主力商品に成長した“革命児”コンビニフラッペ、身近なプチ贅沢叶えるのは「価格に転嫁しない」企業の努力

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2025年07月22日 08:20  ORICON NEWS

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大ヒット作『ブラックサンダーチョコレートフラッペ』
 夏になると飲みたくなるのが、ひんやり食感がたまらないフローズンドリンク。年々猛暑日が増えていることを反映してか、スタバやタリーズなどのカフェチェーン店からコンビニ、ファストフード、回転寿司店に至るまで、今や提供する店が増え、多様な味と映えるビジュアルが揃う。そんな中、“手頃な値段”と“身近な存在”として人気となり、これまで88種類のフレーバーを発売してきたのがファミリーマートのフラッペ。昨年10周年を迎えたフラッペの開発の秘話とこだわりを聞いた。

【画像】味が気になる!お菓子フラッペ対決、勝者は!?

■各社で人気のフローズンドリンク、高価格に「買いたいけど買えない」ジレンマも

 スターバックスのフラペチーノを筆頭に、エクセルシオールやタリーズなどのカフェチェーン店、チョコレートブランドのゴディバ、セブンイレブンやローソンなどのコンビニ、マクドナルドにスシローなどなど、今やあらゆるところで目にするフローズンドリンク。

 各社、あの手この手でオリジナルの味を開発し、トッピングに果物や生クリーム、クッキーを添えるなど、プチ贅沢が楽しめる商品として人気が高まっている。しかし一方で、“映える”商品は、気軽に何度も飲めない金額だったり、販売する店舗が近くにないなど「買いたいけれど買えない」というちょっとした格差を生んでいる部分もある。

 そんな中、「全国展開しているからこそ、手軽さ、安さを叶えられる」と開発に着手、コンビニで初めてフラッペを販売したのがファミリーマートだ。全国約1万6300店舗で、300〜400円台という手頃な価格を実現し、これまで88種類ものフレーバーを開発・販売。コンビニフラッペ市場で、累計売上ナンバー1を誇っている。

 「コンビニだからこそ買える“ご褒美ドリンク”という位置づけで、価格においては“ちょっと贅沢”くらいになることを常に念頭に置いて開発しています。正直、原材料をはじめ、様々な価格高騰のあおりを受けて、販売をスタートした10年前と比べると価格は少し上がってしまってはいるのですが…。お子さま連れのお客さまも多いので、なるべく価格は抑えるよう努力しています」(ファミリーマート 商品本部 津崎大樹さん/以下同)

 もちろん、“ご褒美ドリンク”という位置づけから、「プチ贅沢を楽しんでもらうために、期待を越える本格的な味わいには強いこだわりを持っている」と津崎さん。例えば、2022年に初登場して以来大人気となり、毎年発売されて完売するコラボ商品『ブラックサンダーチョコレートフラッペ』は、昨年はチョコレートの濃厚度を200%アップ。さらに今年(7月22日発売)は、クッキーを過去最大に増量し、ブラックサンダーの魅力であるザクザク感をより楽しめる味わいへと進化させている。

 「同じ味、同じコラボであっても、コンビニスイーツを求めるお客さまの期待を毎回、少しでも超えることを目指しているので、必ず何らかの変化を加えることを意識しています。今回、『ブラックサンダーチョコレートフラッペ』は、カカオの値上がりなど苦しい面もありましたが、原料や物流を見直し、価格に転嫁しないよう考慮しました」

 これまでも「500円以下でこのクオリティはコスパが高い!」と話題になってきたファミマのフラッペ。そのため、とくに子ども連れのママ需要は高く、購買層は30〜50代の女性が主になっているという。

■時はコンビニコーヒーブーム、差別化を目指して生まれた第1弾「カフェフラッペ」

 そんなファミマのフラッペが世に登場したのは2014年、「カフェフラッペ」が第1弾だった。

 当時は、各コンビニが淹れたてのコーヒーを提供し、コンビニコーヒーブームが到来。その一方で、1996年に銀座に日本1号店を出店したスターバックスが2013年には1000店舗を達成。贅沢なデザート感あふれるフラペチーノが若い女性を中心に大人気となっていた時だった。

 「コンビニ各社が、マシンの進化によって安価で美味しいコーヒーを提供できるようになった一方で、オリジナルのデザートにも力を入れ始めている時期でした。当社でも他社との差別化として、何かしら看板商品を出すべきではないかと考える中、コーヒーマシンを使って手軽にフローズンドリンクを楽しんでいただける方法はないかという発想が開発のきっかけとなりました」

