【Jリーグ連載】東京ヴェルディのアカデミー指導者に聞いた、プロになれるかどうかわかる年齢とは?

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2025年07月22日 10:31  webスポルティーバ

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東京ヴェルディ・アカデミーの実態
〜プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第8回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。この連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

第7回◆東京Vのアカデミーが大きな成果を収めているカギ>>

 誤解を恐れず言えば、Jクラブがユースチームからトップチームに選手を昇格させるのは、スタッフのさじ加減ひとつだ。選手の能力とは別の判断基準で、その数を増やすことも、減らすことも可能だろう。

 だとすれば、ユースからトップ昇格を果たした選手の数に、それほど大きな意味はない。重要なのは、その選手たちがどれだけトップの試合に出場し、活躍したか、である。

 その意味で言えば、東京ヴェルディが残してきた成果は特筆に値する。

 トップ昇格した選手の数が多いのはもちろんのこと、その多くが当時J2だったトップチームでデビューしたあと、次々にJ1クラブに買い取られ、"個人昇格"を果たしていったからだ。

 つまりは、他クラブの物差しで測ってもなお、優れた人材を輩出していることの証である。

 そんなヴェルディユースにおいて、トップチームへの昇格、すなわちプロになれるか、否かの判断は、いつ頃なされるものなのだろうか。

 アカデミーの現場責任者とも言うべき、ヘッドオブコーチングを務める中村忠によれば、「だいたい8割くらいは、中2とか、中3ぐらいで、プロになれるかどうかがなんとなくわかる」とのこと。意外と早い段階で、おおよその評価が固まっていることに驚かされる。

 もちろん、「残る2割ぐらいは、この選手がこんなに伸びるのかと、ビックリさせられることもあります」とは、中村の弁。「たとえば」とつないで、中村が振り返ったのは、のちに日本代表として2022年ワールドカップにも出場した、山根視来のケースである。

「今はアメリカ(ロサンゼルス・ギャラクシー)でやっている山根なんかは、ヴェルディのジュニアユース育ちで、その時からうまかったんですけど、フィジカルやメンタルに幼い部分があったので、ユースに上がれなかった。その後、ウィザス高校から桐蔭横浜大学へ行って、メンタル的に大人になったんじゃないかなっていうのは想像できますけど、それにしてもよくここまでになったなと、ビックリしました」

 とはいえ、山根のようなケースは、あくまでも例外的であり、少数派だ。

 東京ヴェルディユースの監督である小笠原資暁もまた、「本当にいい選手は、小学生の段階で『これはプロになるだろうな』って感じますけど、さすがにまだどうなるかはわからない。でも、中2、中3ぐらいになると、ほとんどわかってきます」と語り、中村と見解を一にする。

「(指導者になったばかりの)最初の頃は全然わからなかったんですけど、あの選手がプロになるんだっていうのを何回も見てくると、だんだん(基準が)クリアにはなってくる。もちろん百発百中は無理ですけど、その確度は上がっている気がします。

 逆にそれが見えてくるから、ちょっと(プロになるのは)難しそうだなっていう選手たちもわかってくるので、『じゃあ、その選手たちに何を乗せられたらグッと伸びて、ここ(プロになれるレベル)に入ってくるのかな』って考えるのも、楽しみのひとつになっています」

 中2、中3で判断できるという、そのポイントはどこにあるのか。

 小笠原によれば、「メンタル、フィジカル、技術、戦術の総合点の高さ、っていう感じだと思います」とのことだ。

「だから、他の要素が3点ぐらいでも、ひとつ突き抜けて10点があるから総合点が高くなる選手もいるし、逆に全部6、7点ぐらいで、そこ(プロになれる基準)に乗っかる選手もいます」

 ただ、それはあくまでも"プロになれるかどうか"の話である。

 小笠原曰く、「プロで活躍できるかどうかで言うと、やっぱりメンタリティが及ぼす部分は大きいなと思います」。

「たとえば、技術に優れたタレントで、フィジカルもある。でも、メンタリティはちょっと弱い、みたいな選手でも、プロになれたりするんですね。フィジカルと技術があるから。だけど、やっぱり長続きはしない。

 プロになって、監督が言っていることを理解できない、実行できない、あるいは、キツい時に頑張れない、自分の好きなことしかできない。そういう選手だと、プロでは難しい。ユースレベルぐらいまでは、それでもできちゃいますけど、プロでは長続きしないなという印象はありますね」

(文中敬称略/つづく)

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