ベセント米財務長官(前列中央左)らの表敬を受け、握手する石破茂首相(同右)=18日、首相官邸 石破茂首相は21日、大敗を喫した参院選後の記者会見で続投を表明し、引き続き日米関税交渉に全力を挙げる考えを示した。政権にとっての最優先課題は、目前に迫る米国の相互関税発動の回避だ。課されれば日本経済への打撃は避けられないが、交渉には手詰まり感も目立つ。足場が揺らぐ中で合意点を見いだすことができるか、政治的にも正念場を迎えることになる。
「8月1日の節目を念頭に、関税ではなく投資の考えを基盤に合意を実現する」。石破首相は記者会見でこう強調した。トランプ米大統領と早期に会談する意向も示した。
米国は8月1日、日本への相互関税を10%から25%に引き上げる方針。7月21日には赤沢亮正経済再生担当相が8回目の関税交渉のため渡米した。「米国に対する世界最大の投資国」(石破首相)との立場をアピールし、交渉を有利に進めたい考えだ。
ただ、再三にわたる対米投資の訴えは、米国の貿易赤字削減に固執するトランプ氏には響いていない。トランプ氏は現地時間15日、貿易相手国・地域に市場開放を促す一方、「日本はそうはしない」と強い不満を示した。
赤沢氏は「期限までにまとめようとした方の立場が弱くなる」との考えを示すが、環太平洋連携協定(TPP)などの交渉に携わった渋谷和久関西学院大教授は、交渉の遅れが日本を不利な立場にしかねないと指摘する。韓国などが厳しい条件で先に合意すれば、日本への要求のハードルは一段と上がるとして、「ほどほどの内容で早期合意した方が良策」と話す。
渋谷氏は「グローバルで見て日本の悪影響が最小限に抑えられること、過度な提案内容ではないことを示せれば(国内でも)理解を得られるだろう」と話すが、合意内容次第では政権批判が高まることも予想される。