そしてガラスで囲まれたこのスペースが店内への入口となっています。細身の入り口はちょっとした秘密空間に入るような気分にもさせてくれます。先ほどまで歩いていたミラノの街を一瞬で忘れ、まったく新しい世界に足を踏み入れるかのような体験が待っています。単なる外観の美しさにとどまらず、「入店する瞬間」が特別な記憶になる演出なのです。これまでにいろいろな国のApple Storeを訪問しましたが、Apple Store Piazza Libertyに足を踏み入れるときの高揚感は他のどの店舗でも味わえない特別なものでした。
Apple Store Piazza Libertyは入り口から店内に入ると地下に降りていく構造になっているため、店舗に入る前はシックで落ち着いた閉じられた空間が広がっていると考えていました。ところが実際には店舗は巧みに設計された掘割状の広場「サンクンプラザ」に面しており、地下にいながらも横には明るい屋外空間が広がっています。地上からこの様子を眺めると、都市の中にひっそりと現れるオアシスのようにも感じられるでしょう。この場所はかつて60年にわたりミラノ市民に親しまれたアポロ・シネマの跡地であり、その地下構造を活かして再設計されたことで、他にはない独特の空間が誕生したのです。
店舗内に足を踏み入れると、天窓やガラスの採光部からふんだんに自然光が降り注ぎ、美術館やギャラリーを彷彿とさせる明るく開放的な空間が広がっています。静かで洗練された空気のなか、製品を見るだけでも心地よい時間が流れます。ミラノ旅行の際は、Apple Store Piazza Libertyを立ち寄り先に追加してみてはいかがでしょうか。(富永彩乃+山根康宏)