです。その場しのぎでごまかした疲れは、1〜2カ月後に3倍、4倍になって返ってきますよ」
どのような状態になったら医療機関を受診すべきなのだろうか。
「ひとつの目安は、『一晩しっかり寝ても疲れが取れない』状態が続く場合です。それはもう、心か体のどこかがおかしいというサイン。自分の体のサインを見逃さず、正直に耳を傾けてあげてほしい。今はオンライン診療などもありますから、気軽に専門家に相談することが大切です」
不調のサインに気づいて、早めに対処すること。「それが、厳しい夏を元気に乗り切るための最大の秘訣です」と北垣医師は締めくくった。
<取材・文/川崎かおり>