公正取引委員会=東京都千代田区 クレジットカード決済を巡り、他社のサービス利用を制限した疑いがあるとして、独禁法違反(不公正な取引方法)容疑で調査していた公正取引委員会は22日、国際カードブランド「Visa」(ビザ)の日本を含むアジア太平洋地域での事業を展開する「ビザ・ワールドワイド・ピーティーイー・リミテッド」(シンガポール)から提出された改善計画を認定した。
独禁法の「確約手続き」に基づく措置。公取委は計画の実効性を認め、同法違反の認定は行わない。国際カードブランドに対する行政処分は初めて。
カード取引では、利用者にカードを発行する会社と、飲食店など加盟店を管理する会社との間で、利用者の信用情報の照会などが決済ネットワークサービスを通じて行われる。決済の際、カード発行会社と、加盟店管理会社が異なる場合には手数料が発生し、加盟店管理会社がカード発行会社に支払う。手数料の標準料率はビザなどの国際ブランドが決めている。
公取委によると、ビザのシンガポール法人は2018年2月、加盟店管理会社に対し、他社の決済サービスを使っていた場合、ビザが提供する決済サービスを利用しなければ手数料を引き下げる優遇措置を受けられないと通知し、21年11月から実施していた。管理会社の中には、不利益を回避するため、利用する決済サービスを他社からビザに変更したケースもあった。
公取委はビザの対応が、独禁法が禁じる「拘束条件付き取引」に当たる疑いがあると判断した。公取委は昨年7月、ビザ日本法人に立ち入り検査に入り、調査を続けていた。
公取委の十川雅彦第3審査長は「事業者同士が切磋琢磨(せっさたくま)し、より良い、安いネットワークが提供されていくのが一番期待される競争の形だ」と強調した。ビザ日本法人は「認定された計画を履行し、今後とも強力なコンプライアンス体制を維持していく」などとコメントした。