 しかし、「コーヒーマシンのミルクでは氷がうまく溶けない」「氷の粒の大きさ、コーヒーやミルクを注ぐ穴の形は…?」など、大きな壁に直面。第1弾の「カフェフラッペ」を誕生させるまでには構想3年、具体的な商品開発には1年の歳月を費やしたという。

 そんなファミマのフラッペは、カップに入った氷(フレーバー付)を購入し、客みずからが手で揉んだ後、コーヒーマシンでミルクを注いで作るというもの。カフェチェーンなどでは完成品が出てくるのが当たり前にもかかわらず、客自身に手順を踏んで作ってもらう=“客に完成を委ねる”ことに懸念はなかったのだろうか。

 「もちろんあったと聞いています。ただ、お客さまに作る楽しみというワクワク感を提供できるのではないかという思いから、開発は進められたそうです」

 とはいえ、新たな手法は浸透するまでに困難がつきもの。ファミマでも、接客にあたるアルバイト含めた全国の従業員に作り方を伝授しなければならなかったことが一番の障壁だったという。

 しかし、試行錯誤の甲斐あって、第1弾の「カフェフラッペ」は大ヒットし、想定以上の売上を記録。その後も、2015年に第2弾「マンゴーオレンジ」と「抹茶」のフレーバーを発売。2018年にはフラッペのボタンを搭載したコーヒーマシンを開発し、フレーバーの種類はさらに増加。同時にフラッペの作り方を訴求するTVCM「ファミマのフラッペつくりかたダンス篇」を放映するなど、作り方の伝播にも注力し、人気を広げてきた。

■ルマンドやカルピス、ラムネ、C.C.レモン…、お菓子や飲料とのコラボが柱に

 人気拡大とともに、「他社との差別化商品として育てていこうという声が社内でも高まり、バリエーションを増やしてきた」と振り返る津崎さん。これまで実に88種類ものフレーバーを誕生させてきたが、一体どのように着想し、商品化を決定しているのだろう。

 「まず、話題性と季節感を念頭に、世の中で流行っているものを調査。フラッペで再現できたら面白いかどうか? という議論を重ね、商品化を検討しています」

 ブルボンのお菓子ルマンドやカルピス、森永ラムネ、C.C.レモンなど、人気お菓子や飲料とのコラボ商品も大きな柱となっている。

 「お客さまに『この商品とコラボしているの?』という驚きと、味への期待を感じていただけるところが一番の魅力だと思っています。時にはレシピを公開していただけない場合もありますが、それでも提携先にも満足いただけるよう再現し、コラボしてよかったと思っていただきたい。かなりハードルは高いのですが、チーム一丸となって味を作り上げています」

 先にあげた「ブラックサンダーチョコレートフラッペ」のザクザク感からもわかる通り、再現へのこだわりは味だけでなく、食感にも及ぶ。例えば7月7日に発売された『ハイチュウフラッペ』は、ハイチュウのモチモチ感を再現できるよう、氷の粒を小さくするなど工夫を凝らしているという。

 その一方で、「フラッペとして美味しくするための変化も重要」と津崎さん。

 「例えばチョコ系のお菓子とのコラボの場合、お菓子をそのまま再現すると飲み物としては甘ったるくなり過ぎてしまうので、後味の切れが良いよう工夫もしています」

 聞けば聞くほど、いかに一つ一つの商品へのこだわりが強いかがわかるが、中には「思ったほど売上が伸びなかった」商品や、ボツになったアイディアもあるのだとか。

 「『チーズケーキフラッペ』は僕は好きだったのですが、想定していたよりも販売に伸び悩みました。あと、僕が考えた『梅フラッペ』は企画会議の段階でボツに…。昨年6月にフラッペ発売10周年を記念して行った“フラッペ総選挙”にもエントリーしたのですが、下位のほうでした(苦笑)」

 ちなみに”フラッペ総選挙”で1位を獲得したのは「チョコミントフラッペ」。2020年の発売から再販を望む声が多く、今年も店頭で人気を博している。

 10周年を経て、ますますパワーアップしているファミマのフラッペ。今後はどのような展開を目指しているのだろうか。

 「当社の調査では、ファミマのフラッペを飲んだことがある方は30〜50代の女性が最多。その方々は新商品が出るたびに飲んでくださっているとの分析結果も得て、非常にありがたく思っています。さらに今後は、若年層にリーチすることにも力を注いでいきたい。他業態も参入し、フローズンドリンクを目にすることが多くなってきている今、埋もれてはいけないというのが一番の思い。知名度を上げていくためにも、お客さまにワクワクしていただけて、期待を超える商品を開発していきたいと思います」

(文:河上いつ子)

このニュースに関するつぶやき

  • GODIVAとコラボは高過ぎて手が出ない。これだけの物価高で、高額なのは買い手も億劫になって買わなくなるのでは?
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