昨今、ChatGPTやClaude、Geminiをはじめとした生成AIツールの進化がビジネスの現場に革新をもたらしている。とはいえ、「何から始めればよいかわからない」「どのツールが適しているかわからない」といった戸惑いの声も少なくない。
そんな中、生成AIの活用術を発信し続けているのが、Excel講師としてキャリアをスタートし、現在は著書『生成AI最速仕事術』(かんき出版)を通じて業務改善のノウハウを届けるたてばやし淳氏だ。
今回はたてばやし淳氏に、実際のAI活用事例からAIツールの選び方、信頼性、そして初心者の学び方までを聞いた。
――AIに出会ったきっかけを教えてください
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もともとはExcelやVBAによる業務効率化を教える立場でしたが、ある日受講生の方にAIについて質問されました。その時は私自身AIについて知りませんでしたが、受講生の方に教えていただいたChatGPTに出会ったことで「これからはAIだ」と直感しました。
もし関数やマクロの知識がすべて生成AIで代替できるなら、講師業自体が不要になるかもしれない。ですが逆に言えば、AIを活用するスキルが残るとも考え、AI活用の研究・実践を本格化させたんです。
現在は自らの業務を生成AIを使って効率化したり、企業の役員や社員の方のために、会社に出向いてセミナーなどを積極的に行っています。
――生成AIの活用でどのような業務が効率化されますか?
みなさんがよく行っている定番業務の中で最も例に挙げやすいのは議事録作成です。例えば録音した会議音声をテキスト化し、そのまま決まったフォーマットと文字起こしをChatGPTなどに渡し、議事録として整える。こうしたプロンプトとテンプレートを組み合わせれば、これまで数時間かかっていた作業が数分で終わります。
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個人的なお話ですが、昔は私も自分が主催するセミナーの文字起こしをライターさんなどに依頼していましたが、今はAIの活用によって依頼することがなくなってしまいました。文字起こしとフォーマットさえ決まっていれば、ChatGPTの方が人間よりも圧倒的に速くアウトプットできてしまいます。
他にも、税理士の方がレシート画像をAIにアップロードするだけで仕訳データを抽出したり、行政書士の方が行政書類のPDFをAIにアップロードし、顧客向けの分かりやすい入力マニュアルを作成できたりと、事例は多岐に渡ります。
ちなみにレシート画像はGemini、行政書類はClaudeを使って業務効率化を行いました。
●複数のAIツールをどう使い分ける?
――複数のAIツールを使い分けているそうですが、どういった基準で選んでいるのでしょうか?
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基本的にはChatGPTやClaude、Gemini、Gensparkなどを使い分けています。必要であれば専用のAIツールを使用しています。議事録や要約などにはChatGPTやClaudeが適しており、顧客への提案資料やセミナースライド生成にはGensparkが便利です。
特に最近はGeminiも含めて業務に応じて使い分けるようにしています。とはいえ、必ずしも最新のツールが最適とは限らず、慣れたツールで成果が出せるなら無理に移行する必要はありません。私が執筆している本に載っているAIも、業界の進化が早すぎて、現在は他のAIツールの方がおすすめの場合もあります。
――生成AIが出すアウトプットはどのくらい信用していいものでしょうか?
これは用途によって異なります。例えば長文や文字起こしの要約に関するタスクなら7〜8割は信頼できますが、専門用語を多く含む文章やコラム記事のライティングになると、古い情報や誤った情報が混ざるなどして信頼性は下がります。
特にAIが人間のミスを訂正しようとして逆に誤情報に置き換えてしまうケースもあるので、必ず内容の確認は必要ですね。例えば今はver5までリリースされていますが、AIが持つ情報がver4までのため、誤情報としてver4でアウトプットしてしまうケースも少なくありません。
――AIの登場によって淘汰される職業もあると言われていますが、その点についてはどうお考えですか?
現実的に、単純な文字起こしなどの簡単な業務は厳しくなると思います。ただし、AIを活用したうえでより精度高く、話者の意図を汲み取った文字起こしなどアウトプットできる人材は逆に市場価値が高まると感じます。
――実際に普段行っている業務でAIの恩恵を受けた事例はありますか?
私の場合はGensparkでのスライド資料作成がとても高品質で役に立ちました。肌感ですが、2〜3時間ほど今までスライド資料作成には時間がかかっていましたが、Gensparkを使うことで15分程度に短縮できました。
Gensparkは直感で使用しやすいUI/UXのため、とても使いやすいのでスライド資料作成を作る際は特におすすめですね。
●これから学ぶ人へのアドバイス
――これからAIを学び始めたい人には、どのようなステップを勧めますか?
おそらく「そもそも日常のどんな業務がAIで効率化できるか分からない」という方が多いと思います。そのため、本やSNSでプロンプト事例を探し、自分の業務の中で試せそうな小さな作業があれば、少しずつAIに頼ってみましょう。
例えば日報の要約やメール文の添削などにAIを使ってみる。そして、効率化のメリットを実感できたら、プロンプトの事例やツールの比較といった学びを徐々に本や講義などを受けて深めていく。
その他に自分に合った生成AIが学べる講座を選ぶのも一つの手ですし、コミュニティで学ぶのもモチベーションの維持に役立つでしょう。また、生成AIを教えてくれる講座に参加すると横のつながりもできてモチベーションになりますし、カリキュラムが決まっているのでより効率的に学べると思います。
――最後に、企業からの講演依頼も増えているとのことですが、現場の反応はいかがでしょうか?
ありがたいことに、私が出版した生成AI最速仕事術をきっかけに講演依頼が増えており、マネジメント層から若手社員向けの研修まで幅広くご相談をいただいています。直近では多くの企業が「まずはやってみよう」という段階に来ており、小さな業務から生成AIを導入し、その成果を社内で共有していく動きが活発になっています。
●プロフィール
たてばやし 淳 (たてばやし・じゅん)
1986年生まれ、横浜育ち。オンライン動画でITスキルを教える人気講師。「多くの人に、仕事を自動化してラクにする方法を伝えたい」という想いから、ExcelやマクロAI関連の書籍を執筆するなど発信活動を行う。YouTube総再生回数1300万回、チャンネル登録者数11万人超。また、オンライン動画教育プラットフォーム「Udemy」では22万人以上の受講者へ動画コースを展開している。
著書に『生成AI最速仕事術』(かんき出版)』、『Excel×Copilot AI仕事術』(日経BP)』、『学習と業務が加速するChatGPTと学ぶExcel VBA&マクロ』(ソシム)などがある。
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